第12回 関西3空港懇談会(2022.9.18) 取りまとめ を読む

 9月18日に開催された関西3空港懇談会について、関西3空港懇談会事務局の名で作成された「とりまとめ 概要」を、神戸市のホームページで確認することができる。

 今回の懇談会では、何が決まったのだろうか。テレビや新聞の報道を見ると、大阪府関西空港周辺自治体が、会議の前後からも、「関空ファースト」など様々な発言をしており、「泉州市・町関西国際空港推進協議会」の阪口会長(大阪府高石市長)からは「神戸空港はあくまで関空の補完空港としての役割を果たすもので、関空の能力に余裕があるなかでの国際化は時期尚早」(産経新聞 2022/9/22)との声まで出ている。この「とりまとめ」を読み、今回の会議の意義を再度考えてみよう。

 

 2022年9月18日
 関西3空港懇談会事務局

第12回関西3空港懇談会 取りまとめ 概要

 

1 基本的考え方
〇 関西3空港で中軸となる関西空港は、コロナからの早期回復を最優先に図りつつ、2025年万博や関西の成長機会を確実に捉えるとともに、2020年代後半に年間100万回の発着容量確保を目指す首都圏空港との競争力を確保する観点からも今後の容量拡張が極めて重要である。

〇 神戸空港、関西の成長の一翼を担う観点より、歴史的経緯に十分配慮しつつ、関西空港伊丹空港を補完する空港として、効果的に活用していく必要がある

〇 本懇談会としては、2030年前後を目途に、3空港全体で年間50万回の容量確保を目指し、第9回取りまとめを基本とし、その「中期の視点に立った取組」等について以下の通り進める。

 

2 関西空港の容量拡張
〇 一刻も早い関西空港の復活と更なる成長に向け、国内の観光・ビジネス需要の回復、水際対策の緩和に併せた速やかなインバウンド回復策の展開などに、一致協力して取り組む。

〇 2025年万博後においても、長期的な視点で成長を図っていくことが重要である。本懇談会は、「関西国際空港の将来航空需要に関する調査委員会」の中間報告を踏まえ、成長目標として、2030年代前半を目途に、年間発着回数30万回の実現を目指す。

〇 航空機処理能力については、国の検証結果、調査委員会中間報告を踏まえ、上記30万回の実現に必要な能力を確保するため、2025年万博までに1時間あたりの処理能力を概ね60回に引き上げることを目指す。

 

3 神戸空港のあり方
〇 関西空港伊丹空港を補完する空港として、効果的に活用する。その際、特に神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港の需要拡大に貢献する

〇 国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する時期については、2025年万博への対応も視野に入れつつ、新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本とする

〇 国際線は将来における国際定期便の運用を可能とする時期については、まずは関西空港の本格回復の取り組みを進め、成長軌道への復帰を果たすことが必要であり、今後検討される国際線ターミナルの運用開始や関西空港の混雑が予想される2030年前後を基本とし、需要動向や関西空港への影響を見ながら、1日の最大発着回数を40回とする国際チャーター便については、関西空港を補完する観点から2025年万博開催時からの運用を可能とする

〇 運用時間については、航空需要などを踏まえ、引き続き検討する

〇 上記の具体化にあたっては、社会経済情勢や航空会社のニーズ等を踏まえ、関西エアポートグループの経営判断を尊重し、実施する

 

4 今後の進め方など

〇 上記2、3の実現のため、国に対し、現行の飛行経路の見直しについて検討するよう要請する。検討にあたっては、地域の実情を十分考慮し、必要最小限の範囲で見直すことなどを求める。

〇 検討結果が示されたのちは、環境面での検証を行い、2025年万博までに地元としての見解を取りまとめる。そのため、関係者は緊密に連携・協力し、地域との調整や必要な取組みを進める。空港と地域社会の双方が共に発展することが重要であり、まず2025年万博までを目標に地元と連携した観光振興策等を検討・推進する。

〇 2025年万博を経て、関西空港神戸空港が成長軌道に乗ったのちは、長期の視点を持って、さらなる将来のあり方を議論する。

〇 伊丹空港についても、上記とともに、2019年の本懇談会取りまとめに基づき、今後のあり方について必要な議論を行うものとする。

〇 懇談会は今後も適宜継続開催し(原則年1回程度)、関係者の連携・協力のもと、その時々の状況変化に応じて評価検討を行い、必要な課題について議論し、順次結論を得る。

 

(神戸市HPから転載)

 

 

 上記の文面を読むと、様々な修飾語や留保が付けられており、その趣旨がややわかりにくく感じられる。そこで、修飾的、付随的な部分を外し、文章の骨格だけに直してみよう。

 上記の文面の下線を引いた部分が、就職的、付随的な部分を除いた文章の骨格部分である。この部分を抜き出すと次のとおりとなる。

 

