元町商店街の活性化(3)

元町商店街のゲート問題

 

 前回、元町商店街の活性化を考える上で、「ここが神戸元町商店街である」と人々が認識できる景観づくりに努めることが重要であることを指摘した。そして、現在の元町商店街でその有力な素材として大丸百貨店前交差点に面する東ゲートの存在を挙げた。

 

 東ゲートはステンドグラスがはめ込まれ、夜間に点灯された姿はとても美しい。色とりどりの大小の円形が大胆に重なりあう構図であるが、よく見ると、小さなブロックが複雑に合わさって構成されており、非常に緻密にデザインされている。ところが、この東ゲートはその美しい姿にもかかわらず、それほど人々の注目を集めていない。これはどうしたわけだろうか。

 


 その理由は、東ゲートの昼間の姿を見るとよくわかるのだが、それは日中には単に黒っぽい門にしか見えない。というのは、ステンドグラスは、裏側から光を当てなければ美しい絵柄が浮かび上がらないからだ。本来、ステンドグラスは屋内で鑑賞するものであって、暗い室内で屋外からの透過光によって初めて鮮やかに絵柄が浮かび上がる。そのため、東ゲートは、日中、人々が多く通行する時間帯には、その存在をアピールすることができず、街の景観の中に黒っぽい物体として沈み込んでしまっている。これでは、日中は誰も被写体として写真を撮ったり、これを背景に記念撮影をしたりしないはずだ。東ゲートは元町商店街の正面玄関にあたるものだから、人々に商店街の存在を強く印象づけるものでなければならない。しかし、現状では、まさに「宝の持ち腐れ」となってしまっている。

 

(日中の東ゲート)

   

 

(夜間の東ゲート)



 商店街のゲートに求められる役割は、屋外で、周囲から明瞭に視認され、道行く人々を招き入れることである。ところが現在の東ゲートは、本来、屋内を美しく彩るものであるステンドグラスを、屋外に対してアピールするために用いている。とすれば、元町商店街のステンドグラスは、利用の仕方が誤っているということになる。

 

 これをなんとか解決する方法はないだろうか。

 ステンドグラスが最も美しく使用されている例は、西洋のゴシック建築であろう。ゴシック建築は外壁の細やかな装飾と暗い室内に屋外の光を透したステンドグラスの鮮やかな光がとても美しい。このステンドグラスの使い方が参考になる。パリのノートルダム寺院の有名なバラ窓は、屋外から見えているのは実はステンドグラスではなくフレームである。

 

(バラ窓(内側))

 

(バラ窓(外側))

(出典 Wikipediaノートルダム寺院」)

 

 

 

 つまり、外側には、模様をつけた飾りフレームを取り付けることが考えられる。このようにすれば、日中はフレームが陽光を浴びて美しい模様を描き出し、夜間は照明によって鮮やかな色彩を放つだろう。

 

 一方、現在の東ゲートの内側の状態を見ると、裏側(商店街の内側)には覆いが施されているため商店街の内部からステンドグラスの美しい色彩を直接見ることができない。そこで、裏側の覆いを取り除いて、直接ステンドグラスが見えるようにすればよい。

 

(東ゲート(内側))



 

 先ほど、東ゲートは、日中にはステンドグラスの美しい絵柄が浮かび上がらないと書いたが、一日のうち、太陽の光を通して光り輝く時がある。それは、夕暮れの時間帯だ。

 

(夕暮れの東ゲート)

 

 やはり、太陽の光を透して見るステンドグラスは非常に美しい。しかし、これにしても、上半分は鮮やかに文様が浮かび上がるが、下半分はアーケードの陰で光が遮られてしまっている。また、全体として太陽を背にする逆光となるので、なかなか直視することが難しい。

 

 これを解決する方法として、現在の東ゲートを西ゲート側に移設をしてはどうだろうか。西ゲート側に設置した場合、午後の西日を通してステンドグラスの色とりどりの光が商店街の内側に降り注ぐだろう。三宮側から商店街を西に進み、最後の6丁目に至ったときに、アーケードの先に鮮やかなステンドグラスが浮かび上がるのは、ルミナリアのガレリアのようで、なかなか見応えがある光景になるのではないか。その光景を見るために、大勢の人々が商店街を通り抜けしてくれたら、商店街の西側も大いに活気づくのではないだろうか。

 

(現在の西ゲート)



 西ゲートは、JR神戸線の車中からも見ることができるので、日中にはフレーム、夜間には内側からのライトアップをすれば、元町商店街の存在を大いにアピールすることができるだろう。

 

 仮に、現在の東ゲートを西ゲートに移設するとすると、東ゲート側にはそれに代わる新しいゲートが必要となる。それはどのようなものがよいだろうか。それは、まず屋外の明るい光の中で美しく見えるものである。それは色彩や陰影をしっかり描き出す構造物である。たとえば、白っぽい素材で凹凸が細やかに施されているものが考えられる。それは、どのようなものかと言えば、まさにゴシック建築の外壁である。ゴシック建築は屋外は日光を受けて外壁に繊細な陰影を描き出し、屋内は暗がりの中で鮮やかなステンドグラスの光が降り注ぐ。現代のようなライトアップを要せず、自然を実にうまく活用したものであることに、あらためて感嘆するばかりだ。

 

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