六甲アイランドの活性化(3)

六甲アイランド神戸ファッションプラザのリニューアル、足湯施設の設置に着手します。~「まちの将来の姿」具体化に向けた取り組み~


 六甲アイランドでは、更なるまちの魅力向上や賑わいの創出を目指し、今後のまちづくりの方向性を示す「まちの将来の姿」を令和3年2月にとりまとめました。
 具体化に向けた取り組みの一環として、「神戸ファッションプラザのリニューアル」及びリバーモール空間を活用した「足湯施設の設置」に着手いたしますのでお知らせいたします。

1.神戸ファッションプラザのリニューアル
 共用部の①サン広場、②スペイン階段(リバーモール側屋外階段)において、来訪者の方々の憩い・賑わう空間となるよう、「ふわふわドーム」の設置など、リニューアル工事を行います。

(1)リニューアル内容
  ①サン広場 :ふわふわドーム(子供向け大型遊具)・ベンチの設置床面の人工芝化・一部タイル改修 など

  ②スペイン階段:スペインタイル(※)による美装化・ベンチの設置 など

   ※スペインタイル:スペイン独自の鮮やかな色彩を用いてデザインしたタイル

(2)スケジュール
   令和4年2月  :現地着手
        5月中旬:供用

 

2.足湯施設の設置
  六甲アイランドのシンボルとなるリバーモール空間を活用し、新たに足湯施設を設置します。子供から大人まで幅広い世代の方々が憩い集う空間となるよう、整備を進めます。

(1)概要
  浴槽ごとに水深差(10~30cm)を設け、川のように上から下に向かって流れのある足湯施設を整備します。

  利用人数:10~15人程度

  利用時間:朝~夕方頃にかけて供用予定

(2)スケジュール
  令和4年度春頃:現地着手(予定)

      秋頃:供用(予定)

 

(神戸市記者資料提供(令和4年2月25日)

 

神戸市:六甲アイランド神戸ファッションプラザのリニューアル、足湯施設の設置に着手します。~「まちの将来の姿」具体化に向けた取り組み~


  六甲アイランドの活性化については、先に述べた。

 

 今回の二つの取り組みは、「更なるまちの魅力向上や賑わいの創出を目指」す「まちの将来の姿」に基づき、その具体化に向けた取り組みの一環とのことだ。

 これらの取り組みは、商業施設等の転出が相次ぎ、衰退感が覆ってしまった六甲アイランド中心部の、イメージの払拭を狙うものであろうと思う。しかし、物事には原因というものがある。原因に対して対策を講じることなしに、イメージの払拭だけでは根本的な解決とはならない。時間がたてばその原因となっている状況が改善するわけではないから、今回の取り組みに続いて、第2弾、第3弾を矢継ぎ早に打ち出す必要がある。

 六甲アイランドが不活性の状態になっているのは、六甲アイランドは本土から「孤島」となっており、島内で発生する需要しか得られないという構造に基づくものだ。これを改善するためには、広域からの需要を得ることは容易ではないから、せいぜい周辺からの流入を増やすこと、すなわち、神戸市東部、特に東灘区の本土側からの利用者を導き入れることである。そのためには、六甲アイランドと本土との交通を改善することがまず一つの方策である。もう一つは、六甲アイランド内の人口の増加を目指すことだ。六甲アイランドは計画人口3万人であるが、実際には2万人しか定着していない。少なくとも定住人口3万人に向けて努力をすべきだ。阪神間六甲アイランドのようなすぐれた住環境を持つ住宅地は大変貴重な存在だ。六甲アイランドならば、神戸はもちろん、大阪へも通勤が十分可能であるから、神戸市内への人口呼び戻しの拠点となることができる立地条件である。六甲アイランドは、グラウンドや広場、遊休地となっている部分が多い。住宅地として転用できるところは住宅として供給すべきだ。また、人口が増えれば、六甲ライナーの利用客も大幅に増えるだろうから、それを想定して運賃を市バスと均衡がとれるよう引き下げを検討してもよいだろう。

 単にイメージだけではなく、根本的な原因を究明し、抜本的な対策を講じていく必要がある。これは、神戸市の他の諸課題についても共通していえることだ。

 