1 基本的考え方

 ・ 神戸空港は、(略)効果的に活用していく必要がある。

 

3 神戸空港のあり方

 ・ (神戸空港は)効果的に活用する。

 ・ (略)神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港の需要拡大に貢献する。

 ・ 国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する。時期については、(略)新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本とする。

 ・ 国際線は将来における国際定期便の運用を可能とする。時期については、(略)2030年前後を基本とし、(略)1日の最大発着回数を40回とする。国際チャーター便については、(略)2025年万博開催時からの運用を可能とする。

 ・ (神戸空港の)運用時間については、(略)引き続き検討する。

 ・ 上記の具体化にあたっては、(略)関西エアポートグループの経営判断を尊重し、実施する。

 

 

 このように、修飾的、付随的部分を省いて今回の「とりまとめ」を、あらためて見てみると、今回の合意の趣旨はあきらかだ。

 

1)(これまで効果的に活用できていなかった)神戸空港を効果的に活用すること

2)(神戸空港の効果的な活用に際しては、)神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港全体の需要拡大に貢献すること

 これが、目的である。

 そのための具体的方法として、

3)国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する。時期については、国内線ターミナルの運用開始時を基本とする。

4)国際定期便の運用を可能とする。その時期は2030年前後を基本とし、1日の最大発着回数を40回とする

5)国際チャーター便については、2025年万博開催時から運用を可能とする

 

 ということが取り決められたのだ。

 そして、今後においては、

6)(神戸空港の)運用時間については、さらに検討する

 こととし、

7)(合意事項の)具体化にあたっては、関西エアポートグループの「経営判断を尊重」し、実施する

 

 と、合意事項の具体化、実施の最終判断は関西エアポートグループの経営判断が優先することが明らかにされている。ここがこの合意の注目すべきポイントである。長々とした文面の、修飾的部分は、おそらくは関西空港周辺自治体の声を受けて付加されたものだろう。しかし、様々に関西空港への配慮を求めながらも、最終的には関西エアポートのグループの経営判断を尊重して、実施されるのだ。関西エアポートは、神戸空港の活用拡大を望んでいる。今回の神戸空港の国際化は、関西エアポートが望んだ結果だと考えられる。

 つまり、今回の合意では、神戸空港の国内線の枠を拡大し、新たに国際線の枠を設け、その実施について、外ならぬ関西エアポートの経営的判断に委ねられることが決せられたのだ。今回の合意の最大の成功者は関西エアポートであるといえるかもしれない。

 

 関西3空港懇談会の終了後に開かれた、座長の関西経済連合会の松本正義会長と、空港運営会社の山谷社長の記者会見で、記者の質問を受け付けて次のようなやりとりがあった。

 ーーこれまで神戸空港は制約で運営も難しかったと思うが、今回の合意は経営上どのようなメリットがあるのか。

 

 山谷「神戸空港が難しかったかというとそうではなく、発着枠・発着時間の拡大で運営権を取得して真っ先にと言わないまでも成果を出せたのが神戸空港だと思っている。神戸空港が劣後するといった発想はまったくない。神戸空港が役割をきちんとはたせればいいと思っている中で、これから新たな検討が始まるということで、ワクワクしているところ」

 

(神戸経済ニュース 2022/9/19)

 

 神戸空港の国際化、規制緩和は、大阪府関西空港周辺自治体が懸念するような、既存の航空需要を奪い合うものではない。これまで果たせなかった神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港全体の需要を拡大するために行われるのだ。そして、それこそが、失われた「関西国際空港」の本来の目的なのだ。

 神戸空港は、今後、着実に発展する。今はその姿は見えないが、実績が具体的な形をとるようになれば、いずれ皆が理解するところとなるだろう。それまでは、逆風は続くかもしれないが、神戸市は、神戸空港の未来を信じて、決して揺るがないことが大切だ。

 

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神戸空港 国際線就航が合意(2022.9.18 関西3空港懇談会)

 大阪府兵庫県など地元自治体の首長や関西経済連合会など経済界トップなどによる「関西3空港懇談会」が18日、大阪市内で開かれ、2030年ごろをめどに神戸空港(神戸市)に国際線の定期便を就航させることで合意した。
 発着回数は1日最大40回とする。大阪・関西万博が開催される25年には、国際チャーター便の受け入れを可能にする。国内線の発着枠も現在の1日80回から120回に広げる。

(以下略)

朝日新聞 2022/9/18)

 

 2022年9月18日は、神戸にとって歴史的な日となった。

 関西の空港のあり方を決める関西3空港懇談会において、神戸空港に国際線の定期便を2030年頃をめどに就航させることで合意が得られた。それによると、発着回数は1日最大40回、2025年には国際チャーター便の運行も可能となる。国内線の発着枠も現在の1日80回から120回に拡がる。

