JR三ノ宮駅の大改造

 JR三ノ宮駅は、神戸を代表する中心駅である。1日の乗客数(降車客数を含まず。)は9.7万人(2021年)を超え、兵庫県最大の利用客数を誇る。この数字は、JR広島駅の5.1万人、JR岡山駅の4.7万人をもはるかに超え、JR西日本管内では、大阪駅、京都駅、天王寺駅京橋駅に続く第5位となっている。

 大都市の中心駅は、複数の路線が集積するターミナル駅である場合が多いが、三ノ宮駅は単独の路線の停車駅である。三ノ宮駅東海道本線JR神戸線)に所属し、他のJRの路線とは接続せず、新幹線とも接続しない単独駅である。そのため、三ノ宮駅は上り下り各2線で、ホームは1番から4番までしかない。

 三ノ宮駅付近の線路は高架となっている。ホームはその高架上に設置されており、線路とホームの下部がそのまま駅の構内となっている。三ノ宮駅の北側に接して阪急神戸線の高架が並行しており、その高架下も取り込んでJR三ノ宮駅が構成されている。それでも、単独路線の停車駅という性格上、必然的に駅構内の幅が元々非常に狭い。しかも、近年、駅中の活用として、通路や駅施設をぎりぎりまで削って商業施設を配置したため、駅のコンコースは極めて狭い。

 JR三ノ宮駅は、JR線としては単独駅であるが、その周囲には阪神、阪急、市営地下鉄、ポートライナーの私鉄各線の三宮駅が取り囲むように集積している。その乗降客数の合計は1日70万人を超えていると言われており、それらの乗り換え客がひしめき合い、非常に手狭となっている。さらに、三ノ宮駅は、新幹線新神戸駅神戸空港乗り継ぎの最寄り駅ともなっており、神戸空港の発展に伴い、大きな荷物を持った通行者が目立つようになった。

 

 また、JR三ノ宮駅は歴史ある駅でもある。1874年(明治7年)、大阪駅 - 神戸駅間の開通と同時に開業した。その当時、神戸の中心市街地は西部の兵庫港側にあり、それにほど近い場所に神戸駅が置かれ、新たに発展していた神戸外国人居留地の最寄り駅として三ノ宮駅が設置された。開業当時、神戸駅は大ステーションと呼ばれ、三ノ宮駅は小ステーションと言われた。最初の三ノ宮駅は、現在のJR元町駅の場所に設置されていたが、1931年、東海道本線の高架化とともに現在地に移転した。三ノ宮駅の駅名に「ノ」の字が含まれるのは、その歴史の名残だ。神戸市は「三宮駅周辺の一体的空間づくりが望ましい」との判断から、先行して改称した阪急・阪神と同じ「神戸三宮」への改称の要望をJR西日本に申し入れているそうだ。

 

 神戸市がJR西日本に対し、JR三ノ宮駅(同市中央区)の駅名から「ノ」を除くよう要望している。実在の地名に「ノ」がないことが理由だが、私鉄や地下鉄など6駅ある三宮の名称を統一し、市の中心地として「神戸三宮」に改称したい思惑もあるという。

(略)

 JR西などによると、JR三ノ宮駅は1874(明治7)年に開業。名前の由来は不明だが、JR神戸駅の建設が先に決まったため「三宮」となり、読み間違わないように「ノ」を付けたとされる。

 しかし市は、「三宮が市の中心」ということを分かりやすく示したい考えがあり、三ノ宮駅から「ノ」を除く変更と合わせ、三宮の駅名に「神戸」を付けたい考えがあるという。

(2016/3/12 産経WEB)

 

 三ノ宮駅の駅名は、上記の記事にもあるように、歴史あるものであり、大切にすべき都市の財産だと考える。市の担当者の安易な考えで変えるべきではない。

 

 そうした長い歴史を持つJR三ノ宮駅は、野坂昭如の小説「蛍の墓」の主人公が最期を迎える場所としても知られている。高畑勲監督の同名のアニメ映画でも、特徴のある丸い円柱の姿が忠実に描かれていた。

 

