JR三ノ宮駅の大改造

 JR三ノ宮駅は、神戸を代表する中心駅である。1日の乗客数(降車客数を含まず。)は9.7万人(2021年)を超え、兵庫県最大の利用客数を誇る。この数字は、JR広島駅の5.1万人、JR岡山駅の4.7万人をもはるかに超え、JR西日本管内では、大阪駅、京都駅、天王寺駅京橋駅に続く第5位となっている。

 大都市の中心駅は、複数の路線が集積するターミナル駅である場合が多いが、三ノ宮駅は単独の路線の停車駅である。三ノ宮駅東海道本線JR神戸線)に所属し、他のJRの路線とは接続せず、新幹線とも接続しない単独駅である。そのため、三ノ宮駅は上り下り各2線で、ホームは1番から4番までしかない。

 三ノ宮駅付近の線路は高架となっている。ホームはその高架上に設置されており、線路とホームの下部がそのまま駅の構内となっている。三ノ宮駅の北側に接して阪急神戸線の高架が並行しており、その高架下も取り込んでJR三ノ宮駅が構成されている。それでも、単独路線の停車駅という性格上、必然的に駅構内の幅が元々非常に狭い。しかも、近年、駅中の活用として、通路や駅施設をぎりぎりまで削って商業施設を配置したため、駅のコンコースは極めて狭い。

 JR三ノ宮駅は、JR線としては単独駅であるが、その周囲には阪神、阪急、市営地下鉄、ポートライナーの私鉄各線の三宮駅が取り囲むように集積している。その乗降客数の合計は1日70万人を超えていると言われており、それらの乗り換え客がひしめき合い、非常に手狭となっている。さらに、三ノ宮駅は、新幹線新神戸駅神戸空港乗り継ぎの最寄り駅ともなっており、神戸空港の発展に伴い、大きな荷物を持った通行者が目立つようになった。

 

 また、JR三ノ宮駅は歴史ある駅でもある。1874年(明治7年)、大阪駅 - 神戸駅間の開通と同時に開業した。その当時、神戸の中心市街地は西部の兵庫港側にあり、それにほど近い場所に神戸駅が置かれ、新たに発展していた神戸外国人居留地の最寄り駅として三ノ宮駅が設置された。開業当時、神戸駅は大ステーションと呼ばれ、三ノ宮駅は小ステーションと言われた。最初の三ノ宮駅は、現在のJR元町駅の場所に設置されていたが、1931年、東海道本線の高架化とともに現在地に移転した。三ノ宮駅の駅名に「ノ」の字が含まれるのは、その歴史の名残だ。神戸市は「三宮駅周辺の一体的空間づくりが望ましい」との判断から、先行して改称した阪急・阪神と同じ「神戸三宮」への改称の要望をJR西日本に申し入れているそうだ。

 

 神戸市がJR西日本に対し、JR三ノ宮駅(同市中央区)の駅名から「ノ」を除くよう要望している。実在の地名に「ノ」がないことが理由だが、私鉄や地下鉄など6駅ある三宮の名称を統一し、市の中心地として「神戸三宮」に改称したい思惑もあるという。

(略)

 JR西などによると、JR三ノ宮駅は1874(明治7)年に開業。名前の由来は不明だが、JR神戸駅の建設が先に決まったため「三宮」となり、読み間違わないように「ノ」を付けたとされる。

 しかし市は、「三宮が市の中心」ということを分かりやすく示したい考えがあり、三ノ宮駅から「ノ」を除く変更と合わせ、三宮の駅名に「神戸」を付けたい考えがあるという。

(2016/3/12 産経WEB)

 

 三ノ宮駅の駅名は、上記の記事にもあるように、歴史あるものであり、大切にすべき都市の財産だと考える。市の担当者の安易な考えで変えるべきではない。

 

 そうした長い歴史を持つJR三ノ宮駅は、野坂昭如の小説「蛍の墓」の主人公が最期を迎える場所としても知られている。高畑勲監督の同名のアニメ映画でも、特徴のある丸い円柱の姿が忠実に描かれていた。

 

 前置きが長くなった。

 上記のように、三ノ宮駅は、神戸市最大の中心駅であるが、手狭で貧弱である。このことは、他都市を訪れて、帰神した時に、いつも強く感じることだ。特に、近年は、他の大都市の中心駅の整備が進んでいる。広々としたコンコース(自由通路)に、新しい設備が整い、機能的で、かつ、とても堂々とした姿である。この近辺でも、大阪駅、京都駅は言うに及ばず、県下の姫路駅や明石駅と比べても見劣りがしてしまう。三ノ宮駅は、輝かしい歴史を背負う駅であるし、なんといっても、県庁所在都市神戸の中心駅である。現状は、とても、その輝かしい地位にふさわしい姿とは言えない。都市の玄関口の姿は、都市全体の印象を左右するものだ。神戸市は人口150万人の大都市であるが、今ひとつ大都市感がないのは、この三ノ宮駅の姿が大きく影響しているのではないだろうか。もしも、三ノ宮駅が堂々たる風格のある姿になれば、神戸の印象も大きく変わるに違いない。