 建設構想から、開港、そして現在に至るまで、すさまじい逆風にさらされ続けた神戸空港が、ついに国際定期便を就航させることについての正式な合意を得られた。就航までには、まだしばらく時間はかかるが、神戸空港の国際空港化が実現することとなった。

 国際線の発着回数は1日40回とされ、さらに国内線の発着枠も120回に拡大され、2006年2月の開港から、ずっと発着枠は1日60回に押さえ込まれ続け、開港から10年以上経過した2019年5月の関西3空港懇談会で、ようやく1日80回に拡大されたところである。それからわずか3年、コロナ禍もあってまだその効果も十分に実績として示されていない状況の中で、神戸空港規制緩和は非常に急ピッチで進んだことになる。今回の合意では、国内線1日120回、国際線1日40回と合わせて1日160回となり、開港当初から2.7倍に拡大することになる。規制緩和前の乗客数をざっと300万人とすると、単純計算でも800万人を超える乗客数となり、この数字は、コロナ禍前の鹿児島空港をも優にしのぎ、中部国際空港に次ぐ規模となる。これはもう、堂々たる大空港である。ついに神戸空港は神戸沖国際空港として、しっかりと地歩を確立することができたのだ。

 今回の合意は、懇談会の開催に先立ってその内容が知れ渡るところとなった。それを受けて、関西空港周辺自治体を中心に反対の声がわき起こり、泉佐野市長にいたっては「大反対」という強固な意見が表明されたが、当初の予定通りに決着した。大阪府知事やそれに従う兵庫県知事はあくまでも「関空ファースト」と表明している。神戸新聞は「薄氷の合意」(神戸新聞 2022年9月18日)と表現している。この状況をどう捉えるべきだろうか。

 要は、関係者の関西3空港問題に対するこれまでの考え方に大きな変化があったわけではないということだ。しかし、合意は成った。これから言えることは、関西の関係自治体の考えで事は決まっているのではないということだ。今回の神戸空港国際化を望んでいる者は、関西エアポートであり、その意向を受けた関西経済界なのだと考える。つまり、関西エアポートおよびそれを構成する資本の要請なのだ。方向性はすでに決まっていた。大阪府知事兵庫県知事の発言は、反対者の意向に配慮したものであろう。神戸空港の国際空港化は着実に、かつ急ピッチで進められていくことになるだろう。

 では、関西エアポート神戸空港に何を求めているのだろうか。それは、おそらくは西日本における航空需要の独占である。現在の関西国際空港は、建設の紆余曲折から、国土軸から大きく南に外れた位置に建設されてしまった。そのため、関西国際空港は、本来、西日本全域の国際空港でなければならないところ、大阪南部を後背地とする「関西地方の国際空港」となってしまった。それを補完することが神戸空港に期待されている役割だろう。つまり、中国、四国、九州と高速、大容量の鉄道、高速鉄道、道路網で結ばれた神戸空港は、それらを後背地とする真の意味での「関西国際空港」の役割を果たすことが期待されている。関西エアポートはこれらの需要の独占を目指しているのだと考える。

 

 このあたりの関係者の思惑については、当日の大阪府知事関西エアポート社長のそれぞれの記者会見でのコメントが興味深い。

 神戸空港の国際線開設について、大阪府の吉村洋文知事は関西国際空港の発着回数である年間30万回を超えた分について、神戸での離発着に回すと主張したという。これについて同じく記者会見した空港運営会社である関西エアポートの山谷佳之社長は記者の質問に「30万回(の離発着)を達成して、その後どうするというふうなことは(合意事項には)言及されていない」と述べ、「30万回」にこだわらず航空機が混雑する時間帯は神戸で離発着させるダイヤを組むことなどが、関西全体の航空需要拡大に寄与するとの見方を示唆した。

(神戸経済ニュース 2022/9/18)

 

 大阪府知事は、神戸空港の国際線は「関西空港の発着回数年間30万回を超えた分」を充てるとの考えを述べたが、関西エアポート社長は「30万回(の離発着)を達成して、その後どうするというふうなことは(合意事項には)言及されていない」と明確に否定している。

 今後は、関西エアポート社長の言うところの合意事項に基づいて神戸空港の拡張、国際化が進められていくだろう。それは、もはや押しとどめられることはなく、関係者の意向をも超えて進んでいくことになるだろう。

 

 神戸市の久元喜造市長は18日に開いた関西3空港懇談会の終了後に記者団の取材に応じ、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)からの団体旅行などでの国際チャーター便就航、30年前後からの国際定期便就航で合意したことについて「長年の悲願に道筋が付いたということで、率直によろこんでいる」と語った。「兵庫県からのバックアップ、経済界からの全面的なご支援をいただいて、神戸空港としては非常に大きな成果が得られた」「これから神戸空港は新たな段階に入る」と強調した。

