兵庫県庁は兵庫県民のもの

地方自治法

 

第百条 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(略)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の 出頭及び証言 並びに 記録の提出 を請求することができる

② 民事訴訟に関する法令の規定中 証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。(略)

③ 第一項後段の規定により 出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず 若しくは 記録を提出しないとき又は 証言を拒んだときは 、六箇月以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する

④~⑥ (略)

⑦ 第二項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が 虚偽の陳述 をしたときは、これを三箇月以上五年以下の禁錮に処する

⑧以下 (略)

 

 

 斉藤兵庫県知事に対する内部告発は波紋を広げ、ついには、地方自治法に基づく百条委員会が設置されるに至った。「百条調査」は、出頭や証言の拒否、虚偽の陳述に対して禁錮や罰金という刑事罰も科せられる、非常に強力な調査である。その強力さ故、実際に開催されることは非常に希(まれ)であり、兵庫県では、約半世紀、実に51年ぶりの開催であるという。「百条委員会だけは」ということから、なんとかこれを回避しようという動きがあったのは、こうした事情からだろう。

 

 今回の内部告発で問題となっている斉藤知事の違法行為や県庁職員に対するパワハラ行為の疑いについては、日を追って、次々と内部告発の内容を裏付けるような証言が報じられる事態となっている。

 斉藤知事の説明では、今回の告発に対する人事当局の調査は「一定」客観的な調査で、告発された事項は「核心的な部分で」事実無根と言うなど、妙な留保が付けられていることが注目される。つまり、文字通りの意味の「事実無根」(証拠も根拠もなく、でたらめであること。根も葉もないこと。出典「学研 四字熟語辞典」)ではなく、基本的には事実であるが、核心的部分は事実ではない、と言っているように聞こえる。その核心的部分とは何だろうか?「そんなつもりではなかった」ということなのだろうか。もしかすると、知事本人も、調査は客観的でなく、事実無根ではないことをわかっているのではないだろうか。もし、そうであるとすれば、告発した職員を懲戒処分に処したことについては「職権の濫用」という問題が生じる。

 

 前回も記したが、このたびの内部告発を行った者に対して懲戒処分を行ったことは、通報を行った者に対する不利益な取扱いを禁じる「公益通報者保護法」に違反している。処分を取り消し、名誉の回復を図るべきだ。

 

 斉藤知事は勘違いしているのではないか。

 兵庫県知事は、兵庫県民から兵庫県民のために兵庫県庁の運営を委ねられた者にすぎない。しかるに、選挙で選ばれた兵庫県知事は兵庫県の絶対権力者であって、兵庫県庁はすべて自分の物だと思い、職員は県知事の使用人であって、県知事である自分に対して絶対服従すべきである、と思っているのではないか。そんな考えの中では、職員が自分を批判することは「あるまじきこと」、「公務員倫理に反すること」と思うのではないだろうか。

 兵庫県庁舎の建設計画の凍結など、県庁に対する恣(ほしいまま)も同根のものだろう。

 

 兵庫県庁は兵庫県民のものだ。兵庫県知事の私物ではない。県庁舎や行政機構、県職員は、これまで先人が営々と築き上げてきた県民の財産だ。他人の財産は丁寧に扱うものだ。県民の財産を軽々しく、乱暴に扱うのはやめてもらいたいものだ。

 

 

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兵庫県庁の移転構想

 神戸市は23日、現在建設中の第1期のバスターミナルビルに入居する新たな神戸文化ホールと三宮図書館のイメージ図を公開した。(略)

 

 神戸市の久元喜造市長が23日の定例記者会見で発表した。神戸市中央区・大倉山にある現在の神戸文化ホールについての質問には「最終的には大倉山のホールと、三宮の新しい文化ホールが併存することはない」という。大ホールの機能は新たなホールに集約し、現在の神戸文化ホールの立地は別の用途に利用する考えだ。ただ現在の文化ホールの建物をいつまで活用するのか、一時的に併存することはありうるのかなど詳細については「まず庁内で検討する」と述べるにとどめた。

 

(神戸経済ニュース 2024/5/23)

 

 

