神戸空港 国際線就航が合意(2022.9.18 関西3空港懇談会)

 大阪府兵庫県など地元自治体の首長や関西経済連合会など経済界トップなどによる「関西3空港懇談会」が18日、大阪市内で開かれ、2030年ごろをめどに神戸空港(神戸市)に国際線の定期便を就航させることで合意した。
 発着回数は1日最大40回とする。大阪・関西万博が開催される25年には、国際チャーター便の受け入れを可能にする。国内線の発着枠も現在の1日80回から120回に広げる。

(以下略)

朝日新聞 2022/9/18)

 

 2022年9月18日は、神戸にとって歴史的な日となった。

 関西の空港のあり方を決める関西3空港懇談会において、神戸空港に国際線の定期便を2030年頃をめどに就航させることで合意が得られた。それによると、発着回数は1日最大40回、2025年には国際チャーター便の運行も可能となる。国内線の発着枠も現在の1日80回から120回に拡がる。

 建設構想から、開港、そして現在に至るまで、すさまじい逆風にさらされ続けた神戸空港が、ついに国際定期便を就航させることについての正式な合意を得られた。就航までには、まだしばらく時間はかかるが、神戸空港の国際空港化が実現することとなった。

 国際線の発着回数は1日40回とされ、さらに国内線の発着枠も120回に拡大され、2006年2月の開港から、ずっと発着枠は1日60回に押さえ込まれ続け、開港から10年以上経過した2019年5月の関西3空港懇談会で、ようやく1日80回に拡大されたところである。それからわずか3年、コロナ禍もあってまだその効果も十分に実績として示されていない状況の中で、神戸空港規制緩和は非常に急ピッチで進んだことになる。今回の合意では、国内線1日120回、国際線1日40回と合わせて1日160回となり、開港当初から2.7倍に拡大することになる。規制緩和前の乗客数をざっと300万人とすると、単純計算でも800万人を超える乗客数となり、この数字は、コロナ禍前の鹿児島空港をも優にしのぎ、中部国際空港に次ぐ規模となる。これはもう、堂々たる大空港である。ついに神戸空港は神戸沖国際空港として、しっかりと地歩を確立することができたのだ。

 今回の合意は、懇談会の開催に先立ってその内容が知れ渡るところとなった。それを受けて、関西空港周辺自治体を中心に反対の声がわき起こり、泉佐野市長にいたっては「大反対」という強固な意見の表明があったが、当初の予定通りに決着した。大阪府知事やそれに従う兵庫県知事はあくまでも「関空ファースト」と表明している。神戸新聞はこれを「薄氷の合意」(神戸新聞 2022年9月18日)と表現している。この状況をどう理解するべきだろうか。

 要は、関係者の関西3空港問題に対するこれまでの考え方に大きな変化があったわけではないということだ。しかし、合意は成った。これから言えることは、関西の関係自治体の考えで事は決まっているのではないということだ。今回の神戸空港国際化を望んでいる者は、関西エアポートであり、その意向を受けた関西経済界なのだと考える。つまり、関西エアポートおよびそれを構成する資本の要請なのだ。方向性はすでに決まっていた。大阪府知事兵庫県知事の発言は、反対者の意向に配慮したものであろう。神戸空港の国際空港化は着実に、かつ急ピッチで進められていくことになるだろう。

 では、関西エアポート神戸空港に何を求めているのだろうか。それは、おそらくは西日本における航空需要の独占である。現在の関西国際空港は、建設の紆余曲折から、国土軸から大きく南に外れた位置に建設されてしまった。そのため、関西国際空港は、本来、西日本全域の国際空港でなければならないところ、大阪南部を後背地とする「関西地方の国際空港」となってしまった。それを補完することが神戸空港に期待されている役割だろう。つまり、中国、四国、九州と高速、大容量の鉄道、高速鉄道、道路網で結ばれた神戸空港は、それらを後背地とする真の意味での「関西国際空港」の役割を果たすことが期待されている。関西エアポートはこれらの需要の独占を目指しているのだと考える。

 

 このあたりの関係者の思惑については、当日の大阪府知事関西エアポート社長のそれぞれの記者会見でのコメントが興味深い。

 神戸空港の国際線開設について、大阪府の吉村洋文知事は関西国際空港の発着回数である年間30万回を超えた分について、神戸での離発着に回すと主張したという。これについて同じく記者会見した空港運営会社である関西エアポートの山谷佳之社長は記者の質問に「30万回(の離発着)を達成して、その後どうするというふうなことは(合意事項には)言及されていない」と述べ、「30万回」にこだわらず航空機が混雑する時間帯は神戸で離発着させるダイヤを組むことなどが、関西全体の航空需要拡大に寄与するとの見方を示唆した。