(神戸経済ニュース 2022/9/18)

 

 会合の終了後の記者会見で、久元神戸市長は「これから神戸空港は新たな段階に入る」と述べた。

 今後の神戸空港の課題としては、ターミナルビルの拡張、交通アクセスの充実とがあげられる。

 今回の合意の中で、「1日120回への発着回数引き上げは、新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本にする」とされており、ターミナルビルの建設は必須条件とされている。したがって、新しい空港ターミナルの建設が行われることになるだろう。これについて久元市長は「関西エアポートとよく相談をしながら、どのように進めるか(考えたい)」「これの検討は、きょうが出発点なので、そのための検討に着手したい」と述べたそうだ。

 交通アクセスの充実については、現在、アクセス道路の改善を中心に進められているが、やはり、なんらかの交通機関の導入は不可避だろう。これに対して、久元市長は、9月12日に行われた神戸商工会議所からの神戸市政に対する要望の場で、神戸空港新神戸駅を結ぶ新たな鉄道については「4月に専任の担当部長を置いて商工会議所と一緒にやっていこうということで進めている」(神戸経済ニュース 2022/9/12)と述べている。

 

 今後就航する国際線の就航先についても話題となっている。

 2030年をめどに開港以来初めて、国際線の定期便が就航する見通しとなった神戸空港。実際に就航した場合、海外のどこの国まで行けるのだろうか。
 関係者によると、同空港の滑走路の長さは2500メートル。国際便が飛ぶ関西空港(4千メートルと3500メートルの2本)に比べるとかなり短い。大量の燃料を積んで遠距離を飛ぶ機体を離陸させるためには長い滑走路が必要で、2500メートルなら中型機による近距離便が現実的という。
 神戸空港に就航しているのは主に米ボーイング社のB737-800型。2500メートルの滑走路なら航続距離は約5千キロという。これを単純に計算すれば、韓国や台湾、中国・上海のほか、グアムやサイパンベトナムやタイ、シンガポールまで到達できるとみられる。

(以下略)

神戸新聞 2022/9/22)

 

 神戸空港の滑走路の長さは2500メートルであるが、実は、一部の長距離便を除いて就航が可能だといわれている。中国、韓国、台湾などの近距離国際便が中心となると予想されるが、他の2500メートル級の国内空港での運航実績から考えると、シンガポール、オーストラリア、ハワイ、インドなどの便も就航が可能であり、神戸は台湾やインドなどとも関係が深いので、十分考えられるだろう。

 

 今回の関西3空港懇談会は、神戸空港の将来とともに、神戸の将来についても大きな意味をもたらすものだ。神戸は、幕末以降、神戸港とともに我が国の海外との窓口として発展してきた。神戸のアイデンティティはやはり、国際都市であるということだ。神戸の近年の元気のなさは、この国際都市のアイデンティティが失われ、その一方で、地方のブロック都市でもないという点にあった。今回、神戸空港の国際化により、神戸は再び、西日本の諸都市が有さない海外との窓口という役割を担うことができるようになる。ブロックを超える超広域都市としての神戸の意義が再確認されることになる。それは、再び神戸に活力をもたらし、大きな発展をもたらすことになるだろう。

 

 

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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を振り返って

 今年のNHK大河ドラマ三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」であった。ドラマは初回から視聴者の心をつかみ、決して馴染み深いとは言えない歴史上の登場人物が、リアルで明確な人物像が与えられ、自ら動き出すかのように振る舞い、それらが関係を取り結び、ドラマを織りなしていく。これまで、歴史教科書を読んでもよくわからなかった事件の数々が、ごく自然な成り行きのように目の前で展開していく。

 多くの登場人物が、ドラマの限られた時間の中で、ごく短い台詞や振る舞いの中で様々な物事が物語られて行く脚本の手腕は見事であった。連綿としたドラマの中で巧みに織り込まれた伏線が次々に起きる事件の中で一挙に回収されていく様は神回に次ぐ神回という状況で、特にその登場人物がこの世を去る場面が丹念に作り込まれ、まるで旧知の親戚や友人の最期をみるかのように、放送直後には毎回、悲鳴のような声がネット上にわき起こる。

 これらは、群像劇を得意とし、推理ドラマに造詣が深く、登場人物の動機の分析に長けた三谷幸喜の手腕であろう。彼の手により、視聴者はまるでジェットコースターに乗せられたかのように、縦横無尽に振り回され、その興奮と余韻を味わうのだ。

 

 しかし、もう一つ、このドラマが面白いのは、元々の素材の面白さであろう。平清盛後白河法皇源頼朝義経、範頼、北条時政、義時、政子 等など、物語は個性的な登場人物が目白押しだ。そのように魅力的な人物が次々と現れるのは、やはり動乱期だからだろうか。動乱期といえば、この時代以外にも、戦国時代、桃山時代、幕末もある。しかし、この源平から鎌倉初期の物語のおもしろさ、登場人物のユニークさは群を抜いているように思う。その違いはなんだろうか。