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関西学院、神戸市が王子公園に大学誘致で検討委 「王子キャンパス構想」

関西学院、神戸市が王子公園に大学誘致で検討委 「王子キャンパス構想」

 

 関西学院大学などを運営する学校法人の関西学院(西宮市)が、王子公園(神戸市灘区)再整備の一環で計画している神戸市の大学誘致に応募するかなどを検討する「王子キャンパス構想特別委員会」を設置したことが分かった。(中略)

 

 1989年の開学から1929年に現在の上ヶ原キャンパスに移転するまで、現在の王子公園の一部は関西学院大学の敷地だった。王子公園は「開学の地」であることから、神戸市の発表を受けて関心を持ったようだ。開学当初の広さは約3.3ヘクタールだった。神戸市は約4ヘクタールを大学に充てる計画を「素案」として昨年12月に示していた。

(以下略)

(神戸経済ニュース 2022/3/19)

 

 3月19日、関西学院が、神戸市が王子公園再整備の目玉として進めている大学誘致計画に応募するかを検討する「王子キャンパス構想特別委員会」を設置した、と報じられた。

 以前、神戸市の誘致に応じて進出するのは関西学院ではないかと予想した。このたびの同学院の動きは、その予想に合致するものだ。

 

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 それでは、関西学院大学が構想する「王子キャンパス」は、どのようなものになるのだろうか。勝手に考えてみた。

 現在の関西学院大学のキャンパスは複数に分かれている。

 

(1)西宮上ケ原キャンパス

 校地面積:417,247㎡
 神学部、文学部、社会学部、法学部、経済学部、商学部、人間福祉学部、国際学部

(2)神戸三田キャンパス
 校地面積:137,975㎡
 理工学部総合政策学部

(3)西宮聖和キャンパス

 校地面積:27,8966㎡
 教育学部

(4)大阪梅田キャンパス
(5)東京丸の内キャンパス
(6)西宮北口キャンパス

 

 これを見ると、西宮が、上ヶ原キャンパスおよび周辺の西宮清和キャンパスと合わせて、大学の本拠地ということになるだろう。続いて、神戸三田キャンパスが第2の拠点ということになるだろうが、神戸三田キャンパスは、郊外にあって交通の便が非常に悪い。大学の本拠地の西宮から遠いだけではなく、神戸や大阪の都心や市街地からも遠く、今後の学生確保も考え合わせると、課題を抱えていると思われる。その他のキャンパスは、都心や交通中心地に置くサテライト的な位置づけと考えられる。

 これらのことから考えると、仮に「王子キャンパス」が実現するとすれば、この神戸三田キャンパスからの移転が一つの視点となるだろう。しかしながら、神戸三田キャンパスからまるごと移転するだけの広さは、4ヘクタールの「王子キャンパス」にはない。また、大学の本拠地は、あくまでも西宮であるから、「開学の地」とは言うものの、西宮に所在する学部が移転したがるとも思えない。やはり、設立の比較的新しい学部が移転の候補に挙がるのではないだろうか。となれば、1995年開設の総合政策学部、2008年開設の人間福祉学部、2010年4月の国際学部あたりが考えられる。もしくは、新学部の開設も考えられるだろう。

 学生数は、総合政策学部が2,351人、国際学部が1,242人、人間福祉学部が1,236人(出典:河合塾)であり、これらのうちの1から2の学部が移転してきたとして、どの程度周辺のにぎわいにつながるだろうか。神戸大学の最寄りの阪急六甲にしても、それほど人が賑わってる様子でもない。神戸大学の六甲地区の学生数の合計は9,235人(出典:河合塾のデータから集計)である。それよりもずっと人数が少ない新キャンパスが周辺にもたらす効果は限定的と思われる。大学の誘致といっても、一部の学部が転入するだけでは、けっして大きな効果が得られることは期待できない。したがって、大学の看板に飛びつくのではなく、都心に近い利便性の高い土地をどのような用途にあてるのかを、費用効果も考え、十分検討の上、選択すべきであろう。少なくとも、当初の案のように、敷地を3分割し、いずれもが中途半端となってしまうような計画は見直すべきだろう。

一つの寓話

 二人の男が争っているとする。これを見た周囲の人々は、かれらを制止するだろう。そして争っている理由を聞くだろう。両者の言い分を聞いて仲裁するだろう。

 