 5月23日、神戸市長の定例記者会見の中で、新しい神戸文化ホールについての説明があり、大倉山にある現在の神戸文化ホールの今後について質問があった。久元市長は、最終的に新旧の文化ホールが併存することはないと、現在の神戸文化ホールは廃止し、その用地は別の用途に利用する考えを示した。

 

 その方針自体には異論はない。跡地はどのように利用すればよいだろうか。

 

 一つの案として、その跡地に、現在、元町駅の北側、下山手通にある兵庫県庁を移転してはどうだろうか。

 文化ホールの跡地に加えて、こちらもかなり古くなった中央体育館の敷地も合わせると、かなり広い面積となる。さらに、その周囲には大倉山公園など、開発余地が十分あると思われる。

 現在の兵庫県庁舎は、耐震基準を満たしていないことから建替えが必要とされており、1~3号館のうち、1号館、2号館は2026年度にも解体される予定となっている。先代の井戸兵庫県知事は兵庫県庁の再整備計画を推進しようとしたが、現在の斉藤知事になって計画はご破算になってしまった。「災い転じて」、計画を一新し、兵庫県庁舎を大倉山に移転させてはどうだろうか。このような状況は、ある意味、千載一遇のチャンスだとも言える。

 

 これを考えた理由は次のとおりである。

 

(1)現在の県庁舎はJR元町駅の北側にあって、駅からそれほどの距離はないが、やや勾配のきつい坂道を上った先にあり、あまり足を運びやすい場所とは言えない。一方、神戸駅周辺は坂道が多い神戸の中では比較的平坦な地形であり、往来もしやすい。近くには神戸地方裁判所神戸地方検察庁などもあり、諸官庁が集積している。この他、神戸大学医学部、神戸市立中央図書館などもあり、環境的に申し分ない。さらに、神戸の人々に親しまれている湊川神社のちょうど隣接地にあたるので、神戸のシンボルゾーンという点でも申し分のない立地である。

(2)現在のJR元町駅は、かつての三ノ宮駅があった場所で、三ノ宮駅が現在地に移転した際に元町駅として設置されたものであるが、そうした歴史的経緯もあって、新快速電車が停車するJR神戸駅やJR三ノ宮駅という基幹駅に対して、新快速電車が通過する利便性にやや劣る駅である。県庁の最寄りの駅が通過駅というのは、少し残念な気がする。一方、大倉山の方は、JR神戸駅が最寄り駅となる。神戸駅は1874年(明治7年)の大阪=神戸間の鉄道開通時に設置された伝統ある兵庫県を代表する基幹駅であり、新快速電車が停車する。さらに、JR神戸駅のすぐ北側には阪急、阪神山陽電車が乗り入れる高速神戸駅がある。その先には市営地下鉄大倉山駅がある。JR神戸駅の南側には市営地下鉄海岸線のハーバーランド駅がある。現状ではこれらの駅は微妙に相互に距離があり、神戸駅周辺が拠点性を持てない理由の一つとなっていると思われる。この機会にJR神戸駅高速神戸駅、大倉山駅までつなぐ地下道を整備すれば、周辺の利便性が格段に上がるだろう。

(3)県庁の所在地はこれまでも変遷を重ねている。初代は兵庫の中之島にあり、その姿は兵庫津ミュージアムに復元がされている。その後、現在の中央区橘通、現在の神戸地方裁判所のある場所に移り、1873年(明治6年)に下山手通に移転し、同地で建設されたのが現在の兵庫県公館で、これが4代目の庁舎である。そして、現在の県庁は、5代目の庁舎となる。大倉山であれば、かつて庁舎を置いていた神戸地方裁判所の場所とも近く、歴史的にもゆかりがある場所である。

(4)大倉山駅は市営地下鉄で、現在の県庁舎のあるエリアとも結ばれており、既存の県庁周辺施設との連携にもすぐれている。さらに、新幹線新神戸駅とも結ばれており、広域交通の面でも非常に便利である。

(5)現在、神戸市が、三ノ宮駅を中心に神戸都心の再開発を行っているが、おそらくは、神戸の都心の中心は三ノ宮駅の東側にシフトしていくことになるだろう。神戸の都心の均衡ある発展のためには、神戸駅の拠点性を高める取り組みは必ず必要だろう。そのための中核プロジェクトとして兵庫県庁を大倉山に移転させてはどうだろうか。

