関西学院、神戸市が王子公園に大学誘致で検討委 「王子キャンパス構想」
関西学院大学などを運営する学校法人の関西学院(西宮市)が、王子公園(神戸市灘区)再整備の一環で計画している神戸市の大学誘致に応募するかなどを検討する「王子キャンパス構想特別委員会」を設置したことが分かった。(中略)
1989年の開学から1929年に現在の上ヶ原キャンパスに移転するまで、現在の王子公園の一部は関西学院大学の敷地だった。王子公園は「開学の地」であることから、神戸市の発表を受けて関心を持ったようだ。開学当初の広さは約3.3ヘクタールだった。神戸市は約4ヘクタールを大学に充てる計画を「素案」として昨年12月に示していた。
(以下略)
(神戸経済ニュース 2022/3/19)
3月19日、関西学院が、神戸市が王子公園再整備の目玉として進めている大学誘致計画に応募するかを検討する「王子キャンパス構想特別委員会」を設置した、と報じられた。
以前、神戸市の誘致に応じて進出するのは関西学院ではないかと予想した。このたびの同学院の動きは、その予想に合致するものだ。
それでは、関西学院大学が構想する「王子キャンパス」は、どのようなものになるのだろうか。勝手に考えてみた。
現在の関西学院大学のキャンパスは複数に分かれている。
(1)西宮上ケ原キャンパス
校地面積:417,247㎡
神学部、文学部、社会学部、法学部、経済学部、商学部、人間福祉学部、国際学部
(2)神戸三田キャンパス
校地面積:137,975㎡
理工学部、総合政策学部
(3)西宮聖和キャンパス
校地面積:27,8966㎡
教育学部
(4)大阪梅田キャンパス
(5)東京丸の内キャンパス
(6)西宮北口キャンパス
これを見ると、西宮が、上ヶ原キャンパスおよび周辺の西宮清和キャンパスと合わせて、大学の本拠地ということになるだろう。続いて、神戸三田キャンパスが第2の拠点ということになるだろうが、神戸三田キャンパスは、郊外にあって交通の便が非常に悪い。大学の本拠地の西宮から遠いだけではなく、神戸や大阪の都心や市街地からも遠く、今後の学生確保も考え合わせると、課題を抱えていると思われる。その他のキャンパスは、都心や交通中心地に置くサテライト的な位置づけと考えられる。
これらのことから考えると、仮に「王子キャンパス」が実現するとすれば、この神戸三田キャンパスからの移転が一つの視点となるだろう。しかしながら、神戸三田キャンパスからまるごと移転するだけの広さは、4ヘクタールの「王子キャンパス」にはない。また、大学の本拠地は、あくまでも西宮であるから、「開学の地」とは言うものの、西宮に所在する学部が移転したがるとも思えない。やはり、設立の比較的新しい学部が移転の候補に挙がるのではないだろうか。となれば、1995年開設の総合政策学部、2008年開設の人間福祉学部、2010年4月の国際学部あたりが考えられる。もしくは、新学部の開設も考えられるだろう。
学生数は、総合政策学部が2,351人、国際学部が1,242人、人間福祉学部が1,236人(出典:河合塾)であり、これらのうちの1から2の学部が移転してきたとして、どの程度周辺のにぎわいにつながるだろうか。神戸大学の最寄りの阪急六甲にしても、それほど人が賑わってる様子でもない。神戸大学の六甲地区の学生数の合計は9,235人(出典:河合塾のデータから集計)である。それよりもずっと人数が少ない新キャンパスが周辺にもたらす効果は限定的と思われる。大学の誘致といっても、一部の学部が転入するだけでは、けっして大きな効果が得られることは期待できない。したがって、大学の看板に飛びつくのではなく、都心に近い利便性の高い土地をどのような用途にあてるのかを、費用効果も考え、十分検討の上、選択すべきであろう。少なくとも、当初の案のように、敷地を3分割し、いずれもが中途半端となってしまうような計画は見直すべきだろう。