 現在、新しい三ノ宮駅ビルの建設計画が進められているが、この機会に、ぜひ三ノ宮駅本体も大改造を行い、面目を一新してほしいものだ。

 第一に、行ってほしいことは、三ノ宮駅に十分に広い空間を確保することだ。できれば、現在の構内の施設をいったん全部撤去して、白紙から再構築をするぐらいの大改造を行ってほしい。

 三ノ宮駅には現在、西口、中央口、東口の3つの改札口がある。西口は阪急三宮駅三宮センター街方面につながる経路であり、通行量はとても多い。朝夕の通勤時間帯は、通勤・通学の人々で、まっすぐに通行することも難しい。待ち合わせをする人々も多く、いよいよ手狭である。できれば現在の2~3倍の広さに拡幅をしてほしい。

 中央口と東口の改札に挟まれた内側が駅構内であるが、これがまた非常に狭いので、ここをやはり2~3倍程度に拡大してほしい。中央口の通路は、現在の三ノ宮駅で最も広い空間であるが、これにしても他の大都市の駅と比較すると大きく見劣りがする。ここは、市営地下鉄三宮駅や、阪神三宮駅、地下街(さんちか)へ通じるメインストリートであるから、通行量の確保と同時に、大空間を確保してほしいところだ。できるならば、現在の中央口から西側のエリアを一旦すべて撤去して、阪急や市営地下鉄と自由に行き来できる広大な広場を確保してほしい。

 現在、特に狭いのが東口で、東口の改札を出ると、正面すぐに旅行社の店舗が迫り、南側に転じるとすぐにポートライナー三宮駅に接続する階段がある。この付近は、ポートライナーの混雑も合わさって、大きなトランクを運ぶ人々の往来が多く、混雑感がひどい。少なくとも、現在の2~3倍ぐらいには拡幅してほしい。この東口の東側には、旅行社の営業所や飲食店、パチンコ店などが切れ目なく連なり、高架下を南北に横切る道路に突き当たるまで続いている。これらをいったんすべて見直し、もっと広く、整然とした空間に変えてほしい。その道路を越えたさらに東側の高架下には神姫バスの大規模な中長距離バスターミナルがある。そこから三ノ宮駅の改札に向かって人波が続々と押し寄せてくる状況で、この通行量もかなり多い。現在、三ノ宮駅東側の旧中央区役所の跡地に、西日本最大級のバスターミナルが建設されつつある。これが完成して、神姫バスのバスターミナルも移転すれば、ここに新しい三ノ宮駅の東口を開設してほしい。新東口の開設は、三宮東部へのアクセスをスムーズにすると同時に、現在の西口や中央口の混雑緩和にも役立つだろう。駅の混雑は都市機能のボトルネックになりかねない。都市の発展のために都市施設の十分な容量を確保すべきだ。

 三ノ宮駅は、もともとはターミナルとして設計されたものではなく、東海道本線の停車駅にすぎなかった。しかし、現在、周囲には阪急、阪神、市営地下鉄、ポートライナー三宮駅が集積し、今後、中国、四国地方とを結ぶ西日本最大級のバスターミナルが建設され、規制緩和によって大幅に増便され、国際化が実現する神戸空港および、東海道・山陽・九州新幹線のすべての列車が停車する新神戸駅、そして、これらを結ぶアクセス線が建設されると、もはや三ノ宮駅が果たす役割は「停車駅」ではなく、西日本最大級の「ターミナル駅」であろう。神戸市は、そうした将来像をJR西日本とも共有し、それにふさわしい堂々たる三宮駅を構築するよう働きかける必要がある。

神戸空港のアクセスについて考える(3)

 ポートライナーは1981年2月に開業し、当初は三宮とポートアイランドとを結ぶ交通機関として運行された。開業当初、複線区間三宮駅からポートアイランドの入り口にあたる中公園駅までで、ポートアイランド内の路線はループ状の単線区間となっており、中公園駅から市民広場駅まで南下し、そこから東に向きを変え、南公園駅を経て、ポートアイランド東部を北上し、中埠頭駅北埠頭駅を通って中公園駅に戻るというルートであった。

 その後、2006年2月に、神戸空港の開港に合わせてポートアイランド2期、神戸空港まで延伸された経緯がある。その際、中公園から市民広場間が複線化され、三宮から神戸空港までが複線区間となった。

 

 ポートライナーの新線はどのような位置づけになるのだろうか。

 

 これは次の図のように考えると理解しやすい。

 

