六甲アイランドの活性化(2)

 六甲アイランドは中心部のテナントが撤退し、灯りが消え、非常に寂れた風景となっている。その再活性化が課題となっている。人口減少に悩む神戸市にとって、阪神間の住宅地は転入・転出などの人口移動の受け皿として貴重な存在といえるだろう。この問題について、再度考えてみたい。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 前回にも書いたが、六甲アイランドは神戸と大阪の中間点に立地し、六甲の山並みと海を見渡せる開放的な風景、整然とした街並み、広い公園、外国人学校が複数立地する国際的な住環境など、元々持っている条件は非常にすばらしい。しかし、商業施設の撤退が相次いだために、中心部が薄暗く、島全体が寂れたようなイメージが定着してしまった。それが、街の活性化を妨げることになっている。

 では、そもそも、商業施設の撤退の原因は何だろうか。商業施設には広域的な商業施設と近隣的な商業施設がある。広域商業施設については周辺地区の競合施設に対してどれだけの競争力を持つことができるかという点に尽きるので、六甲アイランドの商業施設がそうした魅力を発揮することは、周辺に大規模な商業施設がひしめきあっていることを考えると容易ではない。一方、近隣商業施設については、周辺人口が最重要だと考えられる。六甲アイランドは文字通りの「島」であるから、周辺地区からの来訪はほとんど期待できず、商圏人口は島内の人口に限られるだろう。一般的に、大型食品スーパーの場合の商圏人口は1~3万人、小型食品スーパーで5千人~1万人と言われている。では、六甲アイランドの状況はどうかというと、大型店のダイエーと小型店のトーホーがあり、以前はこの他にコープ神戸とパントリーなどがあったが現在は撤退している。これに対して、六甲アイランドの人口は約2万人とのことである。もともとの計画人口は3万人であったが、世帯の小規模化により、世帯数はほぼ計画どおりであるが人口は計画の3分の2に止まっている。つまり、必要な商圏人口(大型店3万人+小型店1万人)>六甲アイランドの人口2万人 ということになり、これでは六甲アイランドの商業施設の営業が振るわないのもやむを得ないことだ。

 六甲アイランドの活性化のためには、島内の人口増加が必要だ。

 神戸市は他人事のように「六甲アイランドの活性化」などといっているが、今日の事態は計画を立てた神戸市に責任があるだろう。世帯の小規模化は全国共通の現象だから、その傾向がわかった時点で計画を修正しなければ、このような現状に陥るのは予想がつくことだ。神戸市は、こうした社会情勢の変化をもっと真剣に考えるべきであったのではないか。

 六甲アイランドに行ってみると、いたるところに広大な公園やグラウンドがある。特に島の南側は、大学のグラウンドなどが大きなスペースを占めており、住宅地はわずかである。バブル経済が崩壊し、土地の処分を急いだのか、まとまって売れるところなら何でも売ったのではないかとすら思える。その結果、多くが大学や学校などのグラウンドに処分されたのではないだろうか。しかし、それらは利用人口が少なく島内の活性化にはあまり寄与しないし、固定資産税も生まないから神戸市の財政的な観点から言っても、あまりよい売却先といえなかったのではないだろうか。これだけよい立地条件で、立派なインフラを作ったのに、広大な公園やグラウンドにしてしまうのは有効な土地利用とはいえないだろう。そうした、展望のない、その場しのぎの対応が六甲アイランドの今日の不振を招いているのだ。

 六甲アイランドの街としての維持、発展を考えるならば、時間はかかっても、継続的に住宅を整備し島内人口を少なくとも計画人口通りに持っていく必要があったのではないか。その責任が開発をした神戸市にはあったのではないか。

 今後の方策として、今からでも、住宅地に転用できるところは住宅地として供給し、島内人口の増加を目指すべきだ。そうして、島内の人口が適正水準に達することによって、島内は再び活性化し、それを魅力と感じる人々が常時流入を続け、安定した街として成熟をしていくのではないかと考えられる。神戸市は「六甲アイランドの活性化」などの後ろ向きな姿勢ではなく、再度、六甲アイランドの都市ブランドづくりに取り組むべきだ。それだけの優れた条件を六甲アイランドは持っている。そのための一定の投資も必要だ。