(6)北側にある大倉山公園には、かつて、初代兵庫県知事、伊藤博文銅像があり、現在でもその台座だけが残されている。この銅像も併せて復原してはどうだろう。

(7)兵庫県庁の交通利便性のよい大倉山への移転は、県庁への交通利便性を大いに高め、一般市民のアクセス性を高め、ひいては兵庫県庁の存在感を高めることに寄与すると考える。

 

 では、大倉山への移転後、現在の兵庫県庁の跡地はどうすればよいだろうか。

 現在の兵庫県庁の跡地は、中心地の三宮ともほど近く、メリケンパークを臨む場所にあるので、高級ホテルや文化施設兵庫県の特産品の展示販売施設、真珠博物館等の観光施設を設置してはどうだろうか。

 

 いずれにしても、現在の斉藤知事では、兵庫県庁舎を整備する気もないだろうから、話が進むとしても次の知事になってからだろう。

 


 

斉藤兵庫県知事に対する内部告発問題

 兵庫県西播磨県民局長だった男性(60)が斎藤元彦知事らの言動を「違法行為」などと指摘する文書を作成し、解任された問題で、県は7日、男性を停職3カ月の懲戒処分とした。県は内部調査の結果、文書の内容は誹謗(ひぼう)中傷にあたると認定。県議会などからは第三者による客観的な調査を求める声が上がっているが、第三者機関の設置の必要性を否定した。

 県は男性が今年3月、知事や一部の幹部職員を誹謗中傷する文書を作成・配布して多方面に流出させたことで、県政への信用を著しく損なわせたなどとしている。また男性が約14年間で、勤務時間中に約200時間にわたり、今回の文書を含む私的な文書を作成したことなども処分理由とした。

 

産経新聞 2024/5/7)

 

 兵庫県の斉藤知事に対する兵庫県庁の職員の内部告発が話題となっている。県は内部調査の結果、文書の内容は誹謗(ひぼう)中傷にあたると認定し、告発者は停職3か月の懲戒処分となった。この県の対応について、県議会などからは第三者による客観的な調査を求める声が上がっている。

 

 今回の事件について、問題点は二つある。

(1)告発された行為自体

 この内容が事実であるならば、事は極めて重大である。これの真偽については、完全に中立の第三者が客観、公正に調査を尽くすべきであろう。「一定客観的な調査」は、客観的であるとは言えない。

 

(2)告発者に対して不利益な処分を行ったこと

 もう一つ重要な問題は、今回の通報を行った者に対して、公正な調査を行う前に、「事実無根の誹謗中傷」と、告発された当事者が一方的に断罪して、懲戒処分を行ったことだ。

 これは、通報を行った者に対する不利益な取扱いを禁じる「公益通報者保護法」に違反している。公益通報者保護法は、公益のための通報(「公益通報」)が社会全体の利益に資することから、通報者の通報行為を正当な行為として保護しようとするものである。

 

 国民生活の安全・安心を損なうような企業不祥事は、事業者内部の労働者等からの通報をきっかけに明らかになることも少なくありません。
 こうした企業不祥事による国民への被害拡大を防止するために通報する行為は、正当な行為として事業者による解雇等の不利益な取扱いから保護されるべきものです。
 「公益通報者保護法」は、労働者等が、公益のために通報を行ったことを理由として解雇等の不利益な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという制度的なルールを明確にするものです。

 

消費者庁公益通報ハンドブック」)

 

公益通報者保護制度 | 消費者庁 (caa.go.jp)

 

 今回の通報者に対する処分は、本件について人々の口を噤(つぐ)ませる効果を持つだろう。そして、本件のみならず、今後、公益通報を行おうとする者は、自分が本当に守られるのかどうかの懸念から、必ず躊躇するようになるに違いない。公益通報制度に対する人々の信頼感は大きく毀損されてしまった。このことの責任は極めて重大である。

 今回の通報者に対する懲戒処分が認められるのであれば、通報者の保護という法律の目的は全くの有名無実となり、公益通報者保護法は事実上、空文化してしまうことになるだろう。

 