 ポートライナーは、本来、ポートアイランドポートアイランド2期のためのアクセス(図の青線の部分)である。空港専用のアクセスは、ポートアイランド2期から空港島までの間(オレンジ色の部分)だけで、言わば、ポートアイランド2期から三宮までは、ポートアイランドのアクセス線を間借りしている状態である。それは、神戸空港の運用に厳しい制限が課せられ、先行きも定かならぬ状況においては賢明な判断であった。しかし、神戸空港を取り巻く環境は大きく変わった。神戸空港の国際空港化が実現することになり、発着回数も1日60回から国内線、国際線を合わせ160回と3倍近く拡大することになった。そして、今後、神戸空港は西日本の基幹空港として大きく発展していくことになるだろう。将来的には、2本目の滑走路の建設も視野に入ってくるだろう。これまで間借りしていた三宮からポートアイランド2期までの路線とは別の専用の空港アクセス線(オレンジ色の破線部分)を用意すべき時が来たと考える。そして、神戸空港の最大のメリットである新幹線沿線という立地条件を最大限に活かすため、三宮から新神戸への延伸線(赤の破線部分)を建設し、他空港の追随を許さぬ利便性を確立すべきである。

 

 ルートの案については、以前に示した。

 

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 この案だと現在の三ノ宮駅から東側に若干離れすぎているという指摘があるかもしれない。しかし、現在建設が進んでいるバスターミナルに隣接する場所であるし、阪神三宮駅の東口からも近い。また、JR三ノ宮駅は東口の新設を行えば、利便性が大いに向上するだろう。

 もしも、これが実現するならば、神戸の都心は、この新線に沿って、現在のフラワーロード東側に拡大していくことになるだろう。

神戸空港のアクセスについて考える(2)

 新たに建設されるべきアクセス線は、どのような交通手段となるだろうか。

 筆者は新交通システムが妥当であると考える。

 

 ポートライナーは、大変すぐれた特徴を持っている。

(1)無人運転による運行コストの安さ

(2)運行時間、運転本数の弾力性が高い

(3)建設コストの安さ

(4)交通渋滞がないこと

(5)最小曲線半径が小さく、急勾配での走行が可能

(6)ホームと車両の間に段差がなくバリアフリーである

 

 ポートライナーは、早朝から深夜まで、ほとんど待ち時間なしに乗車することができ、運行の正確さは、利用者にとって本当に安心感が高い交通機関である。

 一方で、デメリットとしては、車両の小ささによる、圧迫感、混雑感、快適性の不足が指摘されている。

 ポートライナーは確かに、JRや、阪神、阪急などの在来の鉄道に比較すると小さな車体である。

 そこで、ポートライナー、地下鉄海岸線、地下鉄西神線の3者の車両の規格を表にまとめてみた。

 これを見ると、車両の長さはポートライナーは、地下鉄海岸線、西神線の車両の半分程度であるが、車幅については、地下鉄海岸線と同等である。高さについても、西神線との差異は36センチ程度であるが、地下鉄海岸線とは同等である。西神線は別格としても、海岸線とは、車体長はともかく、車幅と高さについては大きな差はない。さらに調べてみると、ポートライナーの車両内側の天井高は2,115mm であり、一般の通勤列車の天井高は2,280mmだそうだから、16.5センチしか違わない。しかし、ポートライナーの方が圧迫感が強く感じられるのはなぜなのだろうか。

 

(1)ポートライナーの車内(2020型)

(出典 Wikipedia)

 

(2)地下鉄海岸線の車内(5000型)

(出典 Wikipedia

 

 両者を比較してみて、気がつくことは、天井の付属物の配置についてである。

 海岸線の方は、付属物が車体の両サイドにまとめられているのに対して、ポートライナーには、車体の中央部に、吊り輪やその取り付け金具、手すり等、様々な付属物がせり出している。背の高い人にとっては実際に頭をかすめることもあるし、見た目にも、元々低い天井がことさらに低く感じられる。したがって、これらの付属物を極力排除するようにして、頭上の空間を広く取る工夫をすれば、ポートライナーの乗車時の圧迫感を減少させることができるのではないだろうか。

 車内の椅子の配置も、進行方向に向けるのではなく、横向きの配置の方が車内が広く感じられるような気がする。こうした事も、さらに工夫の余地があるのではないだろうか。

 

 参考までに、バスだと乗降口に大きな段差がありバリアフリーではないし、天井は 1,890㎜(三菱ふそうエアロクイーン(45席))と、ポートライナーよりさらに窮屈である。

 

 以上のように、ポートライナーは多くのメリットがあり、車体が狭いことは、他の交通手段に比べて決定的なマイナスにはならないと考える。

 しかし、なにより、既存のポートライナーのインフラを活用できることが決定的に大きなメリットである。

 

神戸空港のアクセスについて考える(1)

 神戸空港に国際定期便が就航することになり、2030年頃には1日の発着回数も現在の国内線80回から、国内線120回、国際線40回へと、大幅な増加が見込まれることから、これに応じたアクセス増強を求める声が高まっている。

 先頃、神戸新聞に、次のような記事が掲載された。

 

神戸空港の国際化、朗報の裏に輸送パンクという消せない不安 ポートライナーは混雑が常態化

 

