関西経済連合会の松本正義会長は、2025年の大阪・関西万博に合わせて国際チャーター便の就航が予定される神戸空港について、「(新幹線の)新神戸駅と空港が一つの路線で結ばれれば、西日本の利用者がさらに増えるだろう」と期待した。同空港は30年前後に、国際定期便の就航を目指している。
神戸新聞社のインタビューに応じた。松本氏はインバウンド(訪日客)の着実な増加を念頭に「神戸空港が国際化すれば、兵庫県以西の観光に大いに寄与するだろう」と述べた。その際のポイントとして、空港と新幹線の円滑な乗り継ぎを実現する交通手段の必要性を挙げた。
(神戸新聞 2024/1/5)
新年1月5日の神戸新聞が、関西経済連合会の松本正義会長が、同社のインタビューで、神戸空港について「新神戸駅と空港が一つの路線で結ばれれば、西日本の利用者がさらに増えるだろう」と期待を示したと報じた。
松本会長が言う「新神戸駅と神戸空港を結ぶ一つの路線」とは、神戸商工会議所が予て神戸市に実現を要望している『新神戸~三宮~神戸空港間を結ぶ地下鉄導入』と同趣旨と思われる。
この新神戸駅と神戸空港を結ぶ路線(鉄道)については、様々な方面から要望が上がっている。
神 戸 商 工 会 議 所 令和6年度 神戸市政に対する要望
https://www.kobe-cci.or.jp/pdf/20230925_youbousho.pdf
神 戸 商 工 会 議 所 令和6年度 神戸市政に対する要望(抜粋)
3.神戸空港国際化に向けた対応
昨年9月の関西3空港懇談会で合意を得て、神戸空港国際化に向けた道筋が示された。2025年国際チャーター便の運用開始、2030 年前後の国際定期便就航に向けて、ターミナル整備等受入態勢に万全を期し、運用開始時の稼働率を高めるとともに、長期的な視点をもって神戸空港を成長発展させるため、以下の施策に取り組まれたい。
(1)神戸空港の利用促進ならびに規制緩和に向けた働きかけ強化
神戸空港国際化の認知度向上に向けたPR施策の展開
神戸以西の需要獲得に向けた積極的なプロモーション活動
2030年前後の国際定期便就航を見据えた国際チャーター便の誘致促進
発着枠拡大・運用時間延長、ひいては規制撤廃に向けた働きかけ
国際チャーター便・プライベートジェットの円滑な受入れに向けたCIQ体制充実の働きかけ強化
(2)空港ターミナルビルの整備強化
新ターミナル整備の着実な推進
2030年前後の国際定期便就航を見据えた新たなターミナル整備の早期検討
カーボンニュートラルエアポート実現に向けた取り組み強化
(3)南北アクセス強化に向けた地下鉄導入の早期検討
抜本的な南北アクセス強化策となる『新神戸~三宮~神戸空港間を結ぶ地下鉄導入』について、神戸市が主体的に検討を進めること
生田川右岸線道路改良工事、新神戸トンネル南伸事業の早期完了に向けた予算措置
《会員企業からの意見》
・神戸空港の機能強化については、国際線定期就航に加えて国内線拡充など、中核空港としての整備を遅滞なく進めてほしい。また、空港へのアクセスも含めて、特に南北のアクセスとしての地下鉄整備や新神戸駅へのJR在来線接続などの鉄道ネットワークの強化も検討いただきたい。【建設業】
・神戸空港について、機能強化・利便性の向上もさることながら、2025年には開港20周年を迎え、グローバルな玄関口となるべく、環境等にも配慮したシンボリックな存在となる必要がある。【エネルギー】
・MICE誘致と神戸空港国際定期便就航獲得に向けて、ポートアイランドと市街地のアクセス強化が求められるため、より充実した交通インフラを整備いただきたい。【ホテル業】
(令和5年9月 神 戸 商 工 会 議 所 令和6年度 神戸市政に対する要望(抜粋))
神⼾空港〜三ノ宮・新神⼾連絡鉄道プロジェクト
【神戸空港の機能強化と関西三空港連携】
~関西ルネサンスに向けた提言~
(一般社団法人 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来プロジェクト研究会(2022年3月))
http://www.japic.org/information/assets_c/2022/03/20220331_16.pdf
この路線を開設することの意義は次の3点にまとめられるだろう。
(1)新交通ポートライナーの輸送力の限界に対する輸送力の拡大
(2)神戸空港の後背地の拡大による需要拡大
(3)神戸市の都心の拠点性の向上
(1)については、特に詳しく論じるまでもないだろう。神戸空港の規制緩和、国際化が今後急激に進展をしていくので、現在でも容量をオーバーしている神戸空港のアクセスの拡大を図ることが急務となっている。
(2)については、今回の松本会長の発言はこれに当たるが、神戸空港は福岡空港を除くと、新幹線駅と最も近接する空港である。新神戸駅は、東海道・山陽新幹線、九州新幹線の全列車が停車する重要な駅である。今後、神戸空港が国際化した場合に、この新幹線を使って神戸空港から海外に出かけることが確実に予想される。そして、今後さらに、神戸空港の規制緩和、拡張につながっていくだろう。
(3)については、神戸という都市の利便性を高め、拠点性を高めることになるだろう。(2)については、極端に言うと旅客が神戸市を通過するだけだが、国内、海外から人が集まるのに便利であるという特性を活かし、神戸自身が人々が集まる目的地となり得るということだ。つまり、新幹線と空港という二つの長距離交通の結節点として、たとえば、企業の中枢管理部門や、コンベンションセンター、大型アリーナなどの集客施設を集積させることが可能となるだろう。
今回の松本会長の発言は、(2)の神戸空港の需要拡大の観点からの話であるが、神戸市にとっては、むしろ(3)の方が重要である。
新神戸駅と神戸空港を結ぶだけであれば、バスでも良いように思われるかもしれないが、大切なのはその両交通機関を用いて、国内や世界から神戸に人を集めることだ。バスであれば、両者をダイレクトにつなぐだけであり波及効果は少ない。しかし、両者を鉄道で結ぶならば、新幹線と空港との2ウエイアクセスが可能な長大な沿線を生み出すことができる。このきわめて利便性の高い沿線に、先述の企業の中枢管理部門や、コンベンションセンター、大型アリーナなどの集客施設を集中的に立地させ、これらを自由に往来できるような高度の機能性を持つ空間を設けるべきであるというのが筆者の提案である。
この新神戸・三宮・神戸空港を結ぶ路線は、神戸に新しいフロンティアをもたらすものだ。人口減少に悩まされている神戸に新たな上昇気流を巻き起こし、神戸復活の起爆剤となるはずだ。神戸にとって必ずや大きな利益をもたらすだろう。
地下鉄との路線競合を指摘する声もあるが、交通拠点に複数の交通機関が接続することは当然のことだ。
新神戸駅と神戸空港とを結ぶ鉄道については、今回の発言だけではなく、すでに多くの要望が神戸市に出されている。神戸商工会議所の要望もその一つだ。都市開発で、これだけ多くの期待が寄せられている計画は少ないのではないだろうか。
巨額の費用がかかるだろうが、沿線の開発効果も考え、是が非でも実現をすべきであると考える。