 決定的な違いは、その登場人物自らが「平家物語」を知っているか否かだ。源平から鎌倉時代初期の人々は、まさに同時進行、渦中の人々であり、いわば「平家物語を知らない人々」だ。その後の時代の人々は、過ぎ去った時代として「平家物語を知っている人々」である。それらの人々は、平家や源氏の興亡の物語を知っている。勢威を誇った人物、破れ去った人物、失敗した人物、勇敢な人物、愚かな人物、身の処し所が美しい人物、無様な人物等など、その姿を在り在りと見せてくれるのが「平家物語」である。後の時代の人々は、平家物語を聞くことにより、自ずと、人はどう振る舞うべきかを考えるに至ったのであろう。後の時代の歴史は、すべて「平家物語を知っている人々」が造ったものである。それは、有形無形に、人々を謙虚にさせ、行動に抑制をかけ、後代の名を惜しませるようになったのだ。一方、それは人々の行動を理性的にし、美しくしたかもしれないが、平家物語の時代の人々のようなむき出しの情熱や野心、欲望を抑制したのではないだろうか。

 平家物語は、日本人に共有され、大きな影響を残し、日本人の個性を形成した重要な日本人の記憶であり財産なのだ。

 平家物語は、想像を絶する、世界にも希な、運命の逆転劇、数奇な物語、奇譚である。これほど、むき出しで奔放な物語はない。それは、ある意味、道徳や経験則の影響を取り去った実験室のようだ。それだけに、結果が極端で、世にもドラマチックな世界が出現したのだろう。

 では、平家物語の最大のテーマは何だろうか。それは諸行無常だ。諸行無常とは、仏教用語で、この世のすべての物事は、常に移り変わっていくという世界観をいう。物語では、世に並びない強大な権力を持った者、世に時めいた者が、次々と、あたかも木々の木の葉が木枯らしに一掃されるかのように跡形もなく吹き飛ばされてしまう。そのすさまじさは、人間の儚さを考えさせるに十分だ。では、諸行無常の拠って立つ視点は何だろうか。それは超長期の視点だと考える。超長期の時間を想像すると、すべての命は失われるし、人々が作り出した物、自然の姿形でさえ、いつまでも姿を変えないものはない。人々は現在の趨勢を見て、その趨勢が永遠に続くように考えがちである。しかし、これを長期の視点で見れば、趨勢はいつか逆転し、循環するように推移していく。そうした循環を繰り返しながらも、さらに超長期を考えるなら、結局は安定した静寂の姿を見ることができる。こうした考えは莫大な数を考案したインド的な思考と結び付いているのだろう。

 

 

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中国・四国9県の在阪事務所、JR三ノ宮で初の観光PR

 中国地方と四国地方の9県は26日午後、JR三ノ宮駅の中央改札口周辺で共同の観光キャンペーンを開催した。これまでJR大阪駅などで連携して観光キャンペーンを展開したが、三ノ宮駅で実施するのは初めて。各県が大阪市に開設した事務所で構成する「在阪中四国県事務所協議会」の活動の一環だ。四国全県のキャラクターが一堂に会する、珍しい機会にもなった。

 中四国9県の在阪事務所は、各県バラバラに観光PRするよりも、まとまって展開したほうがPR効果が大きいとみて、連携してキャンペーンを始めたという。(略)

 

 神戸市は、鳥取県岡山県徳島県に隣接する兵庫県の県庁所在地で、香川県との間には1日に何本も船便があるほか、高知県とは航空便で結ばれている。鉄道や自動車でも便利だ。もともと神戸と中四国を往来する人の数は多く、改めてPRすることで誘客効果は大きくなりそうと期待する。(略)

 

(神戸経済ニュース 2022/8/27)

 

 

 中国地方と四国地方の9県(岡山、広島、鳥取、島根、山口、香川、徳島、愛媛、高知)が、26日午後、JR三ノ宮駅の中央改札口周辺で共同の観光キャンペーンを開催したそうだ。これまでJR大阪駅などでは、こうしたキャンペーンを実施してきたが、三ノ宮駅で実施するのは初めてとのことだ。

 三ノ宮駅兵庫県の県庁所在都市神戸の交通中心地で県下最大の乗降客数を誇り、多くの人々が絶えず往来し、元来こうしたキャンペーンを行うのに適した場所だ。三ノ宮駅を中心として、新神戸駅神戸空港、高速バスやフェリーなど、様々な交通機関が集中しており、きわめて交通利便性の高い場所である。豊かな自然に歴史的な文化遺産にも恵まれたこれらの諸県は、神戸から比較的近くて交通費も安く、週末でも容易に訪れることが可能であり、神戸市民を中心に、兵庫県民に、こうした観光キャンペーンを行うことは高い効果があると考えられる。