 9月18日、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の国際化が決定しました。これにより神戸空港の利用者が増えることが予想されますが、一方では利用者増加に伴う懸念点もあります。

 (略)

■問題は空港アクセスの強化

 神戸空港利用者の増加は歓迎すべきニュースですが、懸念点も存在します。それが空港アクセス、特にポートライナーの増強です。
 (略)
 国土交通省によるとポートライナーの2019年度最混雑区間は貿易センター→ポートターミナル間(8:00~9:00)で、混雑率は126%。最もこの混雑率は1時間あたりの平均値なので、ピンポイントではより混雑率が高くなります。
 (略)

 現在はコロナ禍により減少はしていますが、今後、利用者数がコロナ禍前の水準に戻り、さらに国際線による空港利用者が増えると、輸送がパンクする恐れがあります。
 (以下略)

 

神戸新聞 2022/10/7)

 

 

 神戸市長は、9月20日の記者会見で、神戸空港のアクセス増強に関して次のように語った。

 まず、アクセスについては、空港の連絡橋が2車線しかなかったのを4車線にするということで、これはもう工事が順調に進んでおりまして、令和5年度には完成できるのではないかというふうに思います。また、新神戸方面の道路については、生田川右岸線の整備を進めていますし、あと、少し時間がかかりますが、港島トンネルの北伸ですよね。新神戸トンネルの南伸と言ってもいいかもしれませんが、この新たなアクセスについても現在、国土交通省と協議をしているところです。

 

(神戸市長記者会見 2022/9/20)

 

 これは今、様々な検討を行っておりますが、ポートライナーをどうするのか、あるいは新たな新線を建設する、これは相当莫大な経費が要りますから、これについては検討は行っておりますけれども、まだ方向性は見えてはおりません。

 

(神戸市長記者会見 2022/9/20)

 

 これによると、現在、神戸市が進めているのは、空港連絡橋の4車線化、生田川右岸線の整備、港島トンネル北進等の道路交通網の整備である。一方、ポートライナーの輸送力増強、あるいは新たな新線の建設については、検討はしているが、費用が莫大となることから、まだ方向性は出ていないようだ。

 

 筆者は、神戸空港と三宮、新神戸駅とを結ぶ新アクセス線の建設を主張している。その理由は次の通りである。

 

(1)現在においてもポートライナーの著しい混雑が発生しており、上記の神戸新聞の記事のように、神戸空港の増便と国際化による状況の悪化を懸念する声が生じていること

 空港は、交通機関として、それに至るアクセスも合わせて機能するものであるから、アクセス線に過度な混雑が生じることになれば、空港そのものの機能についての評価、評判をおとしめることになりかねない。混雑だけならともかく、積み残しが慢性的に発生することがあれば、アクセスのための所要時間にも関わり、空港の機能そのものを損なうことになる。今後、ますます発展していかなければならない神戸空港にとっては、アクセスがボトルネックになるようなことがあってはならない。また、アクセスの混雑をさけるために、沿線の他の利用を制限するようなことになれば、本末転倒というべきだ。十分な輸送力を確保すべきである。

 

(2)神戸空港は新幹線の駅と最も近接する空港の一つであり、それが神戸空港の最大の特徴であり強みであると考えられること

 神戸空港は新幹線新神戸駅と距離的には近いが、現状では、新神戸~三宮は市営地下鉄、三宮~神戸空港ポートライナーと、2つの交通機関を乗り継がなくてはならず、その距離的な近さが十分に活かせているとは言えない。

 試みに、路線検索ソフトを使って、新神戸駅到着から神戸空港到着までの時間を算出すると、朝方の運行本数が多い時間帯であっても、60分近い所要時間が表示される。(下記 試算1)岡山~新神戸はのぞみ号利用であれば所要時間はわずか36分であるにもかかわらず、神戸市営地下鉄ポートライナーを乗り継いで神戸空港に到達できる時間は、1時間35分となる。これでは、神戸空港の本来持っている利便性が十分活かされているとは言えない。

 参考に、岡山~関西空港で同様の試算(下記 試算2)をすると、所要時間は2時間18分となる。中国、四国地方からの集客を目指すべき神戸空港としては、関西空港に対して十分な優位性が発揮できているとは言いがたい。新神戸駅から神戸空港までの所要時間の短縮を図るべきである。乗車中の時間だけではなく、乗り換え、待ち時間を含めて、あらゆる部分で効率性を追求し、1分、1秒の時間短縮を目指す気持ちで改良に当たるべきだ。都心から長距離交通拠点までのアクセス時間は、都市の「性能」の重要な指標だ。都市の性能で、他都市に圧倒的な差をつけなければならない。先ほどの例だと、岡山駅から神戸空港までは1時間以内の到達時間を目指すべきだろう。

 

(試算1)岡山を7時に出発して神戸空港に到達(2022年10月31日)

岡山    7:06

      (新幹線 36分)