 そもそも、なぜ斉藤知事は、今回の告発に対してこれほど激烈な対応を取るのであろうか。もし、「事実無根」「嘘八百」であるならば、大騒ぎせずとも、公明正大に真実を明らかにすればよいだけではないのか。なぜ、告発者のパソコンを14年分にもわたって、使用履歴を洗い出す必要があるのか。これだけでも、告発者を萎縮させるのに十分である。そして、告発者は停職3か月の懲戒処分となった。これはもはや「弾圧」(おさえつけること。特に、支配者が権力を行使して反対勢力の活動を抑圧すること。出典「デジタル大辞泉」(小学館))といってよいだろう。斉藤知事は、「公務員倫理の徹底を図るとともに、風通しの良い組織を作っていきたい」(5/8 定例記者会見)と述べたそうだが、悪い冗談である。

 

兵庫県/知事記者会見(2024年5月8日(水曜日)) (hyogo.lg.jp)

 

 

 そして、この常軌を逸した斉藤知事の姿勢こそが、今回の告発文の真偽と重大性を物語っているのではないか。

 

 

 

 今回の報道に触れて、旧ソ連のジョーク(アネクドート)を思いだしだ。

 ソ連末期のアンドロポフ書記長は健康がすぐれず、重病説が広まっていた。一部には心臓が悪いとの憶測も流れていたが、ある男が公衆の面前で、「アンドロポフが悪いのは、心臓ではなく、実は頭なのだ。」と言った。その男は、たちまち逮捕され、処罰されたが、罪名は侮辱罪ではなく、国家機密漏洩罪であった。

 

神戸市街地の海岸線

 神戸は、幕末の開港以来、港とともに発展をしてきた都市である。「港町神戸」と当たり前のように呼ばれているが、実際に日常で港を感じる場面はそう多くなく、「港」は意外に遠い存在である。港の機能が変化したということも一因であるが、実際に港が市街地から遠ざかっていることも影響しているに違いない。このことは、昔の地図と現在とを比較をしてみると、明瞭に読み取れる。

 

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(1)現在の神戸の市街地

 

(2)1960年代初頭の神戸の市街地

 

(3)(1)と(2)をオーバーラップさせたもの

 

 

 (1)は現代の神戸市の市街地の、(2)は1960年代初頭の神戸の市街地の航空写真である。両者の海岸線の位置関係をよりわかりやすくするために、(1)と(2)を重ね合わせたものが(3)である。

 (2)の写真を見ると、現在も地名にある京橋は実際に橋として機能しており、その東側には水面が広がっている。この東側の水面は、幕末の神戸海軍操練所のあった辺りであり、神戸港の開港時にこれに面して運上所が設けられた入り江で、いわば神戸港発祥の地である。しかし、1960年代の後半には埋め立てられて陸地に変わり、阪神高速道路の高架が建設され、現在は京橋パーキングエリアとなっており、当時の姿を想起することも困難である。

 一方、現在メリケンパークがあるあたりは、長く突き出した中突堤とその東側のメリケン波止場に囲まれた部分に、広大な船だまりがあって艀がひしめきあっている。これも、1980年代の後半には埋め立てられ、現在のメリケンパークの姿となっている。

 さらに、今後は第一突堤メリケンパークの間を浜手バイパスの南側まで埋め立てする計画もあるようだ。

 

 

 やはり、時代の変化とともに、過去の港の姿も失われていくことは必然なのであろうか。

 

 神戸港とよく比較される横浜港の姿と比べてみるとどうだろうか。

 下の地図は、神戸港と横浜港の中心部分を同縮尺で上下に並べてみたものである。

 神戸港は南向き、横浜港は北東向きに海に面しており、少々比較がしにくいが、神戸港は昔の海岸線をほとんど埋め立てて、今では京橋とメリケンパークの間に、阪神高速道路の下に、わずかに当時の海岸線が残るのみである。

 一方、横浜港は、海岸通の前方は運河を挟んで埋め立てられているが、ほぼ、昔の海岸線が残されている。特に山下公園のあたりは、海に面した部分が大きく開けており、それが横浜の市街地の独特の開放感の形成に大きく貢献している。さらに、驚くべきことに、大桟橋の袂には、横浜港の発祥の地である入り江まで残されている。横浜市では、横浜港開港150年記念事業として、この入り江を整備し、当時の防波堤まで再現し、「象の鼻パーク」として開放している。

