神戸空港のアクセスについて考える(1)

 神戸空港に国際定期便が就航することになり、2030年頃には1日の発着回数も現在の国内線80回から、国内線120回、国際線40回へと、大幅な増加が見込まれることから、これに応じたアクセス増強を求める声が高まっている。

 先頃、神戸新聞に、次のような記事が掲載された。

 

神戸空港の国際化、朗報の裏に輸送パンクという消せない不安 ポートライナーは混雑が常態化

 

 9月18日、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の国際化が決定しました。これにより神戸空港の利用者が増えることが予想されますが、一方では利用者増加に伴う懸念点もあります。

 (略)

■問題は空港アクセスの強化

 神戸空港利用者の増加は歓迎すべきニュースですが、懸念点も存在します。それが空港アクセス、特にポートライナーの増強です。
 (略)
 国土交通省によるとポートライナーの2019年度最混雑区間は貿易センター→ポートターミナル間(8:00~9:00)で、混雑率は126%。最もこの混雑率は1時間あたりの平均値なので、ピンポイントではより混雑率が高くなります。
 (略)

 現在はコロナ禍により減少はしていますが、今後、利用者数がコロナ禍前の水準に戻り、さらに国際線による空港利用者が増えると、輸送がパンクする恐れがあります。
 (以下略)

 

神戸新聞 2022/10/7)

 

 

 神戸市長は、9月20日の記者会見で、神戸空港のアクセス増強に関して次のように語った。

 まず、アクセスについては、空港の連絡橋が2車線しかなかったのを4車線にするということで、これはもう工事が順調に進んでおりまして、令和5年度には完成できるのではないかというふうに思います。また、新神戸方面の道路については、生田川右岸線の整備を進めていますし、あと、少し時間がかかりますが、港島トンネルの北伸ですよね。新神戸トンネルの南伸と言ってもいいかもしれませんが、この新たなアクセスについても現在、国土交通省と協議をしているところです。

 

(神戸市長記者会見 2022/9/20)

 

 これは今、様々な検討を行っておりますが、ポートライナーをどうするのか、あるいは新たな新線を建設する、これは相当莫大な経費が要りますから、これについては検討は行っておりますけれども、まだ方向性は見えてはおりません。

 

(神戸市長記者会見 2022/9/20)

 

 これによると、現在、神戸市が進めているのは、空港連絡橋の4車線化、生田川右岸線の整備、港島トンネル北進等の道路交通網の整備である。一方、ポートライナーの輸送力増強、あるいは新たな新線の建設については、検討はしているが、費用が莫大となることから、まだ方向性は出ていないようだ。

 

 筆者は、神戸空港と三宮、新神戸駅とを結ぶ新アクセス線の建設を主張している。その理由は次の通りである。

 

(1)現在においてもポートライナーの著しい混雑が発生しており、上記の神戸新聞の記事のように、神戸空港の増便と国際化による状況の悪化を懸念する声が生じていること

 空港は、交通機関として、それに至るアクセスも合わせて機能するものであるから、アクセス線に過度な混雑が生じることになれば、空港そのものの機能についての評価、評判をおとしめることになりかねない。混雑だけならともかく、積み残しが慢性的に発生することがあれば、アクセスのための所要時間にも関わり、空港の機能そのものを損なうことになる。今後、ますます発展していかなければならない神戸空港にとっては、アクセスがボトルネックになるようなことがあってはならない。また、アクセスの混雑をさけるために、沿線の他の利用を制限するようなことになれば、本末転倒というべきだ。十分な輸送力を確保すべきである。

 

(2)神戸空港は新幹線の駅と最も近接する空港の一つであり、それが神戸空港の最大の特徴であり強みであると考えられること

 神戸空港は新幹線新神戸駅と距離的には近いが、現状では、新神戸~三宮は市営地下鉄、三宮~神戸空港ポートライナーと、2つの交通機関を乗り継がなくてはならず、その距離的な近さが十分に活かせているとは言えない。

 試みに、路線検索ソフトを使って、新神戸駅到着から神戸空港到着までの時間を算出すると、朝方の運行本数が多い時間帯であっても、60分近い所要時間が表示される。(下記 試算1)岡山~新神戸はのぞみ号利用であれば所要時間はわずか36分であるにもかかわらず、神戸市営地下鉄ポートライナーを乗り継いで神戸空港に到達できる時間は、1時間35分となる。これでは、神戸空港の本来持っている利便性が十分活かされているとは言えない。

 参考に、岡山~関西空港で同様の試算(下記 試算2)をすると、所要時間は2時間18分となる。中国、四国地方からの集客を目指すべき神戸空港としては、関西空港に対して十分な優位性が発揮できているとは言いがたい。新神戸駅から神戸空港までの所要時間の短縮を図るべきである。乗車中の時間だけではなく、乗り換え、待ち時間を含めて、あらゆる部分で効率性を追求し、1分、1秒の時間短縮を目指す気持ちで改良に当たるべきだ。都心から長距離交通拠点までのアクセス時間は、都市の「性能」の重要な指標だ。都市の性能で、他都市に圧倒的な差をつけなければならない。先ほどの例だと、岡山駅から神戸空港までは1時間以内の到達時間を目指すべきだろう。

 

(試算1)岡山を7時に出発して神戸空港に到達(2022年10月31日)

岡山    7:06

      (新幹線 36分)

新神戸   7:42

新神戸   7:56

      (地下鉄  2分)

三宮    7:58

三宮    8:10

      (ポートライナー 18分)

神戸空港駅 8:28

      (徒歩)

神戸空港  8:35(新神戸到着から53分)

 

(結果)出発後 1時間35分( 95分)、乗り換え2回、料金5,720円

 

(試算2)岡山を7時に出発して関西空港に到達(同)

岡山    7:06

      (新幹線 49分)

新大阪   7:55

新大阪   8:18

      (JR特急 55分)

関西空港駅 9:13

      (徒歩)

関西空港  9:18(新大阪到着から83分)

 

(結果)出発後 2時間18分(138分)、乗り換え1回、料金7,310円

 

(3)神戸空港が、神戸の今後の発展の柱であること

 空港アクセスは、単に空港への乗り継ぎだけが役割ではない。むしろ、大切なのは、空港を利用して、神戸を訪れる人々を増加させることだ。新神戸駅神戸空港が1本の路線で結ばれると、その沿線は、航空機、新幹線、どちらからも利用がしやすい場所となる。仮に、新神戸神戸空港が所要時間20分で結ばれるならば、その沿線上は、新幹線からも、航空機からも20分以内で到達できる場所となる。つまり、空港、新幹線でつながる日本中の人々が、神戸に来れば、20分以内に目的地に到達できる場所となる。こうした場所には、どのような施設の立地が考えられるだろうか。それは、日本各所から、大勢の人々が集まる施設だ。たとえば、会議場や展示場などのコンベンションセンター、コンサートや舞台、スポーツ会場などが考えられる。それらの施設に日本中から人々が集まり、終了後直ちに散会する。もしも、そのような施設ができるなら、人々にとって便利で利用がしやすく、多くの利用機会に恵まれることだろう。そのような人々が集まりやすい場所は、ビジネスにとっても適地であろう。そのような高度な利便性の下に、西日本随一のビジネスセンターを神戸に作ることが筆者のビジョンである。だから、新神戸神戸空港の間に十分な輸送力を確保すべきだ。現在、神戸市が進めているバス路線の構築は、単に空港へ人を送り込むためだけの手段になりかねない。空港へ人々を円滑に送り込むのはもちろんのこと、新神戸駅神戸空港の間に、双方に自由に行き来ができる空間を設けることが重要だと考える。