 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まった。これだけ文明が進んだ社会にあって、同じ人間同士が武力を用いて殺し合いをするということは、とても悲しいことだ。取り分け、過去は一つの国家、同じ国民として共に暮らしてきた人々が憎しみあい、銃口を向け合うことは、なんと痛ましいことだろう。

 

 争いを止めるよう、世界中の人々が声を上げている。その中に紛れて、徹底的な抗戦を呼びかける者がいる。そのための武器供与をするなどという話もある。けんかをする当事者に、負けるなと声援を送り、武器を手渡す者などあるだろうか。それは火に油を注ぐ行為だ。争いには双方の言い分、利益があるはずだ。相手をならず者呼ばわりをすることは、双方の不信と憎しみを一層かき立て、同じ人間同士であることを忘れさせ、話し合いによる問題の解決をますます遠ざけてしまう。

 このままエスカレートするならば、いずれの結果になったとしても、さらに巨大な惨禍を招くことになりかねない。

 

王子公園の再整備計画について(3)

 2月16日に神戸市長の定例記者会見が行われ、令和4年度当初予算案について説明があった。その議事録が神戸市のHPで公表されている。その中で、「王子公園再整備」についての説明があったので、その部分を抜粋してみよう。

 

神戸市:定例会見 2022年(令和4年)2月16日 (kobe.lg.jp)

 

 まずは、久元市長の当初予算案についての説明部分である。

 王子公園の再整備は、これまでも申し上げてきましたけれども、本当に動物園の施設、それからスタジアムなど、施設が非常に老朽化している。私が子供のときと風景が変わっていない。変わっていないことがいい面もありますけれども、しかし大きく老朽化している。

 そして、神戸市全体で求められていることは、やはりたくさんの若い世代に住んでもらう、若い世代に働いてもらう、若い世代に学んでもらうという取組み、これが重要です。そういう観点からいえば、大学の誘致というのは非常に有力な手法です。そして、王子公園はあの周辺に、北には神戸大学がありますし、松蔭、海星、そして葺合高校などの高校もある文教地区ですね。大学の誘致としては適地です。

 こういう考え方で王子公園を再整備していこうということで、去年の1月に基本的な考え方の方針を発表いたしました。そして去年、基本的方針の素案を公表いたしまして、必要な意見をいただいてきました。

 これに対しては1,500件ぐらいのパブリックコメントをいただいておりまして、その多くが、これに対しては異論があるという内容になっています。改めて、やはりそういうような多数の御意見に対しては丁寧に説明する必要があるというふうに考えております。

 同時に、王子公園の再整備は、この内容につきまして、パブリックコメントを踏まえた検討も必要になりますが、やはり必要な準備は進めていかなければいけませんから、再整備に必要な測量や、あるいは調査の検討、それから王子動物園の園舎、私も改めて見に行きましたけれども、本当に老朽化しております。象の園舎も見ましたけれども、本当に一生懸命飼育している飼育員の方々の苦労というのが、やはり非常にこれは大きなものがあるということを改めて感じました。やはり王子公園のリニューアル、王子動物園のリニューアル、そして王子公園全体の再整備というのは図っていかなければなりません。

 同時に様々な意見をいただいておりますから、その意見をしっかり踏まえた検討というのをこれから行っていきたいと思いますし、そういう前提の下に必要な予算を計上することといたしました。

 

 続いて、説明後の質疑応答部分である。

 

記者: ありがとうございます。大学といえば王子公園も大変有効な活用方法、手法だということをおっしゃっているんですけど、これは丁寧に説明したいということなんですけど、パブコメの結果を見ても、大学がやっぱり必要なので、そこにはこだわりたいということなんでしょうか。

 

久元市長: やはり大学の必要性というのをもうちょっと丁寧に説明しないといけないというふうに思います。やはりあの近辺に住んでおられる方から見れば、今まで子供を連れて遊びに行って、遊園地で観覧車に乗ったり汽車ぽっぽに乗ったりして遊べるところがなくなって大学がやってくるというのは、自分たちのやっぱり庭のように使っていたところが奪われるという感覚になるというのは、それは分からないでもありません

