一つの寓話

 二人の男が争っているとする。これを見た周囲の人々は、かれらを制止するだろう。そして争っている理由を聞くだろう。両者の言い分を聞いて仲裁するだろう。

 

 2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し戦争が始まった。これだけ文明が進んだ社会にあって、同じ人間同士が武力を用いて殺し合いをするということは、とても悲しいことだ。取り分け、過去は一つの国家、同じ国民として共に暮らしてきた人々が憎しみあい、銃口を向け合うことは、なんと痛ましいことだろう。

 

 争いを止めるよう、世界中の人々が声を上げている。その中に紛れて、徹底的な抗戦を呼びかける者がいる。そのための武器供与をするなどという話もある。けんかをする当事者に、負けるなと声援を送り、武器を手渡す者などあるだろうか。それは火に油を注ぐ行為だ。争いには双方の言い分、利益があるはずだ。相手をならず者呼ばわりをすることは、双方の不信と憎しみを一層かき立て、同じ人間同士であることを忘れさせ、話し合いによる問題の解決をますます遠ざけてしまう。

 このままエスカレートするならば、いずれの結果になったとしても、さらに巨大な惨禍を招くことになりかねない。