 しかし、三ノ宮駅で観光キャンペーンを行うことの効果はそれにとどまるものではない。三ノ宮駅新神戸駅神戸空港などの長距離交通機関との結節点である。特に、神戸空港には、札幌、青森、仙台、花巻、松本、新潟などの東日本の諸都市とを結ぶ空路が開設されており、対して、中国、四国地方とこれらの諸県とを直接に結ぶ空路は札幌(広島空港 2往復、岡山空港 1往復、島根空港 1往復)、仙台(広島空港 1日2往復)を除いて開設されていないため、東日本のこれらの地方から中国、四国地方を観光しようとする場合には、神戸空港で関西地方に乗り入れ、神戸を経由して中国、四国地方に足を伸ばすというルートが考えられるはずだ。そういう意味でも、神戸は、中国、四国地方の交通拠点であり、これらと一体となった観光圏というものが形成される可能性がある。

 つまり、今回、三ノ宮で観光キャンペーンを行ったということは、神戸市民、兵庫県民をターゲットとするだけではなく、もっと大きな可能性を持つものではないかと考えられる。

 先日(6月3日~5日)、ハーバーランドで、青森・神戸間の相互誘客を目的に、「弘前ねぷた」によるプロモーションが開催され、多くの人々が見物に集まった。このように、神戸は神戸空港就航先の諸都市の観光プロモーションの場としても可能性があるし、逆にその就航先の諸都市からの観光客誘致の場としても可能性がある。

 今回は、諸県のキャラクターが勢ぞろいとなったが、もっと本格的な芸能や文化の発信も考えられるだろう。また、今回のような単発のイベント以外にも、常設の物産館のようなものも考えられるだろう。以前、新神戸駅神戸駅周辺への西日本諸県の物産館の誘致を提案したことがある。

 今後、こうした取り組みが定着し、中国、四国地方の観光振興とともに、中国、四国地方からの就航先諸県の観光の起点として神戸が貢献し、双方に大きな効果がもたらされるとよいと思う。

 

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オリビア・ニュートン=ジョン 奇跡の歌声

 2022年8月22日、歌手のオリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)が亡くなった。

 

 彼女は、数多くの世界的な大ヒットに恵まれ、70年代半ばから80年代前半にかけて全盛時代を迎え、世界のポップミュージック界の頂点に君臨した。彼女は余りに有名なので、その事績は他に委ね、その音楽、歌唱のすばらしさについて筆者なりの考えを記してみたい。

 彼女は、映画の主役にも抜擢されたように、美しく可憐な姿が魅力だったが、世界的な地位に至らしめたものは、なんといっても、その歌声にある。

 彼女の歌唱は完璧だ。音が外れる、音が上がりきらない、高音部で音が歪むなどが全くなく、常に正確に、ちょうどの声質で、ちょうどの音階に到達することができた。音域が広く、曲に合わせ、地声とファルセットの境目なく、どこまでも上がり続ける高音部は超人的だ。

 彼女の声質は、基本は澄んだ透明感のある声であるが、少しハスキーとまではいかないが独特なつや消しされたようななめらかな声であり、ちょうど、グラスの縁を指の腹でこすって音を出すグラスハープのような感触だ。

 彼女の声は独特で、どの曲を歌っても彼女の歌だとわかる。力強く声量豊かに歌い切る歌手は他にもいるだろう。しかし、様々な声質を使い分け、伸びやかでありながら、きらびやかに、ゆらめくような歌声は比類のないものだ。この声を武器に、彼女は人々を魅了し、世界の頂点に立ったのだ。

 歌う楽曲は、静かなやさしい曲から、アップテンポの曲、力強く激しい曲まで、すべてをカバーすることができた。優しい曲では、繊細に、ささやくように、激しい曲では力強く、電撃のように颯爽と舞い降り、軽やかに疾走する。しかし決して一本調子ではなく、いつも十分な余裕を残し、自由に多彩にゆらめき、表情を変えた。

 力強く伸びやかでありながら、ビブラートを用いた優しい発声で、高音部でも決して甲高くならず、曲は全体として歌い手の完全なコントロール下にあり、バランスを崩すことが決してなかった。そして、曲の所々に地声と裏声が重なり、倍音となったような声が不意に現れる。曲が佳境になると、歌声は伴奏と渾然一体となり、それが繰り返されるうちに、人々は次第に陶酔感に包まれるのだ。

 ここで特筆すべきは、彼女の歌唱は、自らの声を前面に出し、他を圧し、曲を力ずくでねじ伏せる様ではないということだ。曲調に応じて、伴奏と同調し、一体となって完璧なハーモニーを奏でる。それはデュエットにおいても強く表れ、デュエットに代表曲があるのも彼女の特徴だろう。相手方の声に合わせ、いつもこまやかに寄り添い、同質化させるように歌う。それは、周囲の世界との調和を重視する彼女の考え方が反映したものだったのかもしれない。