 

 しかし、神戸全体の今置かれている状況を考えたときに、やはりその必要性というものをよく理解していただく努力というのは我々はより一層やらないといけないし、そして、個別にいろんな要望もいただいていると思いますので、私も詳しくまだパブリックコメントは読んでいませんが、全体の土地利用の中でそれがかなえられるようなものがあるのかないのかというのもやっぱり考える必要もあるんだろうというふうに思います。

 

 

 以上について、コメントしてみよう。

 まず、説明部分を見ると、「神戸市全体で求められていることは、やはりたくさんの若い世代に住んでもらう、若い世代に働いてもらう、若い世代に学んでもらうという取組み、これが重要です。そういう観点からいえば、大学の誘致というのは非常に有力な手法です。」と述べており、王子公園を再編するのは、大学の誘致のためであり、大学を誘致することにより、若い世代を神戸市内に誘致することが目的であることがわかる。そして、若い世代を神戸市内に誘致することは、人口減少に悩む神戸市全体に求められていることであるとのことだ。

 また、「パブリックコメントを踏まえた検討も必要になりますが、やはり必要な準備は進めていかなければいけません」とも述べており、王子公園の再整備は、パブリックコメントを踏まえた検討を行うことが必要であるが、(計画案を進めていくために)必要な準備、調査や測量を進めることを表明し、意見は検討するが、あくまで原案どおりに大学誘致を行う意思が読み取れる。やはり、水面下で具体的な計画が進んでいるのではないだろうか。

 

 続いて、質疑応答部分であるが、「やはり大学の必要性というのをもうちょっと丁寧に説明しないといけない」と述べており、あくまでも大学の誘致が目的であることが改めて確認できる。

 そして、「あの近辺に住んでおられる方から見れば、今まで子供を連れて遊びに行って、遊園地で観覧車に乗ったり汽車ぽっぽに乗ったりして遊べるところがなくなって大学がやってくるというのは、自分たちのやっぱり庭のように使っていたところが奪われるという感覚になるというのは、それは分からないでもありません」と述べている。反対をしているのは、自分たちの庭が奪われる感覚が原因であると述べているが、果たしてそうだろうか。

 人間は、幼少期から青年、中高年、老年と移ろっていくものである。そして、それぞれの世代で必要なものは変わっていくものだろう。だから、幼少期の者にとって重要なものが、青年、老年に全く不要であることは珍しくないし、またその逆の事例もあるだろう。しかし、大人にとって必要がなくなるものが、無価値であるということではないし、どちらが価値があるかということは比べることができないものだ。遊園地の廃止に反対している者は、遊園地も(大学に劣らず)大切で、片方を作るために、もう片方をなくすのはやめてくれ、と主張しているのではないかと思う。

 久元市長は、おそらく、大学の重要性は遊園地・動物園に勝ると考えていることは間違いないだろう。それは、遊園地の遊具を「汽車ぽっぽ」と幼児言葉を使って表現していることから明らかだ。

 ここに、久元市長のインテリズム偏重を感じ取ることができる。久元市長は、図書館やクラシック音楽は大好きだが、大衆の好むものに理解が乏しい。最近の神戸が今ひとつ活気がないのは、久元市長のこの嗜好の影響も少なくないだろう。つまり、いろんな施策を打ち出すが、大衆の関心、支持を得られていないのだ。大衆はわざわざ神戸市の施策に駄目出しなんかしてくれない。ただ、無視して、余所へ行くだけのことだ。

 今回の王子公園の再整備は、市民に遊園地・動物園と大学の2択を突きつけたから、拒絶反応が示されているのだ。それは、単に王子公園だけの問題ではなく、実際に市民が久元市長の方針をどうとらえているかを、あぶり出したものと捉えるべきだろう。

 

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神戸空港開港16年

開港から16年 神戸空港、コロナ禍で需要戻らず 年間搭乗率も過去最低

 

 神戸空港が16日、開港から丸16年を迎えた。16年目に当たる2021年(1~12月)の旅客数は、神戸市の集計基準(乳幼児を含まない)で159万5474人と、過去2番目に少なかった。最少だった20年(159万3709人)からほぼ横ばいとなっており、長引く新型コロナウイルス禍の影響が鮮明となった。搭乗率は20年比4・2ポイント減の48・2%となり、初めて5割を切った。