新神戸   7:42

新神戸   7:56

      (地下鉄  2分)

三宮    7:58

三宮    8:10

      (ポートライナー 18分)

神戸空港駅 8:28

      (徒歩)

神戸空港  8:35(新神戸到着から53分)

 

(結果)出発後 1時間35分( 95分)、乗り換え2回、料金5,720円

 

(試算2)岡山を7時に出発して関西空港に到達(同)

岡山    7:06

      (新幹線 49分)

新大阪   7:55

新大阪   8:18

      (JR特急 55分)

関西空港駅 9:13

      (徒歩)

関西空港  9:18(新大阪到着から83分)

 

(結果)出発後 2時間18分(138分)、乗り換え1回、料金7,310円

 

(3)神戸空港が、神戸の今後の発展の柱であること

 空港アクセスは、単に空港への乗り継ぎだけが役割ではない。むしろ、大切なのは、空港を利用して、神戸を訪れる人々を増加させることだ。新神戸駅神戸空港が1本の路線で結ばれると、その沿線は、航空機、新幹線、どちらからも利用がしやすい場所となる。仮に、新神戸神戸空港が所要時間20分で結ばれるならば、その沿線上は、新幹線からも、航空機からも20分以内で到達できる場所となる。つまり、空港、新幹線でつながる日本中の人々が、神戸に来れば、20分以内に目的地に到達できる場所となる。こうした場所には、どのような施設の立地が考えられるだろうか。それは、日本各所から、大勢の人々が集まる施設だ。たとえば、会議場や展示場などのコンベンションセンター、コンサートや舞台、スポーツ会場などが考えられる。それらの施設に日本中から人々が集まり、終了後直ちに散会する。もしも、そのような施設ができるなら、人々にとって便利で利用がしやすく、多くの利用機会に恵まれることだろう。そのような人々が集まりやすい場所は、ビジネスにとっても適地であろう。そのような高度な利便性の下に、西日本随一のビジネスセンターを神戸に作ることが筆者のビジョンである。だから、新神戸神戸空港の間に十分な輸送力を確保すべきだ。現在、神戸市が進めているバス路線の構築は、単に空港へ人を送り込むためだけの手段になりかねない。空港へ人々を円滑に送り込むのはもちろんのこと、新神戸駅神戸空港の間に、双方に自由に行き来ができる空間を設けることが重要だと考える。

 

神戸空港国際化 新ターミナル整備へ

 神戸空港の国際化の決定から1カ月、施設を所有する神戸市によるインフラ整備が動き出した。国際チャーター便が解禁される2025年をめどにターミナルビルを新設し、国際定期便が就航する30年前後に駐機場を倍増させる。脆弱な交通アクセスの改善にも着手し、インバウンド(訪日外国人)の本格回復を見据えた態勢の整備を急ぐ。

日本経済新聞 2022/10/20)

 

 神戸空港の国際化が決定され、神戸空港のインフラ整備の方針が明らかになってきた。新しいターミナルビルは2025年をめどに整備され、駐機場の拡張も行われるようだ。

 10月19日に開かれた神戸市の経済港湾委員会の資料を神戸市のHPで見ることができる。

 

20221019_kouwan3.pdf (kobe.lg.jp)

 

 それによると、規制緩和後の需要予測は、国内線510万人、国際線190万人で、合計700万人を見込んでいるとのことだ。国内線、国際線の路線別の旅客数、1日あたりの発着回数も示されている。

 

 

 就航都市は現在から倍増し、日本全国の諸都市と結ばれ、神戸は西日本の交通中心都市としての地位が大いに高まると考えられる。発着回数の拡大は、就航都市の拡大、発着頻度の増加につながり、量の増大は、質の向上に転化する。空港の質の向上は、都市全体の生産性を高めることになるだろう。

 利用客数の増大に伴い、空港の機能の拡大が重要な課題となる。

 上記の資料では、空港の区域拡張と、整備後のイメージが示されている。

 具体的には、西側部分への告示区域拡張と、旅客ターミナルの拡張、サブターミナルの新設、駐機スポット数を現在の10から21へ倍増、駐車場を拡張する計画が示されている。 

 



 この図では少しわかりづらいので、航空写真の上に、旅客ターミナルとサブターミナル(赤色)、駐車場(緑色)、駐機スポットの拡大部分(黄色)を落とし込んでみた。

 

(Googleマップの航空写真を加工)

 

 これを見ると、これまで空き地となっていた西側部分にサブターミナルが建設されることになり、これが、おそらく国際線ターミナルになるものと思われる。一方、既存の旅客ターミナルも大幅に東側に拡張され、現在の倍以上の規模に拡大されているように見える。こちらは、国内線の旅客数増大に対応するものだろう。

 

 新聞の報道では、国際チャーター便が解禁される2025年をめどにターミナルビルを新設するとのことなので、今後、急ピッチで整備が進んでいくものと思われる。

 