 以上のとおり、彼女の声は、ユニークで比類なく、様々な要素が絶妙のバランスで統合された、まさに奇跡の歌声であった。彼女は生涯を終えたが、様々な音源や映像が我々には残されている。これらは、いつまでも人々から愛聴され、さらに新しいファンを生み出し続けることだろう。そして、1970年代、80年代を代表する人類の歴史的な遺産となるだろう。

 

 


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カーネル・サンダースの呪い

 カーネル・サンダースの呪い(カーネルサンダースののろい、英: "Curse of the Colonel”)とは、1895年(昭和60年)10月16日に、日本プロ野球球団、阪神タイガースの21年ぶりのセントラル・リーグ優勝に狂喜した阪神ファンが、カーネル・サンダースの像を道頓堀川に投げ入れた因果で、翌年以降の同球団の成績が低迷した、という都市伝説である。

wikipedia

 

 「カーネル・サンダースの呪い」とは、1985年10月16日に、プロ野球 阪神タイガースセントラルリーグ優勝が決まったことに、狂喜した阪神ファンらが、大阪の道頓堀にあったケンタッキーフライドチキンの店頭に設置されていたカーネル・サンダース像を抱え上げ、道頓堀川に投げ込み、像が行方不明となった事件が発生し、その事件があった翌年から阪神タイガースは17年間にわたってリーグ優勝から遠ざかることとなり、その原因は川底に沈められたカーネル・サンダースの呪いではないかと野球ファンの間で囁かれたという故事を指す。

 上記のように、長期にわたって成績の低迷が続くことを、「〇〇の呪い」と呼ぶ例は、他にもさまざまあるようだ。

 

 低迷と聞いて、思いつくのはわが国の経済だ。下記は、2021年10月31日に行われた衆議院議員選挙の頃に新聞に掲載された記事の抜粋である。

 日本経済をどう立て直すのかは、19日公示の衆院選の大きな争点だ。様々な指標を外国と比べると、長らく低成長にあえぐ日本の姿が見えてくる。安倍政権が始めた経済政策アベノミクスも流れはほとんど変えられず、1990年代初めのバブル崩壊以来の「失われた30年」とも呼ばれる低迷が続いている。

 国際通貨基金IMF)の統計で、国の経済規模を示す名目国内総生産(GDP)をみると、日本は米国、中国に次ぐ世界3位と大きい。しかし、1990年の値と比べると、この30年間で米国は3.5倍、中国は37倍になったのに、日本は1.5倍にとどまる。世界4位のドイツも2.3倍で、日本の遅れが際立つ。国民1人当たりのGDPも、日本はコロナ禍前の19年で主要7カ国(G7)中6番目という低水準だ。

 賃金も上がっていない。経済協力開発機構OECD)によると、2020年の日本の平均賃金は、加盟35カ国中22位で3万8514ドル(1ドル=110円で424万円)。この30年で日本は4.4%増とほぼ横ばいだが、米国47.7%増、英国44.2%増、ドイツ33.7%増、フランス31.0%増などと差は大きい。賃金の額も、隣国の韓国に15年に抜かれた。

朝日新聞 2021/10/19)

 

 日経平均株価は、1989年(平成元年)12月29日の大納会に、終値の最高値38,915円87銭をつけたのをピークに翌1990年(平成2年)1月から下降に転じ、幾度かの暴落を経て、近年のアベノミクスにより回復したとはいえ、現在(2022年8月)に至るまで一度もこの最高値を超えることができていない。このバブル崩壊以来、国内の経済は低迷し、ほぼゼロ成長となってしまった。こうした経済の低迷は既に30年を超え、「失われた30年」と呼ばれている。その間、銀行や証券会社の破綻、大企業の倒産や就職氷河期なども発生し、かつては「1億総中流社会」と言われたが、今や見る影もなく、「格差社会」と言われるようになってしまった。人々の生活はすっかり貧しくなってしまった。

 

 冒頭の譬えに倣うと、この我が国の経済状況こそ、「呪われている」と言うべきではないだろうか。この呪いはいったい何と呼ぶべきなのであろうか。

 

フラットな組織

 組織の姿は時代とともに変化をしていく。

 従来、我が国の組織は、係や班などの小単位のユニットを課などのグループで束ね、さらにそれらを部などの大グループで束ね、それぞれのグループに長を置くという具合に、ピラミッド状に構成されていた。どうしてこのような形態をとるかというと、基本的には、情報伝達、指揮命令の必要上から、グループごとに長を定めて、伝達をするしかなかったからだと考えられる。