神戸新聞 2022/1/17)

 

 神戸空港は去る2月16日に開港から16年を迎えた。神戸新聞は「開港から16年 神戸空港、コロナ禍で需要戻らず 年間搭乗率も過去最低」という記事を掲載した。旅客数は過去2番目に少なく、最少だった前年(2020年)からほぼ横ばいとなっており、搭乗率も初めて5割を切ったことを挙げて、神戸空港の需要が低迷していると報じた。1日の発着上限枠は、19年の関西3空港懇談会で80便へ引き上げられたが、「コロナ禍の減便・運休で実際に80便を飛んだ日はなく」、「21年10月からのダイヤは74便(37往復)にとどまる」とも伝えている。さらに、貨物取扱量は7年連続でゼロであること、空港島産業余地の新規分譲・賃貸が2年連続ゼロであることを伝えている。

 この記事を読むと、神戸空港は需要が低迷しており、先行きの見通しも暗く、やはり神戸空港建設は失敗だったのではないかという印象を持つ者も多いのではないだろうか。

 確かに、数字そのものは同紙が報じる通りであるのだが、こうした状況は神戸空港に限った話ではなく、航空業界全体の問題であるにもかかわらず、神戸空港開港記念日に合わせて、神戸空港単独の問題のように報じるのは違和感がある。

 

(関西3空港の コロナウイルス禍の回復率)

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 回復率 = 2021年各月の乗客数 ÷ 2020年1月の乗客数

 黄色は、各月の最も回復率の高い空港を表す。

 

 上記の表は、新型コロナウイルスの影響が及ぶ前の2020年1月の乗客数を1とした場合の、2021年1月から12月までの乗客数の割合を各空港の新型コロナウイルス禍からの「回復率」として表したものである。

 この表を見ると、直近の2021年12月では、神戸空港の回復率は0.80、伊丹空港 0.75、関西空港(国内線) 0.71、関西空港(国際線) 0.01となっており、神戸空港は最も高い回復率となっている。ここからは、むしろ、神戸空港コロナウイルス禍という大災厄の中にあっても大健闘していると言うべきだ。さらに言えることは、神戸空港は、伊丹、関西の先行2空港からオーバーフローした需要を拾っているだけではなく、独自の後背地をもった存在であるということだ。そして、最近では、FDAの新潟線開設や、関西3空港懇談会で国際線対応の方針の報告を求められるなどの状況も生じている。

 神戸新聞は、これまでも神戸空港の需要についてたびたび報じているが、今回の記事と同様の傾向がある。

 

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 神戸空港は、関西3空港懇談会でも国際化の対応を求められているように、大きな可能性を持っている存在だ。それは、神戸市民全体の財産と言えるものだ。もし、もっと市民全体がその価値を認識し、応援する姿勢であったなら、民営化の条件交渉において、もっと有利な条件が得られたのではないだろうか。神戸空港は建設時から開港後に至るまで、猛烈な逆風にさらされ続けた。しかし、民営化されてしまえば、うそのように逆風は治ってしまった。その後一転してその利活用が議論されるようになっている。あの逆風は、結果的に誰を利することになったのだろうか。

「こんな新幹線の駅はない」 神戸市が新神戸駅前広場・生田川公園の再整備計画を発表

新神戸駅前が生まれ変わります!新神戸駅前広場・生田川公園の再整備

 

 神戸市では、新神戸駅前広場について、令和3年9月に、再整備の基本方針等をまとめた「新神戸駅前広場再整備の進め方」を策定しました。また、駅前広場に隣接する生田川公園についても再整備を予定しており、令和3年12月には、これらの施設のデザインを検討する事業者を、公募型プロポーザル方式により選定しました。
 このたび、デザインコンセプトや再整備のイメージ等を取りまとめましたので、「新神戸駅前広場再整備の進め方」とあわせた新神戸駅前広場・生田川公園の再整備計画をお知らせします。

 