 



 神戸も横浜にならって、神戸港発祥の入り江を復元、整備してはどうだろうか。すなわち、(1)の京橋から東側の、かつて水面であったあたりを掘り起こして、再び海水を引き込み、昔の姿を復原することを提案したい。どこかで聞いたキャッチフレーズ風に言うと、「陸、再び海へ」というわけだ。

 港は神戸の原点であり、港に面して発展した独特の街並みに海は欠かすことができない。海がなければ、神戸の市街地の個性は失われてしまう。

 それを実現するためにも、阪神高速道路の高架の撤去は不可欠だと考える。

 

 

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 もう一点、まったく今更のことであるが、メリケンパークを埋め立てたことは、神戸の市街地にとってよかったのだろうか。メリケンパークの背後には、昔からの海運関係の会社が多く集まっているが、埋め立てによって、これらが海から完全に遠ざかってしまった。 

 

メリケンパークの北側付近の海岸通の風景)

 

(海岸ビルヂング(海岸通))

 

 もしも、メリケンパークのエリアが現在も海のままであったなら、どのような光景であったのだろうか。空想は膨らむ。

 神戸市は、むやみな埋め立ては行わず、できるかぎり街の成り立ちの歴史を踏まえて、保存すべきところ、大胆に開発すべきところを区分して都市開発を行う必要があると考えるがどうだろうか。

 

 

神戸・海岸通の美観

 

 


 神戸は、幕末の開港以来、東の横浜と並び、我が国を代表する国際貿易港として発展してきた。その核心は、やはり開港時に開かれた外国人居留地である。現在は「旧居留地」の名称で呼ばれているが、現在の東遊園地から、大丸神戸店と元町商店街南京町とを東西に隔てる鯉川筋までが当時の外国人居留地の範囲に当たる。町割りや地名は現在でも当時のままで、ここには往事の神戸の繁栄を偲ばせる近代建築が多く残されており、独特の景観を形成している。

 



 残された近代建築の代表的なものを見てみよう。

 

(1)チャータードビル(上図①)

 

(2)神港ビルヂング(上図②)

 

(3)商船三井ビルディング(上図③)

 

(4)神戸海岸ビル(上図④)

 

(5)日本郵船ビル(上図⑤)

 

 特に、南側の国道2号線に面した海岸通には、比較的まとまって当時の建築物が残っており、近代建築群としての街並みを形成している。

 

(6)海岸通の近代建築ビル群

 

(6)京橋から海岸通を臨む

 

(7)京町筋の神戸市立博物館(旧 横浜正金銀行神戸支店)(上図⑥)

 

 

(8)波止場町から見る山側の景観

 

 これらは、過去の神戸の繁栄を物語る歴史的記録としても大変貴重なものであるが、石造りの重厚なビルの建ち並ぶ様は壮麗で、まさに美観である。これらは今後も大切に守り、景観の整備に努めるべきであろう。

 今後、このエリアで建築物を建てる際には、過去にあって現在は失われた建物の意匠をモチーフとして、街並みの統一を図っていくべきであろう。

 現在、残されている近代建築にあっても、できる限り建築当時のデザインを復原していくことも考えられる。たとえば、日本郵船ビルは、建築当時には、銅葺きの屋根と円形ドームを戴いていたことがわかっている。同ビルは、海岸通を東側から西方を眺めたときに、真正面に見える位置にある。これを復原すれば海岸通の素晴らしいランドマークになるだろう。

 

(昭和初期と思われる海岸通の日本郵船ビル)

 

 また、景観全体を捉えたときに、視線を遮るもの、たとえば、農業会館前の陸橋などは撤去した方がよいと考える。

 

 

(上記2枚 Googleストリートビューから作成)

 

 どうしても立体交差が必要であるならば、陸橋よりも地下道の方がよいのではないかと考える。地下道は陸橋に比べて、一般的に、景観上の障害とならないだけではなく、陸橋が大型の自動車を通過させる必要からある程度の高さを確保する必要があるのに対して、地下道は人さえ通過できればよいので陸橋にくらべて昇降を小さくできると考えられるので、通行者の負担を少なくできると考えられている。