 しかし、現在では情報通信技術の発展により、一人一人にPCが割り当てられ、直接、その一人一人に対して情報伝達を行うことが可能となっている。

 情報通信技術の発展は、伝達の形態だけではなく、一人一人が直接にインターネットに接続して情報を入手することができ、多くの者が同時に、情報を取ることができるようになった。情報は書庫にあるのではなく、インターネットの空間に供給されるようになった。それは過去の情報量とは格段の巨大な情報量だ。こうした状況下では、一人の人物が情報を独占することはできないし、一人一人が主体的に情報にアクセスをする方が合理的であり、特定の人物を介して情報を取るようにすると、かえって情報の流れを妨げることになりかねない。

 加えて、個人が使用するPCの性能が格段に上がり、一人で大量の情報処理を行うことが可能になった。すなわち、一人一人が巨大な情報処理能力を持つことができるようななった。

 このような状況では、特定の人物に情報を持たせ、その人物の判断によりその配下の者が行動するよりも、一人一人に権限を分かち与え、それぞれが情報を入手し、発信し、情報を処理する形態の方が総体としての情報処理能力が大きくなる。旧来のピラミッド型の組織と、全構成員が独自に情報処理をする組織とが競争すれば、新しい組織の競争力は圧倒的に優れていると考えられる。新しい組織は、より多くの情報処理を行い、より大量に、より早く意思決定を行うことができる。様々な分野で競争が行われる社会にあって、ピラミッド型の組織は、新しい組織に淘汰され、置き換えられていくのは必然だろう。

 従来の我が国の社会は、ピラミッド型の組織を前提として、その内部での人間関係が構築されてきた。そこでは、組織は「疑似家族」として、祖父母、父母、子、孫のような人間関係が構築されてきた。しかし、新しい組織になると、構成員はほぼ同様の能力を持ち、それぞれが主体的に判断をするようになる。その関係において、親子のような上下関係は不要で、横並びの関係の方が適合的である。すでにそのような横並びの均質な組織の実態であるにもかかわらず、旧来の親子のような組織の関係は、すでに無用のものとなっている。親だから優れている、子だから劣っているという関係ではない。それぞれが権限を与えられ、その一人一人が合理的な意思決定を行っていく。そのような状況下で人々が旧来の疑似家族のような振る舞いを行うことが不整合となり、近年「パワハラ」としてクローズアップされる背景にあると考えられる。

 この組織と人間関係の不整合の解決策はどうあるべきなのだろうか。それは、結局は、実態に合わせて人間関係も再構築せざるを得ないと考えられる。すなわち、年齢やキャリア、役職にかかわらず、その実態にあわせて、上下関係ではなく、横並びの関係となることだ。つまりはフラットな組織だ。

 我が国の社会は上下関係を重んじる社会だ。日々多用される敬語やあらゆる場面で求められるビジネスマナーはその最たるものだ。これらの基本形態を、我々はどこで身につけているのだろうか。思うに、それは学校教育現場ではないかと思われる。振り返ってみるに、小学校まではそれほどではないが、中学校に入ると、途端に先輩後輩の上下関係が求められるようになる。大人になってみると、たかだか1、2年の年齢の違いだけで、左様に上下関係を求めるのは不自然であるし、そうした上下関係は、大人になって逆転することは日常茶飯事であり、こうした教育方針は無用の軋轢やストレスを生む原因となり、現在の社会にとって害の方が大きいのではないだろうか。

 現在、高齢化社会を迎え、生涯における労働期間が延長する方向に動いており、定年延長やそれに伴う再雇用によって上下関係が逆転したりすることが当たり前にように生じる状況になっている。そうした環境下で、皆がよりストレス少なく働くためには、やはり上下関係をなくして、横並びの関係、優劣ではなく同等の役割分担の考え方に転換すべきだ。すなわちフラットな組織が必要だ。

 

 こうした社会の転換により組織形態の転換が行われることは、我が国においては明治維新の例が想起される。江戸時代の士農工商による身分制社会、家柄による上下関係が決定的な社会は、明治時代になり、四民平等の社会へ急激な転換を遂げた。その背景には、社会の工業化があり、多くの人々が共同作業、経済活動を行うのに、身分制による煩瑣な区分やしきたりが適合しなくなったためである。組織の典型ともいうべき軍隊においても、一人一人に高性能の銃器が与えられ、高い戦闘能力を有する時代になると、国民を均質なものとして大量に動員し、組織することが必要になり、その間に身分や家柄の区分を設け、武器を持てる身分とそうでない身分を分けることが不合理となった。それは、転換をしなければ、敗北が免れないという、冷徹な現実があった。

 

 すでに時代の環境は変化をしている。それに合わせた社会変化は、今後きわめて短い時間で訪れるだろう。それは、春の嵐が冬を一挙に吹き飛ばすのに似た姿だろう。