 これまで神戸市は、神戸空港の国際化について発信することはほとんどなかったが、9月18日の関西3空港懇談会の合意以降は、神戸市のHPでも前面に大きく取り上げており、神戸空港の国際化が、はじめて公に認知されたということを物語っている。

 

神戸市:神戸空港 (kobe.lg.jp)

関西3空港問題とは何だったのか

 2022年9月18日に開催された関西3空港懇談会において、神戸空港の国際化が合意されることになり、関西3空港問題は歴史的な転換点を迎えることになった。

 そもそも、この関西3空港問題とは何だったのか、これまでも度々この問題を取り上げてきたが、この機会に再度考えてみよう。

 

 関西3空港問題とは、大阪国際空港伊丹空港)、関西国際空港関西空港)、神戸空港の3つの空港が、関西圏という同一エリアの中で、比較的短距離の中にひしめきあい、相互に干渉を及ぼし合い、いずれもが満足できない状態となっていることを指す。

 

 関西圏には古くから伊丹空港があったが、内陸部にあったため、1960年代後半から、周辺の宅地化とともに、航空機の大型化、ジェット化に伴い騒音問題が深刻な社会問題となった。公害に対する意識が先鋭化していた当時の社会情勢の中で、騒音訴訟が度々提起され、その結果、早朝と夜間に厳しい時間制限が設けられ、運航本数も制約を課せられることとなった。当時、航空需要のますますの拡大の中で、伊丹空港に代わる、空の時代に相応しい新たな「関西国際空港」を設置しようとする議論が起きていた。

 様々な候補地の中から、神戸沖、播磨沖、泉州沖の3か所が最終候補地として残っていた。空港は合理性が求められる交通施設であるから、本来は利便性・経済性を第一に建設地を決めるべきところ、そこに別の思惑を持ち込む者があった。別の思惑とは、「関西国際空港」を、経済的な発展から遅れをとっていた大阪南部の格差是正に利用しようという考え方である。それは、交通政策としては本来あるべき考え方ではなかったが、公害問題が大きな影を落とし、人々の理解が十分深まらない中で、性急に泉州沖に設置することが決せられてしまった。

 さらに、ここで注意すべきは、関西国際空港の設置場所を決定した1974年8月13日の運輸省の航空審議会答申では、関西国際空港は、「緊急の必要性にかんがみ、さしあたり早急に整備されるべき最小の規模として判断」されたもので、「今後、関西地区において更に滑走路1組を必要とする場合も考えられる」が、「新空港の沖合にもう1単位又は他の地点に別の空港を設けることも技術的に可能であると確認した。」とされていることである。つまり、関西の空港機能を、将来にわたって、すべて泉州沖に集約することまでを想定したものではなかったということである。

 

 その後、関西空港の建設が始まると、本来埋め立てに適さない軟弱地盤であったことが災いし、当初の計画をはるかに超える埋め立て事業費や高額な漁業補償費を費やすことになり、それを償還するための高額な着陸料設定と、市街地から遠く時間も費用も過分にかかる立地の不便さのため、思うとおり利用が進まず、関西空港は経営的苦境に陥ることとなった。

 関西圏の経済的中心地である大阪北部や兵庫県側からは、大阪湾を半周しなければ到達できない泉州沖の関西空港では、あまりに不便なため、伊丹空港の廃止という当初の想定が、利用客、就航する航空会社の反対を受け、廃止することができなくなってしまった。その結果、伊丹空港は今日まで存続することになった。

 また、神戸市でも、本格的な空の時代を迎えて、海運業の重要性が相対的に低下していく中で、都市の活力低下が懸念されるところとなり、発展のための都市基盤として国際空港がやはり必要であるとの意見が強まり、改めて空港設置を計画しようとした。しかし、関西空港周辺自治体をはじめとする大阪側の反発は強く、強固に反対をされ続け、実現が難航した。1995年1月に起きた阪神・淡路大震災も、建設の前途に陰を落とし、神戸空港設置反対の市民運動も大きな広がりを見せた。2006年2月、ようやく神戸空港は設置されたが、開港後も厳しい運用制限を設けられ、手かせ足かせの状態での運用を余儀なくされた。

 その際、神戸空港の規制の大前提にされたのが、神戸市が当初、「関西国際空港」の最有力候補地でありながら、設置に反対した、というストーリーである。これが、延々と神戸市に浴びせられ続けられた。

 反対の中心である関西周辺の自治体にとって、関西空港は「大阪南部の経済的格差解消のための手段」として設置されたものだ。大阪南部の経済的格差が解消されておらず、経済的利益を十分享受できていない中で、関西圏に新たな空港を設置することは断じて許さない、というのがその主張であった。これは、大阪南部の関西空港周辺自治体の利害そのものだ。その主張の裏側で、大阪北部や兵庫県の航空利便性が犠牲となることになった。