1.新神戸駅前広場再整備の位置付けについて
 新神戸駅は、広域的な交通における神戸の玄関口であり、神戸空港や都心・ウォーターフロントへのアクセスをはじめとした重要な交通結節点です。
 また、六甲山系の麓に位置し、北野エリアや布引ハーブ園、布引の滝などの周辺観光スポットへのアクセス拠点でもあります。
 そこで、都心エリアの再整備の一環として、三宮駅神戸駅周辺と合わせて、再整備に取り組みます。
 
2.現状と課題
① 新神戸駅前広場
 「公共交通と一般車が混在し、バスの乗り場が点在して分かりづらい」「北野や布引の滝等の周辺エリアへのアクセスが分かりづらい」「神戸を感じられる雰囲気づくりができていない」等の課題があり、「リノベーション・神戸」の一つとして、再整備を行います。

② 生田川公園
 「施設の老朽化」「水路により広場が分断されており、広場としての機能を有効に活用できていない」「河川との一体感やサクラ、連翼亭といった既存の資源を生かしきれていない」等の課題があり、現在の特徴を残しつつ、新たな賑わいを生む公園として再整備を行います。
 

3.新神戸駅前広場再整備の基本方針
 駅前広場再整備にあたり、令和3年9月に「新神戸駅前広場再整備の進め方」を策定し、3つの基本方針を示しました。

【基本方針】
方向性1 公共交通の利便性向上(交通機能の再編)
 新幹線改札口と同じ2階に公共交通(バス・タクシー)の乗降場所を集約するとともに、待合環境等の向上を図るなど、乗換え利便性を向上させます。
 バス乗降場は将来的な神戸空港方面等へのBRTの導入にも対応できるようにします。
1階と2階で一般車と公共交通を分離することで、交通の円滑化を図ります。


方向性2 周辺エリアへの歩行者動線の改善
 初めて訪れる方が目的地にスムーズに移動できるように、新幹線改札前の出入口部において、あらゆる方面への歩行者動線の起点となる結節点を整備します。
 北野や布引の滝等の周辺エリアへのアクセス改善を図るため、案内サインや、高架下空間のリニューアルを含む歩行者動線を改良します。


方向性3 玄関口としてふさわしい空間の創出
 駅南側に新設する駐車場の上部にデッキを整備し、新幹線改札から生田川公園にかけて一体となった、神戸らしさを感じられるシンボル空間を整備します。

 

4.デザインコンセプトと再整備計画(イメージ)
① デザインコンセプト 「山と街をつなぐ新神戸ハーブガーデン」
 新神戸駅フラワーロードの起終点であるとともに、山麓部には布引ハーブ園が隣接しています。また北野エリアは多様な文化を取り入れてきた歴史から西洋文化を感じられるハーブと親和性が高いと考えられます。
 このため、山と街をつなぐ駅前広場にするための象徴として、ハーブをコンセプトに用いることにしました。
 
② シンボル空間・生田川公園の再整備計画(イメージ)
【シンボル空間①】
 改札口南側のシンボル空間①では、神戸の街に降り立った人々を出迎える新たなシンボルとして、ハーブの花々が鏡面の屋根、壁に映り込む花のゲートを設置します。初めて訪れる方が、このゲートを起点として周辺の目的地にスムーズに移動できるよう案内機能の充実を図ります。

 

【シンボル空間②】
 新設するデッキ上のシンボル空間②は、駅や周辺の観光スポットなど周辺施設の前庭空間として、休憩や散策に訪れ、神戸らしさを感じられる空間にします。
 ハーブを中心に四季を通じて変化する様々な花や緑を植栽するとともに、記念撮影のスポットとしてBE KOBEモニュメント等を設置します。
 光のミュージアムの起終点として、連続する植栽帯の間接照明としての活用や、ルーバーの照明による光のスポット空間の創出等により、印象的な夜間景観を形成します。

【生田川公園】
 生田川公園は駅前広場と一体となり、フラワーロードの起終点として、またサクラの名所としてより魅力ある空間へ再整備します。

 湧水を活用した親水広場をリニューアルし、連翼亭など今ある資源を活かした親水空間とします。

 また、駅前広場の一区画として、イベントの開催やキッチンカーの設置が可能な広場を設けて、新たなにぎわいを創出し新神戸周辺の回遊性向上を図ります。

 

