国土軸の視点から見る関西空港と神戸空港

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(新幹線駅から空港までの接続条件の比較)

新大阪駅関西空港 60.9㎞ 料金1,360円 乗車時間 77分

新神戸駅神戸空港  9.5㎞ 料金  540円 乗車時間 21分

 

 関西国際空港神戸空港を地図で眺めると、やはり神戸空港の立地が大変優れており、逆に、関西国際空港の立地が南にかなり偏っているのがわかる。

 国土全体を見た場合、京都、大阪、神戸、岡山、広島、福岡等の大都市の連なりが「国土軸」と言われるもので、国土軸を中心に我が国の交通体系は構成されている。地図を見ると、この国土軸から大きく外れた場所にあるのが関西空港で、国土軸に沿う位置にあるのが神戸空港であることがよくわかる。冒頭に示した接続条件の比較は、両者の国土軸からの利便性の相違を如実に表している。

 大阪だけの視点でみると両者の差はさほどではないが、西日本全域から見るとその差は歴然としている。特に神戸以西のユーザーは、どうして空港を利用するのに、大阪湾を半周しなければならないのかという疑問が自然に起きる。神戸以西のユーザーにとって、最寄りの広域交通機関である新大阪駅まで到達して、そこからさらに少なからぬ費用をかけて1時間半近くの移動をしなければならないのでは、とても便利とは言えないだろう。

 国土全体を考え、西日本全域の国際航空需要に応えることを考えるならば、やはり国土軸に沿った現在の神戸空港の場所に関西国際空港を建設するべきであったのだ。一方、大阪南部のローカル需要を満たすために、ローカル空港として関西空港を建設するのが、最適な解であっただろう。

 

 関西国際空港は西日本全域をカバーする「ハブ空港」であるという意見があるが、ハブ空港と考えるならば、そもそも、国土軸から大きく外れる関西空港はその適格性を満たしていない。つまり、泉州沖に立地を決定した時点で、西日本のハブ空港というのは本来あり得ない。したがって、周辺の競合する空港の利用を制限しても、関西空港ハブ空港にはなれないのだ。そのように考えると、泉州沖の1カ所に航空需要を集中させるべきであるという主張に合理的な理由はないから、関西圏の人口が集中する大阪湾北部に近い神戸沖に空港を立地させることは合理的な選択だ。

 実際、関西国際空港泉州沖と決定した昭和49年の航空審議会答申を読むと、関西国際空港の建設の理由として、「大阪国際空港のみでは関西地区における航空輸送需要の増加に対処することができず、新しい空港を建設する必要がある」と述べ、「さしあたり早急に整備されるべき最小の規模として判断」されたのが現在の泉州沖の関西国際空港である。したがって、その当時、関西国際空港ハブ空港にという考え方もなかったし、同答申でも、将来的に「新空港の沖合にもう1単位又は他の地点に別の空港を設けることも技術的に可能である」として、今後、関西地方の航空需要が増加した場合には、他の地域に立地させることも想定されていたことがわかる。ところが、その後、関西空港関係者は、「ハブ空港論」を持ち出してきて、航空需要を泉州沖1カ所に集中させることが関西全体の利益になると主張し、航空需要の独占を試みるようになった。在阪報道機関の地元贔屓の翼賛的な報道姿勢もあって、いつのまにかそれが当然の前提であったかのように流布することになってしまった。

 現在の航空政策に携わる者、特に神戸空港規制緩和を考える者は、そうした過去の経緯をよく検証して議論に臨むべきだ。

 

 

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