 これを変えるきっかけは、空港民営化である。そこでは、関西ローカルの視点を離れ、客観的な観点から関西3空港問題を見ることができる主体が登場した。それが関西エアポートである。そして、関西エアポート主体に議論が進み、神戸空港の国際化がついに合意されることになった。

 

 関西3空港問題はなぜ生まれたのか。問題は2点ある。

(1)空港という交通施設の立地選定において、大阪南部の格差解消という本来交通とは無関係の問題を持ち込んでしまったこと

(2)当初の合意事項になかった、「関西国際空港」の位置を1カ所に限定するという考えを持ち込み、その理由をハブ空港論として流布し、他の設置を頑強に認めようとしなかったこと

 

 これにより、本来、適地ではなかった大阪南部に「関西国際空港」が建設されることになり、関西空港以外に設置できないという状況が生まれてしまった。その結果、生じたことは、西日本全体にとって利便性の高い国際空港が存在せず、それは東京圏の一極集中を促進し、ひいては国土の交通中心の喪失による関西圏全体の凋落をもたらした。

 

 こうした関西固有の堂々巡りの泥沼状態から抜け出すためには、関西エアポートという第三者の登場を待つ他なかったのである。

 

 

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第12回 関西3空港懇談会(2022.9.18) 取りまとめ を読む

 9月18日に開催された関西3空港懇談会について、関西3空港懇談会事務局の名で作成された「とりまとめ 概要」を、神戸市のホームページで確認することができる。

 今回の懇談会では、何が決まったのだろうか。テレビや新聞の報道を見ると、大阪府関西空港周辺自治体が、会議の前後からも、「関空ファースト」など様々な発言をしており、「泉州市・町関西国際空港推進協議会」の阪口会長(大阪府高石市長)からは「神戸空港はあくまで関空の補完空港としての役割を果たすもので、関空の能力に余裕があるなかでの国際化は時期尚早」(産経新聞 2022/9/22)との声まで出ている。この「とりまとめ」を読み、今回の会議の意義を再度考えてみよう。

 

 2022年9月18日
 関西3空港懇談会事務局

第12回関西3空港懇談会 取りまとめ 概要

 

1 基本的考え方
〇 関西3空港で中軸となる関西空港は、コロナからの早期回復を最優先に図りつつ、2025年万博や関西の成長機会を確実に捉えるとともに、2020年代後半に年間100万回の発着容量確保を目指す首都圏空港との競争力を確保する観点からも今後の容量拡張が極めて重要である。

〇 神戸空港、関西の成長の一翼を担う観点より、歴史的経緯に十分配慮しつつ、関西空港伊丹空港を補完する空港として、効果的に活用していく必要がある

〇 本懇談会としては、2030年前後を目途に、3空港全体で年間50万回の容量確保を目指し、第9回取りまとめを基本とし、その「中期の視点に立った取組」等について以下の通り進める。

 

2 関西空港の容量拡張
〇 一刻も早い関西空港の復活と更なる成長に向け、国内の観光・ビジネス需要の回復、水際対策の緩和に併せた速やかなインバウンド回復策の展開などに、一致協力して取り組む。

〇 2025年万博後においても、長期的な視点で成長を図っていくことが重要である。本懇談会は、「関西国際空港の将来航空需要に関する調査委員会」の中間報告を踏まえ、成長目標として、2030年代前半を目途に、年間発着回数30万回の実現を目指す。

〇 航空機処理能力については、国の検証結果、調査委員会中間報告を踏まえ、上記30万回の実現に必要な能力を確保するため、2025年万博までに1時間あたりの処理能力を概ね60回に引き上げることを目指す。

 

3 神戸空港のあり方
〇 関西空港伊丹空港を補完する空港として、効果的に活用する。その際、特に神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港の需要拡大に貢献する

〇 国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する時期については、2025年万博への対応も視野に入れつつ、新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本とする

〇 国際線は将来における国際定期便の運用を可能とする時期については、まずは関西空港の本格回復の取り組みを進め、成長軌道への復帰を果たすことが必要であり、今後検討される国際線ターミナルの運用開始や関西空港の混雑が予想される2030年前後を基本とし、需要動向や関西空港への影響を見ながら、1日の最大発着回数を40回とする国際チャーター便については、関西空港を補完する観点から2025年万博開催時からの運用を可能とする

〇 運用時間については、航空需要などを踏まえ、引き続き検討する

〇 上記の具体化にあたっては、社会経済情勢や航空会社のニーズ等を踏まえ、関西エアポートグループの経営判断を尊重し、実施する

 

4 今後の進め方など

〇 上記2、3の実現のため、国に対し、現行の飛行経路の見直しについて検討するよう要請する。検討にあたっては、地域の実情を十分考慮し、必要最小限の範囲で見直すことなどを求める。

〇 検討結果が示されたのちは、環境面での検証を行い、2025年万博までに地元としての見解を取りまとめる。そのため、関係者は緊密に連携・協力し、地域との調整や必要な取組みを進める。空港と地域社会の双方が共に発展することが重要であり、まず2025年万博までを目標に地元と連携した観光振興策等を検討・推進する。