5.まちの活性化に向けて
 駅前広場の再整備を周辺エリアの活性化に波及させるため、地域の皆さんや周辺施設の事業者と連携し、新設デッキ上のシンボル空間や生田川公園等を、店舗の設置やイベント開催等によるにぎわい創出の場として活用します。また、店舗等の運営事業者が日常管理を行うスキームや、整備・管理費を抑えるデザインを検討し、ライフサイクルコストにも配慮した計画とします。
 登山の準備スペースなどの周辺エリアへの起点となる空間を整備することで、駅の拠点性や回遊性の向上を図ります。

 

(神戸市記者提供資料 2022/1/28) 

 

 

 1月28日、新神戸駅周辺の活性化を目指す神戸市は、新神戸駅前広場・生田川公園の再整備計画をまとめ、発表した。これについての意見を述べてみよう。

 

 周辺を美しく整備すること自体は結構なことだが、これが神戸全体の活性化につながるだろうか。

 美しく整備して、そこがイベントに利用され、多少、周辺に人のにぎわいができるとしても、それが神戸全体のにぎわいを高める効果があるだろうか。全体の人出が増えなければ、単にイベントを行う場所が増えるだけで、かえってにぎわいが拡散し、薄まるだけではないだろうか。大切なことは都市のパイを増やすことだ。特に、神戸は、これまで、開発地ごとにセンターを設けようとするので、都市全体の都心機能が分散し、弱くなってしまったのではないかということが都市づくりの反省点としてあったのではなかっただろうか。

 

 新神戸駅は、神戸の玄関口であることはもちろんだが、それだけにとどまらないはずだ。新神戸駅は、兵庫県、関西、中国・四国の玄関口でなければならない。しかるに、この計画では、

1.新神戸駅前広場再整備の位置付けについて
 新神戸駅は、広域的な交通における神戸の玄関口であり、神戸空港や都心・ウォーターフロントへのアクセスをはじめとした重要な交通結節点です。
 また、六甲山系の麓に位置し、北野エリアや布引ハーブ園、布引の滝などの周辺観光スポットへのアクセス拠点でもあります。

(神戸市記者提供資料(抜粋) 2022/1/28) 

 と、「神戸」から一歩も視野が広がっていない。新神戸駅は、広く、兵庫県下、淡路、四国、西日本から乗降客を集め、送り出す、兵庫県、関西、中国・四国の交通拠点でなければならない。それによって、年中、多くの人々が乗降し、通過し、滞在し、それらの需要を満たすホテルやサービスの機能が集積する場所、さらにはその広域の利便性を求めて企業が拠点を置く場所であるべきだ。新神戸駅東海道・山陽・九州新幹線の全列車が停車するのは一体何のためなのだろうか。

 ここに、現在の神戸市の視野の狭さと、おそらくは計画に携わる者の偏りを感じる。

 

 では、新神戸駅が、名実ともに、兵庫県、関西、中国・四国の交通拠点となるためにはどうしたらよいのだろうか。それは、新神戸駅と、できるかぎり多くの交通機関を結びつけることだ。とは言うものの、今から、新神戸駅交通機関を物理的に結びつけることは現実的ではない。しかし、幸いなことに、神戸には、すでに鉄道や道路などの交通網が集積している。それは山が海に迫る神戸の地理的属性によるものであるとともに、神戸が幕末の開港以後、日本の窓口として神戸港を起点とする鉄道網や道路網が構築されたという都市の歴史的な遺産である。あとは、それらの交通網と新神戸駅をいかに結びつけるかだけである。その点にこそ知恵を絞るべきだ。

 新神戸駅とそれらを結びつける手段はすでに存在している。市営地下鉄である。この乗り継ぎの利便性、経済性の向上こそが重要である。最大のネックになっているものは、都心までの2キロ、乗車時間わずか1分のところを追加料金の支払いが必要なことである。わずかな額と思うかもしれないが、交通は合理性がものを言う世界であり、不合理なものは選択されない定めにある。これは、日本全国の大都市で、新神戸駅だけの特徴だ。(その他の都市では、新幹線の駅とJRの在来線とが接続しているので、この費用が無料となるからだ。)久元神戸市長は1月28日の会見で、「こんな新幹線の駅はほかにない」と述べたようだが、それは、「すぐ北側に六甲の山並みが迫り、観光名所「布引の滝」までは徒歩15分ほど、また、南側の生田川沿いが桜の名所」(2022/1/30 Lmaga.jp)であることが理由のようだ。しかし、それは交通機関としての価値と何の関係もないことだ。新神戸駅のほかにはない特徴をもう少し考えてみてほしいところだ。

