
神戸は食べ物がおいしい街である。その多様性と質の高さで、日本屈指の美食の街であると言っても過言ではないだろう。
神戸のすばらしさは、それらが一部の高級レストランや料亭だけで提供されるものではないという点である。三宮や元町の有名店はもちろん、住宅街のベーカリーや洋菓子店、街角の喫茶店、小さな中華料理店や居酒屋に至るまで、高い水準の味覚がそこかしこにあふれ、市民の生活に根付いている。
神戸の食については、世界に名高い神戸ビーフをはじめ、灘の酒、パンやスイーツ・カフェ、中華街の中華料理など、ガイドブック等でも紹介されているが、それが一つの都市像にまで結び付いていないように思われる。おいしい飲食店があるという情報だけでは、神戸という都市とその他の都市との違いをうまく差別化できていないのではないか。
神戸の食文化は神戸を他の都市から際立たせる非常に重要な特徴である。観光振興や都市の発展の観点から、この特徴を言語化し、もっと全国、世界にアピールできないものだろうか。
なぜ、かくも多様で上質な食文化が神戸に生まれたのか。
神戸が美食の街となった要因を考えてみた。
(1)我が国を代表する国際港湾都市として発展した歴史の中で、様々な国籍の人々が訪れ、暮らし、多様な外国人社会がうまれ、世界中の食文化が市民に自然と親しまれるようになった。
(2)山と海に抱かれた穏やかで美しい風土は、港の経済的な繁栄に伴い、市民が生活を楽しむ文化をはぐくんだ。
(3)神戸は関西と中国四国とをつなぐ十字路の位置にあたり、瀬戸内海だけではなく、日本海、太平洋の海の幸、西日本の山の恵みが自然と集まる環境にあった。
(4)宮水、神戸ウォーターとして名高い六甲山麓の良水に恵まれ、繊細な味覚をはぐくんだ。
(5)神戸は我が国の文化的先進地帯である関西文化圏に属し、京都や大阪にも近く、関西の洗練された食文化の土壌があった。その中でも取り分け豊かな阪神文化圏の中心地として、豊かな消費生活が花開いた。
(6)それらの環境のもと、味覚の肥えた市民の厳しい目が、何世代にもわたり料理人の技を研ぎ澄ませ続けた。
神戸が日本屈指の美食の街であるのは、こうした要素が有機的に結びつき、発展したという奇跡的なめぐりあわせがあると考えられる。
ところで、神戸は国内有数の美食の街であるにもかかわらず、インバウンドで人気の京都、大阪、札幌、福岡ほどにも知名度がないように思われるのはなぜだろうか。
これらの都市の名前を聞くと、すぐに次のようなイメージが頭に浮かぶ。
札幌:北海道の味覚の宝庫、札幌ラーメン、ジンギスカン
京都:日本料理の精華
大阪:食い倒れの街
福岡:博多ラーメン、屋台、九州の味覚の宝庫
上記の都市の食のイメージはとてもつかみやすい。これがブランド力というものだろう。
神戸は、この点において都市の十分なイメージ化、ブランド化ができていない。西洋料理、中華料理など、種類が豊富なことが逆に単一の都市像を結ばせることを妨げる結果になっているように思われる。これは神戸の都市全体のブランド化にも通じる問題である。
神戸の本当の食の豊かさをなんとか言語化し、神戸の食ブランドを形成することができないだろうか。
そこで、次のような紹介文を考えてみた。
日本と世界の食文化が交差し融合する「美食の街・神戸」
美しい山と海に抱かれた日本を代表する国際港湾都市・神戸。関西の洗練された食文化を土台に、瀬戸内海・四国・日本海などの豊かな海・山の幸が集まり、世界各国の食文化を受け入れてきた街。長年にわたり良質な食材と料理に親しんできた人々の豊かな暮らしが食を磨き上げ、神戸は日本と世界の食文化が交差する国内屈指の美食の街となりました。
これを美食の街・神戸の全体像を表す紹介文とし、それに続けて神戸で味わえる味覚の種別を列記、紹介する。
(神戸で味わえる味覚)
1 世界に名高い「神戸ビーフ」
2 我が国第一の酒どころ「灘の酒」
3 瀬戸内海、太平洋、日本海の海の幸
4 ぼたん鍋などの山の幸
5 伝統の日本料理
6 神戸で花開いた西洋料理
7 本場の中華料理
8 ハイカラ神戸のパン、スイーツ・珈琲・紅茶
9 インド、タイ、トルコ、ドイツ、ロシアなど世界の料理
10 お好み焼きや明石焼き、うどん・そば など庶民の味
この項目の下にそれぞれのおすすめの店も掲載すると、観光客がこれを順に楽しむことができるだろう。これだけ多彩だと、全部味わおうと思っても、一日や二日ではとても無理だろう。
このように、ガイドブックやホームページ等で説明をすると、料理単体ではなく、なぜ、神戸にそのような食材や料理が集まったのかが理解できるし、何を食すべきかもよくわかる。
飲食店の一つ一つを取り出せば、どこかの都市にもあるかもしれない。しかし、このように並べてみるとまさに百花繚乱で、これだけのものが1か所に集まっている街はやはり珍しいのではないか。
神戸の魅力は単一の名物料理にあるのではない。日本と世界の食文化が出会い、磨かれ、多様な味覚が高い水準で共存していることにある。これこそが「美食の街・神戸」の本質なのである。























