フジドリームエアラインズが神戸空港を拠点化

f:id:firemountain:20190727114724j:plain


  フジドリームエアラインズ(FDA)の三輪社長が、日本経済新聞のインタビューで、神戸空港を「名古屋、静岡に次ぐ第3の拠点にしたい」、「東北や新潟なども将来の就航先候補になる。1日80回に広がった発着枠をさらに広げてほしい。」と語ったということだ。

日本経済新聞2019/10/22) 

 

 FDAは、静岡県を拠点とする物流企業である鈴与がエアライン事業に参入するため設立した企業である。鈴与の持株会社である鈴与ホールディングスの傘下企業には、Jリーグの清水エスパルスがある。

 2008年(平成20年)6月に、鈴与の100%子会社として設立。

 翌2009年(平成21年)7月に、地元静岡を拠点に、小松、熊本、鹿児島の3路線の運航を開始。その後、札幌(新千歳)、福岡、出雲、北九州と路線を拡大してきた。

 2010年10月には、名古屋(小牧)に拠点を設け、福岡線の運航を開始。その後、熊本、花巻、青森、新潟、高知、山形、北九州と相次いで路線を拡大してきた。

 現在は、静岡空港が、出雲、北九州、福岡、鹿児島の4路線、名古屋空港が、青森、花巻、山形、新潟、出雲、高知、福岡、熊本の8路線となっている。

 

  FDAは、名古屋空港ハブ空港化を目論んでいたが、国土交通省中部地方における空港一元化の妨げになるとして名古屋空港からの新規路線の開設には慎重であり、2011年に開設した名古屋の東北路線も、震災復興支援の名目で期間限定を条件に認められている状態といわれている。 このように、名古屋空港での路線拡大は困難な状況であり、そこで着目したのが神戸空港というわけだ。

 FDAは、愛知県からも中部国際空港への就航を求められ、一旦は、中部国際空港への就航を検討すると表明していたが、既にこれを撤回していると伝えられている。(日刊工業新聞2017/7/7)

 つまり、これは、FDAが中部国際空港ではなく、神戸空港を拠点として選んだということを意味しており、今後は、事業の中心を神戸空港にシフトしていくだろう。

 

 2018年(平成30年)の利用客数を見ると、静岡空港は年間71万人、名古屋空港は91万人に対して神戸空港は318万人とはるかに大規模である。神戸空港は厳しい運用規制の下にあるが、これから規制緩和がされていく見込みがついたため、事業拡大の拠点としてふさわしいと考えたものと思われる。神戸空港の利点は、海上空港で24時間騒音の心配がない点だ。さらに、周辺の道路網、鉄道網が高度に発達し、ポートライナーで都心まで18分で結ばれているというアクセスのよさも挙げられる。また周辺人口が2000万人に及ぶ国内第2位の人口集積地であり、京都、奈良、姫路などを擁する我が国最大の歴史遺産の宝庫であり、甲子園や宝塚歌劇、USJなどの全国級の観光施設も豊富だ。まさに「文化首都」ともいえる関西圏の玄関口にあたるという点だ。FDAは、日本各地を小型リージョナルジェット機でダイレクトに結ぶリージョナル航空事業をビジネスモデルとしている。FDAのそうした小口の交通需要を結びつける事業形態にとって、神戸空港は大変魅力的であると見ているのだろう。

 FDAは、最初の就航からわずかに10年を経過したばかりである。同社のこれまでの事業展開の早さを見ると、今後、神戸空港規制緩和次第であるが、急速に路線網を構築していくのではないかと予想される。そして、将来的には神戸空港は、文字通り日本全国の航空路線網の西の中心地として発展していくことが期待される。

 神戸市としては、こうした動きと軌を一に合わせて、ターミナルの充実、アクセスの拡大はもとより、交通の利便性を活かして、市内における大規模集客施設の誘致、整備に努めるべきだ。

 

(補足)

 神戸との縁ということでいえば、FDAの三輪社長は総合商社の兼松の元社長であるが、兼松は神戸発祥の企業で、過去には社会貢献事業として現在の神戸大学にある兼松記念館を寄贈したこともある神戸とはゆかりの深い会社だ。

 

www.fujidream.co.jp