新神戸駅の活用について

1 人口規模に比して極めて少ない乗降客数

 新幹線新神戸駅は、神戸空港と並ぶ神戸市の広域の玄関口であるが、乗降客数は神戸市の人口規模に比して極めて少ない。例えば、京都駅は、京都市人口146万人に対して34,490人/日(人口1万人あたり235人)、岡山市人口71万人に対して11,738人/日(人口1万人あたり164人)、北九州市人口95万人に対して10,553人/日(人口1万人あたり110人)であるのに対して、神戸市人口153万人に対して8,340人/日(人口1万人あたり54人)に過ぎない。岡山市並みの利用状況を仮定すると、神戸市ほどの規模の都市であれば、新神戸駅は25,000人/日の乗客があっても不思議ではないことになる。

 

2 乗降客数が少ない理由

 新神戸駅の乗降客数が少ない理由は、神戸市内の需要が新大阪駅に漏出していることに尽きると思われる。新大阪へ乗客が流れるのは、新神戸で乗車すると、余分に地下鉄の料金を払わなければならず、わざわざ、地下鉄を乗り継いでまで新神戸を利用しようと考えないためである。

 

3 需要取戻しの重要性

 仮に、この漏出していると思われる1.5万人/日の需要が取り戻せるならば、神戸の都心のにぎわいが大きく変わってくることは間違いない。この1.5万人/日が、神戸市内でたとえ1,000円でも消費するとすれば、1.5万人×1,000円×365日=54.75億円の需要が発生することになる。神戸市としては、この新幹線の需要の漏出を取り戻すことが課題となる。

 

4 需要取戻しの方策

 需要取戻しの方策としては、(1)在来線、私鉄各線から新神戸駅までの乗継の動線を改善(経路の最短化、バリアフリー化、動く歩道の導入 など)すること、及び(2)新幹線の乗降客について、市営地下鉄の新神戸~三宮間の運賃の補助を行い無料化することの2点である。特に(2)が重要と考える。実施の方法は、新幹線の乗車券を持っている者に対して、市営地下鉄の三宮駅新神戸駅の改札において、三宮駅新神戸駅間の乗車券を無料で交付するだけでよい。新幹線・新神戸駅の乗降客が、市営地下鉄を無料で利用できるなら、三宮~新神戸間の移動は、駅構内の移動と大して変わりがない。むしろ、そう考えられるように(1)の動線を改善すべきだ。これが実現すれば、これまで長年の懸案であった、神戸市の主要ターミナル駅三ノ宮駅)と新幹線の駅が別の場所にあるという問題が根本的に解決することになる。つまり、三ノ宮駅新神戸駅の事実上の一体化が実現することになる。

 

5 効果

 仮に、市営地下鉄沿線を除く、JR在来線、私鉄各線からの現在の乗継客数を1,000人/日とすると、210円×1,000人/日×365日=0.7665億円が市から市営地下鉄への補助に要する費用ということなる。(※ 市営地下鉄の減収分の補てんに相当する額。現在の乗降客数を超えて増加する部分については、そもそも「得られていなかった収入」なので補てんの必要はない。)しかし、先述の、年間54.75億円の消費需要が市内に新たに発生すると仮定するならば、市民税の税率を6%と考えると、3.285億円の税収増が見込まれることになるから、トータルとしては財政に負担をもたらすことはないと考えられる。これは、現に存在する交通施設の有効活用なので、追加的な投資が必要ない点で、効果的な施策だと思われる。

 これによって、これまで大阪に漏出していた需要の一部を取戻すことができるなら、新神戸、さらにはその玄関口となる三宮の拠点性が大きく高まり、文字通り「関西圏の西の玄関口」の役割を確立することができるに違いない。そうなれば、企業の立地、集積にも効果が期待できる。新神戸駅の拠点性が高まると、さらに、市内での宿泊客、観光客の増加も期待できる。例えば、現在、新神戸駅は淡路、四国方面からの新幹線の乗継駅の地位を確立しつつあるが、新幹線の乗車前に三宮で買い物をして、その後に新神戸駅へ移動するような「立ち寄り需要」も期待できるだろう。

 

6 最後に

 神戸は中国、四国、九州と関西圏の結節点にあたる。さらに、神戸は関西圏の大都市とは、強力な鉄道網(JR、阪急、阪神近鉄 等)で結ばれている。この地の利、交通インフラを最大限に活用すべきである。