 

(地下道の例:神奈川県江の島の地下道)

(Googleストリートビューから作成)

 

 

 しかし、なんといっても海岸通の景観上の最大の問題点は、阪神高速道路の高架道路であろう。

 

 




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神戸アリーナ 高まる期待(2)

 来年4月の開業予定で、神戸港の新港第2突堤で建設が進む「ジーライオンアリーナ神戸」について、アリーナの運営会社は19日、アリーナと周辺の緑地を含めたエリアの愛称を「TOTTEI」(トッテイ)とすると発表した。港の発展を支えた突堤の名を継承し、新たなエンターテインメント拠点として地域をもり立てる-との決意を込めたという。
 現在のアリーナ建設工事の進捗は40%超で、緑地に整備する建築物などは今夏ごろ着工する。緑地では大型イベントを年に複数回開催し、アリーナを含めたエリア全体で年300万人の集客を目指す。

 

神戸新聞 2024/4/19)

 

 来年4月に開業予定の神戸アリーナ(ジーライオンアリーナ神戸)の建設が順調に進んでいるようだ。アリーナの運営会社は19日、アリーナと周辺の緑地を含めたエリアの愛称を「TOTTEI」(トッテイ)とすると発表し、アリーナだけではなく、周辺に大規模な緑地を設け、愛称も付け、エリア全体、エンターテイメント拠点として、年間300万人の集客を目指すということだ。

 

 この緑地については、先に運営会社から次のとおり発表がされている(2024年2月8日)。

obkpress.pdf (kobe.lg.jp)

 

「神戸アリーナプロジェクト」を運営する株式会社One Bright KOBE(本社:兵庫県神戸市、代表取締役社長 渋谷 順)は、このたびアリーナ周辺エリアにおいて、港湾緑地の借り受けの国内第一号事例として、神戸市より「港湾環境整備計画」の認定を受けましたことをお知らせします。アリーナとアリーナ周辺の港湾緑地を一体運営することにより、日常的なにぎわいを創出する神戸の新たな魅力づくり(まちづくり)に取り組んでまいります。


●One Bright KOBE べニューマネジメント Divisio Manager 渋谷 樹 コメント 
 第二突堤内の「Glion ARENA KOBE」周辺空間(港湾緑地)の活用計画が、「港湾環境整備計画制度(みなと緑地PPP)」の国内第一号案件として認定されました。本制度を用いて官民連携でみなとのにぎわい空間を創出する日本初の事例として、神戸ウォーターフロントに世界でも類を見ない海沿いの新たなスポットが誕生します。
 第二突堤先端には、兵庫県出身の畑友洋氏と共に、「Regeneration(再生)」をテーマに、新たな建築物を計画中です。様々な国内外の事例研究を基に「Open(広場性)」「View(眺望性)」「Green(緑化)」「Symbolic(モニュメント性)」の4つの軸を念頭に、神戸ならではの海と山が身近に感じられるランドマークエリアとなるよう設計していきます。
 建築物の屋根上は開放感のある観覧席にもなり、建物内には飲食店や共用スペースを併設します。
 アリーナのみでなく屋外においてもイベント開催を予定し、365日日常的ににぎわいが生まれる新たなパークエリアの創出を目指します。 


●畑友洋 建築設計事務所 代表 畑 友洋 様 
 第二突堤の先端に、緑の丘のような建築を計画しています。屋根上の緑あふれる丘は、パノラマに広がる海が一望できる、屋外劇場のような開かれた場所です。丘に登れば六甲山系の山並みを一望することもできます。神戸の海と山の風景を直結し、神戸ならではの雄大な魅力を感じることのできる新しい海辺の拠点になることを目指しています。 

 

(株式会社One Bright KOBE 2024/2/8 発表資料)

 

(出典:株式会社One Bright KOBE 2024/2/8 発表資料)


 公表されているイラストを見ると、非常に斬新であり、海と山の景観に恵まれた神戸にふさわしい建築物であると思われる。非日常感を演出し、人々の高揚感を高める素晴らしい計画であり、人気を博することになるに違いない。

 