(神戸経済ニュース 2022/9/18)

 

 大阪府知事は、神戸空港の国際線は「関西空港の発着回数年間30万回を超えた分」を充てるとの考えを述べたが、関西エアポート社長は「30万回(の離発着)を達成して、その後どうするというふうなことは(合意事項には)言及されていない」と明確に否定している。

 今後は、関西エアポート社長の言うところの合意事項に基づいて神戸空港の拡張、国際化が進められていくだろう。それは、もはや押しとどめられることはなく、関係者の意向をも超えて進んでいくことになるだろう。

 

 神戸市の久元喜造市長は18日に開いた関西3空港懇談会の終了後に記者団の取材に応じ、2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)からの団体旅行などでの国際チャーター便就航、30年前後からの国際定期便就航で合意したことについて「長年の悲願に道筋が付いたということで、率直によろこんでいる」と語った。「兵庫県からのバックアップ、経済界からの全面的なご支援をいただいて、神戸空港としては非常に大きな成果が得られた」「これから神戸空港は新たな段階に入る」と強調した。

(神戸経済ニュース 2022/9/18)

 

 会合の終了後の記者会見で、久元神戸市長は「これから神戸空港は新たな段階に入る」と述べた。

 今後の神戸空港の課題としては、ターミナルビルの拡張、交通アクセスの充実とがあげられる。

 今回の合意の中で、「1日120回への発着回数引き上げは、新たに整備が見込まれる国内線ターミナルの運用開始時を基本にする」とされており、ターミナルビルの建設は必須条件とされている。したがって、新しい空港ターミナルの建設が行われることになるだろう。これについて久元市長は「関西エアポートとよく相談をしながら、どのように進めるか(考えたい)」「これの検討は、きょうが出発点なので、そのための検討に着手したい」と述べたそうだ。

 交通アクセスの充実については、現在、アクセス道路の改善を中心に進められているが、やはり、なんらかの交通機関の導入は不可避だろう。これに対して、久元市長は、9月12日に行われた神戸商工会議所からの神戸市政に対する要望の場で、神戸空港新神戸駅を結ぶ新たな鉄道については「4月に専任の担当部長を置いて商工会議所と一緒にやっていこうということで進めている」(神戸経済ニュース 2022/9/12)と述べている。

 

 今後就航する国際線の就航先についても話題となっている。

 2030年をめどに開港以来初めて、国際線の定期便が就航する見通しとなった神戸空港。実際に就航した場合、海外のどこの国まで行けるのだろうか。
 関係者によると、同空港の滑走路の長さは2500メートル。国際便が飛ぶ関西空港(4千メートルと3500メートルの2本)に比べるとかなり短い。大量の燃料を積んで遠距離を飛ぶ機体を離陸させるためには長い滑走路が必要で、2500メートルなら中型機による近距離便が現実的という。
 神戸空港に就航しているのは主に米ボーイング社のB737-800型。2500メートルの滑走路なら航続距離は約5千キロという。これを単純に計算すれば、韓国や台湾、中国・上海のほか、グアムやサイパンベトナムやタイ、シンガポールまで到達できるとみられる。

(以下略)

神戸新聞 2022/9/22)

 

 神戸空港の滑走路の長さは2500メートルであるが、実は、一部の長距離便を除いて就航が可能だといわれている。中国、韓国、台湾などの近距離国際便が中心となると予想されるが、他の2500メートル級の国内空港での運航実績から考えると、シンガポール、オーストラリア、ハワイ、インドなどの便も就航が可能であり、神戸は台湾やインドなどとも関係が深いので、十分考えられるだろう。

 

 今回の関西3空港懇談会は、神戸空港の将来とともに、神戸の将来についても大きな意味をもたらすものだ。神戸は、幕末以降、神戸港とともに我が国の海外との窓口として発展してきた。神戸のアイデンティティはやはり、国際都市であるということだ。神戸の近年の元気のなさは、この国際都市のアイデンティティが失われ、その一方で、地方のブロック都市でもないという点にあった。今回、神戸空港の国際化により、神戸は再び、西日本の諸都市が有さない海外との窓口という役割を担うことができるようになる。ブロックを超える超広域都市としての神戸の意義が再確認されることになる。それは、再び神戸に活力をもたらし、大きな発展をもたらすことになるだろう。

 

 

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