 前置きが長くなった。

 上記のように、三ノ宮駅は、神戸市最大の中心駅であるが、手狭で貧弱である。このことは、他都市を訪れて、帰神した時に、いつも強く感じることだ。特に、近年は、他の大都市の中心駅の整備が進んでいる。広々としたコンコース(自由通路)に、新しい設備が整い、機能的で、かつ、とても堂々とした姿である。この近辺でも、大阪駅、京都駅は言うに及ばず、県下の姫路駅や明石駅と比べても見劣りがしてしまう。三ノ宮駅は、輝かしい歴史を背負う駅であるし、なんといっても、県庁所在都市神戸の中心駅である。現状は、とても、その輝かしい地位にふさわしい姿とは言えない。都市の玄関口の姿は、都市全体の印象を左右するものだ。神戸市は人口150万人の大都市であるが、今ひとつ大都市感がないのは、この三ノ宮駅の姿が大きく影響しているのではないだろうか。もしも、三ノ宮駅が堂々たる風格のある姿になれば、神戸の印象も大きく変わるに違いない。

 現在、新しい三ノ宮駅ビルの建設計画が進められているが、この機会に、ぜひ三ノ宮駅本体も大改造を行い、面目を一新してほしいものだ。

 第一に、行ってほしいことは、三ノ宮駅に十分に広い空間を確保することだ。できれば、現在の構内の施設をいったん全部撤去して、白紙から再構築をするぐらいの大改造を行ってほしい。

 三ノ宮駅には現在、西口、中央口、東口の3つの改札口がある。西口は阪急三宮駅三宮センター街方面につながる経路であり、通行量はとても多い。朝夕の通勤時間帯は、通勤・通学の人々で、まっすぐに通行することも難しい。待ち合わせをする人々も多く、いよいよ手狭である。できれば現在の2~3倍の広さに拡幅をしてほしい。

 中央口と東口の改札に挟まれた内側が駅構内であるが、これがまた非常に狭いので、ここをやはり2~3倍程度に拡大してほしい。中央口の通路は、現在の三ノ宮駅で最も広い空間であるが、これにしても他の大都市の駅と比較すると大きく見劣りがする。ここは、市営地下鉄三宮駅や、阪神三宮駅、地下街(さんちか)へ通じるメインストリートであるから、通行量の確保と同時に、大空間を確保してほしいところだ。できるならば、現在の中央口から西側のエリアを一旦すべて撤去して、阪急や市営地下鉄と自由に行き来できる広大な広場を確保してほしい。

 現在、特に狭いのが東口で、東口の改札を出ると、正面すぐに旅行社の店舗が迫り、南側に転じるとすぐにポートライナー三宮駅に接続する階段がある。この付近は、ポートライナーの混雑も合わさって、大きなトランクを運ぶ人々の往来が多く、混雑感がひどい。少なくとも、現在の2~3倍ぐらいには拡幅してほしい。この東口の東側には、旅行社の営業所や飲食店、パチンコ店などが切れ目なく連なり、高架下を南北に横切る道路に突き当たるまで続いている。これらをいったんすべて見直し、もっと広く、整然とした空間に変えてほしい。その道路を越えたさらに東側の高架下には神姫バスの大規模な中長距離バスターミナルがある。そこから三ノ宮駅の改札に向かって人波が続々と押し寄せてくる状況で、この通行量もかなり多い。現在、三ノ宮駅東側の旧中央区役所の跡地に、西日本最大級のバスターミナルが建設されつつある。これが完成して、神姫バスのバスターミナルも移転すれば、ここに新しい三ノ宮駅の東口を開設してほしい。新東口の開設は、三宮東部へのアクセスをスムーズにすると同時に、現在の西口や中央口の混雑緩和にも役立つだろう。駅の混雑は都市機能のボトルネックになりかねない。都市の発展のために都市施設の十分な容量を確保すべきだ。

 三ノ宮駅は、もともとはターミナルとして設計されたものではなく、東海道本線の停車駅にすぎなかった。しかし、現在、周囲には阪急、阪神、市営地下鉄、ポートライナー三宮駅が集積し、今後、中国、四国地方とを結ぶ西日本最大級のバスターミナルが建設され、規制緩和によって大幅に増便され、国際化が実現する神戸空港および、東海道・山陽・九州新幹線のすべての列車が停車する新神戸駅、そして、これらを結ぶアクセス線が建設されると、もはや三ノ宮駅が果たす役割は「停車駅」ではなく、西日本最大級の「ターミナル駅」であろう。神戸市は、そうした将来像をJR西日本とも共有し、それにふさわしい堂々たる三宮駅を構築するよう働きかける必要がある。