 冒頭の記事によると、会見した運営会社の渋谷順社長は、開業から1年間の週末は音楽イベントなどの仮予約でほぼ埋まったと説明。「順調な滑り出しになる」と見通しを語ったとのことである。

 

 神戸は、大規模アリーナを設置するのに最適な場所であると、かねがね考えていた。その理由は、まず、新幹線、神戸空港と長距離交通機関とのアクセスがよく、おまけに、JR、阪急、阪神、市営地下鉄、ポートライナーが接続する西日本有数の交通拠点であり、さらに西日本最大級のバスターミナルも整備される。その輸送力は、過去のみなと神戸花火大会等で1日で30万人を動員してきた実績からも立証される。特に、西日本、中国、四国地方からのアクセスに優れ、その便利さは、大阪城ホールを凌駕している。その上、風向明媚で、アリーナの公演だけでなく、観光やすばらしい飲食店も豊富である。

 神戸アリーナの利用予約も非常に順調なようだ。神戸アリーナの成功は、神戸の立地条件の素晴らしさを人々にあらためて強く印象づけることになるだろう。これまで大阪中心であった、関西、西日本のエンターテイメントの地図を書き換えることも可能なのではないか。

 神戸アリーナの成功を皮切りに、ぜひ、2万人級の大型アリーナの建設も構想してほしい。立地は、みなとのもり公園が適地であると考える。

 

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阪神高速道路の地下化構想

 神戸の市街地は海と山の景観に恵まれ、異国情緒にあふれ、その美しさは多くの人が讃えるところである。しかし、その神戸の市街地の景観を損なっている最大のものは、高層ビルでも、タワーマンションでもなく、阪神高速道路3号神戸線であろう。現在の神戸の景観上の最大の課題は、港から見る六甲山の稜線や、ビーナスブリッジから見る大阪湾の水平線をいかに守るかではない。それは、間違いなく、市街地と港を分断する阪神高速道路の存在だと考える。この付近を歩くとき、高速道路の高架は、人々にかなりの圧迫感を感じさせる。特に阪神高速道路は高さも低く、目の前に長大な壁のように立ちはだかり、頭上すぐに覆い被さるようで、これがなければどれだけ開放感があるだろうかと考えずにいられない。そのように考える者は、筆者だけではないはずだ。

 

(神戸 メリケンパーク前から市街地を臨む)

 

(神戸 京橋付近からメリケンパーク方面を見る)

 

(神戸 フラワーロード側から神戸税関方面を臨む)

(上記3枚 出典:google ストリートビューから作成)

 

(神戸 メリケンパークから見た市街地の風景)



 上の写真を見ても明らかなとおり、これらの高架道路は神戸の市街地を分断し、大きな閉塞感をもたらし、景観を決定的に破壊している。


 実際、過去には、これを撤去して地下に移設してはどうかということが議論に上がったことがある。

 「阪神高速道路神戸線は全面的にやり直す時点で地下化すべきである」

 6月29日、神戸市復興計画審議会は計画案の答申に特記事項を加えた。しかし、翌30日に決まった復興計画で、この表現は消えた。神戸線は「早期復旧」としか書いていない。

(中略)

 「ひょうご創生研究会」(会長・新野幸次郎元神戸大学長)は3月末、神戸線撤去を提言。「地球環境の回復と自動車対策や交通政策の転換を示し、震災復興のシンボルプロジェクトに」とした。


 しかし、行政の方向は既に決まっていた。

 神戸市の復興計画づくりのためのガイドライン検討委員会。複数の学者が創生研と同じ観点から地下化、掘割化を主張したが、論議途中の3月2日、県知事、沿道各市長は、阪神高速道路公団神戸線の早期復旧を要望した。

 委員の一人は振り返る。「意見をまとめる段階では、復旧は既成事実化していた。矛盾した言い方は難しかった」。神戸市サイドからは、復旧事業は予算がつくが、地下化などは新規事業になり、何年かかるか分からないとの「現実論」も出された。産業復興、神戸港再生のために-との方向は変わらなかった。

 

神戸新聞「50年目の決算 震災で問われたもの」 1995/8/19)

 