 筆者は、これまでも、新幹線の利用客について市営地下鉄の三宮、新神戸駅間の料金の無料化を提案してきた。久元市長のこの発言に対して、筆者と同様に無料化を提案する意見が多く寄せられており、この意見は多くの人々の意見であることがわかる。都市の交通拠点の盛衰は、都市の命運を左右する。そのために、経済的負担を行うことは決して無駄なことではなく、トータルとして考えると大きな利益を生むと考えられる。大きな費用をかけて、効果の定かでない様々な施策、モニュメントや登山の準備スペースの設置などを行うよりも、よほど根本的で重要な問題である。

 

 最近、三宮、神戸と再整備の計画が次々と打ち出されるが、それぞれの駅が持っている性格は異なるはずだ。にもかかわらず、どうして、どの駅でも周辺に歩いていけること、神戸を感じられることばかりを目標に整備をしているのか、その辺のセンスが、いつもながら、よくわからない。

 

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FDAが神戸-新潟線を開設

 新興航空会社のフジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)は18日、新たに神戸-新潟線を3月27日に開設すると発表した。この区間の就航は、2007年6月に全日本空輸(ANA)が廃止して以来となる。1日2便(1往復)を運航する。

 FDAは19年10月、神戸空港に新規就航した。現在、青森、花巻(岩手県)、松本(長野県)、高知の4路線(1日5往復、計10便)を展開している。

神戸新聞 2022/1/18)

 

 

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220118_2.pdf (fujidream.co.jp)

 

 神戸空港の拠点化を進めるFDAは、現在の青森、花巻、松本、高知に続き、日本海最大の都市 新潟市との便を3月27日から開設すると発表した。同社の神戸空港からの路線は5路線となり、2019年10月の松本、出雲便の開設以来、新型コロナウイルス禍という大逆風の中にあっても、着実に路線開設を進めているのは心強い限りだ。

神戸空港にとって、新潟は、東京、札幌、青森、花巻、仙台、茨城、松本、高知、長崎、鹿児島、那覇宮古に続く13都市目の就航都市となる。関西空港の就航都市は16都市であるから、神戸空港の存在感は一層高まることになるだろう。

 

 同社は、今回の神戸ー新潟線について、陸路に比べて大幅に時間を短縮でき、十分な需要が見込まれることから就航を決めたようだ。また、岡山や徳島など中四国に商圏を広げる効果も期待しているとのことだ。

 同社のこの判断は的確であると考える。神戸に路線を開設することは、単にその両都市を結ぶという意義にとどまらず、関西圏とその地方を結ぶことなのだ。関西圏は周辺人口が2000万人に及ぶ国内第2位の人口集積地であり、京都、奈良、姫路などを擁する我が国最大の歴史遺産の宝庫であるとともに、甲子園球場宝塚歌劇、USJなどの全国級の観光施設の集積地である。関西圏は、まさに我が国の「文化首都」ともいえる存在だ。神戸は、その関西圏のゲートシティともいうべき役割を担う都市である。神戸は、東海道・山陽新幹線の全列車が停車する新神戸駅があり、山陽自動車道、中国自動車道明石海峡大橋を渡る本州四国連絡道路などの高速道路網が集積し、西日本最大級の長距離バス路線の発着点となっている。さらには、大阪、京都を結ぶ高速・大量輸送能力を誇るJRの在来線、阪急、阪神などの関西大手私鉄のターミナルがある。同社が期待するように、神戸空港は、関西および西日本全域から航空需要を集め、来訪する航空需要を関西および西日本全域に送り出すのに最適なポジションにある。その神戸のポテンシャルの高さに着目し、急速に路線網を拡大する同社は、スカイマークと並び神戸にとって非常にありがたく、頼もしい存在だ。神戸市は、同社と連携を密にし、さらなる事業の発展のために必要な施策で可能なものは積極的に協力を行うべきだ。

 

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