〇 2025年万博を経て、関西空港神戸空港が成長軌道に乗ったのちは、長期の視点を持って、さらなる将来のあり方を議論する。

〇 伊丹空港についても、上記とともに、2019年の本懇談会取りまとめに基づき、今後のあり方について必要な議論を行うものとする。

〇 懇談会は今後も適宜継続開催し(原則年1回程度)、関係者の連携・協力のもと、その時々の状況変化に応じて評価検討を行い、必要な課題について議論し、順次結論を得る。

 

(神戸市HPから転載)

 

 

 上記の文面を読むと、様々な修飾語や留保が付けられており、その趣旨がややわかりにくく感じられる。そこで、修飾的、付随的な部分を外し、文章の骨格だけに直してみよう。

 上記の文面の下線を引いた部分が、就職的、付随的な部分を除いた文章の骨格部分である。この部分を抜き出すと次のとおりとなる。

 

1 基本的考え方

 ・ 神戸空港は、(略)効果的に活用していく必要がある。

 

3 神戸空港のあり方

 ・ (神戸空港は)効果的に活用する。

 ・ (略)神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港の需要拡大に貢献する。

 ・ 国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する。時期については、(略)新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本とする。

 ・ 国際線は将来における国際定期便の運用を可能とする。時期については、(略)2030年前後を基本とし、(略)1日の最大発着回数を40回とする。国際チャーター便については、(略)2025年万博開催時からの運用を可能とする。

 ・ (神戸空港の)運用時間については、(略)引き続き検討する。

 ・ 上記の具体化にあたっては、(略)関西エアポートグループの経営判断を尊重し、実施する。

 

 

 このように、修飾的、付随的部分を省いて今回の「とりまとめ」を、あらためて見てみると、今回の合意の趣旨はあきらかだ。

 

1)(これまで効果的に活用できていなかった)神戸空港を効果的に活用すること

2)(神戸空港の効果的な活用に際しては、)神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港全体の需要拡大に貢献すること

 これが、目的である。

 そのための具体的方法として、

3)国内線は1日の最大発着回数を現在の80回から120回に拡大する。時期については、国内線ターミナルの運用開始時を基本とする。

4)国際定期便の運用を可能とする。その時期は2030年前後を基本とし、1日の最大発着回数を40回とする

5)国際チャーター便については、2025年万博開催時から運用を可能とする

 

 ということが取り決められたのだ。

 そして、今後においては、

6)(神戸空港の)運用時間については、さらに検討する

 こととし、

7)(合意事項の)具体化にあたっては、関西エアポートグループの「経営判断を尊重」し、実施する

 

 と、合意事項の具体化、実施の最終判断は関西エアポートグループの経営判断が優先することが明らかにされている。ここがこの合意の注目すべきポイントである。長々とした文面の、修飾的部分は、おそらくは関西空港周辺自治体の声を受けて付加されたものだろう。しかし、様々に関西空港への配慮を求めながらも、最終的には関西エアポートのグループの経営判断を尊重して、実施されるのだ。関西エアポートは、神戸空港の活用拡大を望んでいる。今回の神戸空港の国際化は、関西エアポートが望んだ結果だと考えられる。

 つまり、今回の合意では、神戸空港の国内線の枠を拡大し、新たに国際線の枠を設け、その実施について、外ならぬ関西エアポートの経営的判断に委ねられることが決せられたのだ。今回の合意の最大の成功者は関西エアポートであるといえるかもしれない。

 

 関西3空港懇談会の終了後に開かれた、座長の関西経済連合会の松本正義会長と、空港運営会社の山谷社長の記者会見で、記者の質問を受け付けて次のようなやりとりがあった。

 ーーこれまで神戸空港は制約で運営も難しかったと思うが、今回の合意は経営上どのようなメリットがあるのか。

 

 山谷「神戸空港が難しかったかというとそうではなく、発着枠・発着時間の拡大で運営権を取得して真っ先にと言わないまでも成果を出せたのが神戸空港だと思っている。神戸空港が劣後するといった発想はまったくない。神戸空港が役割をきちんとはたせればいいと思っている中で、これから新たな検討が始まるということで、ワクワクしているところ」

 

(神戸経済ニュース 2022/9/19)

 

 神戸空港の国際化、規制緩和は、大阪府関西空港周辺自治体が懸念するような、既存の航空需要を奪い合うものではない。これまで果たせなかった神戸市以西の新たな市場開拓等に積極的に取り組み、関西3空港全体の需要を拡大するために行われるのだ。そして、それこそが、失われた「関西国際空港」の本来の目的なのだ。

 神戸空港は、今後、着実に発展する。今はその姿は見えないが、実績が具体的な形をとるようになれば、いずれ皆が理解するところとなるだろう。それまでは、逆風は続くかもしれないが、神戸市は、神戸空港の未来を信じて、決して揺るがないことが大切だ。

 

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