 1995年の阪神・淡路大震災の当時、阪神高速道路神戸線が倒壊し、復興を検討する中でその地下化が提言されたが、復旧が優先され、実現されることはなかった。

 

 高速道路といえば、高架道路というのがお決まりであるが、神戸と同じ国際港湾都市である横浜市では、計画着工の直前に、高架が市街地を分断してしまうことを懸念し、計画を見直し、地下埋設に変更したという事例がある。その実現に至る経緯については、田村明「都市ヨコハマをつくる」(中公新書)に詳しい。その実現は非常に困難なものであったが、その努力は現在の横浜市の市街地の開放的で美しい景観に見事に結実している。

 

(広々として開放的な横浜港の風景)

 

(横浜 山下公園から見る ホテルニューグランドマリンタワー

 

(横浜 大桟橋から見る 赤煉瓦倉庫とみなとみらい地区の偉観)

 

 


 その他には、東京の首都高速道路では、日本橋に覆い被さる高架道路を地下化する事業を現在進めている。

 

START!新しい道へ!日本橋へ! | 首都高速道路日本橋区間地下化事業 (shutoko.jp)

 

 神戸でも、この日本橋区間の事業に続く第2弾、西日本での第1号として阪神高速道路の地下化を実現できないものだろうか。

 

 現在、神戸では、新港突堤の再開発が進められている。今後、この地区に建ち並ぶ倉庫群は、いったんすべて撤去されることになるはずだ。これはめったにない、きわめて貴重な機会であると思われる。早急に計画を立案し、ルート部分の敷地を確保すれば、さほどの難工事を要することなく実現が可能なのではないだろうか。幸いなことに、みなとの森公園も大きな空地となっている。この機会に、みなとの森公園から新港町、メリケンパークを経て、神戸駅前付近辺りまでの高架道路を抜本的に整理、移設し、これまで分断されていた市街地と港を一体のものとする再開発を、神戸の都市計画百年の計として行ってはどうだろうか。

 阪神高速道路が市街を分断して、すでに50年以上を経過している。いずれ、リニューアルの計画も出てくるに違いない。この機会に、京橋パーキングエリアごと、移設できないだろうか。

 さらに、タイミングがよいことに、最近、京橋付近で、幕末の勝海舟坂本龍馬ゆかりの海軍操練所の遺構が発掘されている。これは、日本の近代化の曙光ともいうべき我が国の重要な歴史的遺産である。この復原を一つの目標として、国家的事業として計画を進めてはどうだろうか。

 

 勝海舟の提案で幕末の1864年に幕府が開設した神戸海軍操練所とみられる石積み防波堤などが神戸市中央区新港町で見つかり、26日、神戸市が発表した。

 市によると、幕末に開港した5港(函館、横浜、新潟、神戸、長崎)のうち、開港時の遺構が発掘調査で確認されたのは初めてという。

 操練所は海軍士官養成や艦船修繕のためのドックもあり、坂本龍馬陸奥宗光らが学んだという。倒幕を目指す浪人らもいたため、反幕府的とみなされ、1年で閉鎖されたが、操練所跡を土台に港湾施設が建設され、68年に開港、その後の神戸港の礎となった。

 

日本経済新聞 2023/12/27)

 

 

 新港突堤の界隈には、神戸の代表的な近代建築である神戸税関本館や旧神戸生糸検査所(現デザイン・クリエイティブセンター神戸)などがある。しかし、現状はこれらを覆い隠すように、阪神高速道路等の高架が錯綜している。もしも、これらを撤去することができれば、市街地と港の文字通りの一体化が実現し、神戸の市街地に開放的な広がりと重厚感を与えることができるだろう。

 

 実現するためには多額の費用を必要とするだろう。しかし、これは、実現する価値が十二分にあることだと思う。実現するまでに長い時間を要するだろうが、しっかりと計画をつくり、着実に事を運ぶならば、いつの日か、開放的で美しい、神戸の市街地が姿を現し、それは市民の誇りとなるだけではなく、日本、世界の人々に愛され、多くの人々が訪れる場所になることだろう。何事も、ビジョンと熱意が重要だ。想像すること、願うことなしに物事が実現することはない。神戸市は、そうした未来の神戸のための大きなビジョンを提示してほしい。



 

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