王子公園の再整備計画について(2)

王子公園再整備基本方針(素案)に対する意見募集

 この度、王子公園を「グローバル貢献都市を先導する学術・文化・スポーツ拠点」として再整備を進めるにあたって、「王子公園再整備基本方針(素案)」として取りまとめましたので、市民の皆さまのご意見を募集します。

(神戸市HP 2021/12/10)

 

 

 神戸市が、先頃取りまとめた「王子公園再整備基本方針(素案)」について意見募集を始めた。(意見募集期間は令和3年12月10日~令和4年1月17日まで)

 

神戸市:王子公園再整備基本方針(素案)に対する意見募集 (kobe.lg.jp)

 

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 この素案に対する意見を述べてみる。

 全体的に、この素案は多くのものを詰め込みすぎだ。

 元々、動物園と競技場などの運動施設の2つで区分されていたところへ、大学のスペースを捻出するがために、競技場の多くを廃止し、動物園の遊園地を立体駐車場に置き換え、運動施設もアメリカンフットボール主体の球技場を作るなど、多方面の要望を抜本的に整理せずに、なんとか押し込んだような計画だ。しかし、これでは、せっかくの再編をするのに、大学はともかく、動物園も運動施設も中途半端にならざるをえない。

 やはり、この三者のうち、どれかを移転させるべきだろう。それは、運動施設であるべきだろう。

 動物園は、小さな子供たちや家族連れが多く訪れる場所だから、交通の利便性のよいところがよいだろう。それになんといっても、生き物が暮らす場なのであるから、環境のよい場所、安全な場所であることが必要だろう。とすると、いくら広い土地があるからといって、海岸部の埋め立て地であれば、先年に見舞われたような高潮やさらには地震による大津波などのおそれもあるから、その立地は自然の脅威から安全な場所であることが必要だろう。となると、王子動物園が移転できるような適地は、なかなか見当たらない。

 一方、運動施設は、人が常時いる場所ではないから、動物園ほどの安全性は必要ではない。現に、他都市では河川敷の遊水地を運動施設にあてている例(日産スタジアムなど)がある。利用する者も健康で活動的な人々なので、駅前に立地させることも必要はないだろう。ただし、商業ベースの運動施設ということであれば、高い交通の利便性が要求されるから、都心への立地がふさわしい。それならば、三宮の近辺のみなとのもり公園や新港地区なども候補地になるが、今回の運動施設は商業ベースではないだろうから、それほどの交通利便性は不要だろう。したがって、動物園と運動施設のどちらを取るかとなると、動物園を取るべきである。

 では、運動施設はどこに移転させるのがよいか。そもそも、グラウンドは市内にすでにたくさんあるので、新たにつくる必要があるのかという点から検討した方がよい。その結果、もし、必要だということであれば、王子公園の南側に位置する、なぎさ公園やもう少し広い範囲で考えるなら、六甲アイランドの南端の遊園地跡地などが考えられる。王子スポーツセンター(体育館)も現地にはあるが、1978年建築でかなり老朽化していると考えられるから、将来的には移転させた方がよいだろう。

 以上のように考えて、王子公園は動物園と大学の2者で使用すればよいと考える。この案のメリットは、王子動物園の敷地を大幅に拡充できることだ。

 現在の王子公園は全体で19ヘクタールほどの広さなので、大学に4ヘクタールを割くとして、残り15ヘクタールが動物園の敷地となる。現在の王子動物園は遊園地を含めて8ヘクタールほどなので、倍程度の広さを確保できることになる。東京の上野動物園は約14ヘクタール、大阪の天王寺動物園は約11ヘクタールだから、決して広すぎるということはない。むしろ、動物の成育環境を整えるという趣旨から考えると、現在よりも広い敷地を確保するのは当然のことだ。王子動物園はすでに神戸市民が誇る動物園ではあるが、新しい動物園は十分な敷地を確保して、今後の50年、100年を視野に、上野動物園にも負けない、世界でも注目されるような、日本有数の動物園を整備するのがよいと考える。もちろん、遊園地も整備し、神戸市や周辺の都市の市民が多く訪れ、平和な一日を楽しめる施設にしてほしい。

 

 ところで、この素案によると、東側に大学を置き、現在地を含む西側に動物園を置くプランとなっているが、王子公園の駅前を大学に提供する必要があるだろうか。王子公園の南西の隅に神戸文学館があるが、これは関西学院大学当時のチャペルであったとのことだ。これを取り込む形で、大学を西側に配置し、動物園を中央部から東側に置いた方がよいだろう。

 

 今回の素案は、一見大胆なようで、美しいお題目はたくさん並んでいるが、取捨選択ができない現在の神戸市政の状況があらわれた計画だ。

 

 

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