神戸空港開港16年

開港から16年 神戸空港、コロナ禍で需要戻らず 年間搭乗率も過去最低

 

 神戸空港が16日、開港から丸16年を迎えた。16年目に当たる2021年(1~12月)の旅客数は、神戸市の集計基準(乳幼児を含まない)で159万5474人と、過去2番目に少なかった。最少だった20年(159万3709人)からほぼ横ばいとなっており、長引く新型コロナウイルス禍の影響が鮮明となった。搭乗率は20年比4・2ポイント減の48・2%となり、初めて5割を切った。

神戸新聞 2022/1/17)

 

 神戸空港は去る2月16日に開港から16年を迎えた。神戸新聞は「開港から16年 神戸空港、コロナ禍で需要戻らず 年間搭乗率も過去最低」という記事を掲載した。旅客数は過去2番目に少なく、最少だった前年(2020年)からほぼ横ばいとなっており、搭乗率も初めて5割を切ったことを挙げて、神戸空港の需要が低迷していると報じた。1日の発着上限枠は、19年の関西3空港懇談会で80便へ引き上げられたが、「コロナ禍の減便・運休で実際に80便を飛んだ日はなく」、「21年10月からのダイヤは74便(37往復)にとどまる」とも伝えている。さらに、貨物取扱量は7年連続でゼロであること、空港島産業余地の新規分譲・賃貸が2年連続ゼロであることを伝えている。

 この記事を読むと、神戸空港は需要が低迷しており、先行きの見通しも暗く、やはり神戸空港建設は失敗だったのではないかという印象を持つ者も多いのではないだろうか。

 確かに、数字そのものは同紙が報じる通りであるのだが、こうした状況は神戸空港に限った話ではなく、航空業界全体の問題であるにもかかわらず、神戸空港開港記念日に合わせて、神戸空港単独の問題のように報じるのは違和感がある。

 

(関西3空港の コロナウイルス禍の回復率)

f:id:firemountain:20220219222508j:plain

 回復率 = 2021年各月の乗客数 ÷ 2020年1月の乗客数

 黄色は、各月の最も回復率の高い空港を表す。

 

 上記の表は、新型コロナウイルスの影響が及ぶ前の2020年1月の乗客数を1とした場合の、2021年1月から12月までの乗客数の割合を各空港の新型コロナウイルス禍からの「回復率」として表したものである。

 この表を見ると、直近の2021年12月では、神戸空港の回復率は0.80、伊丹空港 0.75、関西空港(国内線) 0.71、関西空港(国際線) 0.01となっており、神戸空港は最も高い回復率となっている。ここからは、むしろ、神戸空港コロナウイルス禍という大災厄の中にあっても大健闘していると言うべきだ。さらに言えることは、神戸空港は、伊丹、関西の先行2空港からオーバーフローした需要を拾っているだけではなく、独自の後背地をもった存在であるということだ。そして、最近では、FDAの新潟線開設や、関西3空港懇談会で国際線対応の方針の報告を求められるなどの状況も生じている。

 神戸新聞は、これまでも神戸空港の需要についてたびたび報じているが、今回の記事と同様の傾向がある。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 神戸空港は、関西3空港懇談会でも国際化の対応を求められているように、大きな可能性を持っている存在だ。それは、神戸市民全体の財産と言えるものだ。もし、もっと市民全体がその価値を認識し、応援する姿勢であったなら、民営化の条件交渉において、もっと有利な条件が得られたのではないだろうか。神戸空港は建設時から開港後に至るまで、猛烈な逆風にさらされ続けた。しかし、民営化されてしまえば、うそのように逆風は治ってしまった。その後一転してその利活用が議論されるようになっている。あの逆風は、結果的に誰を利することになったのだろうか。