関西3空港懇談会(2022.1.13)の開催結果について

 関西、大阪(伊丹)、神戸空港の役割を官民で話し合う「関西3空港懇談会」(座長=松本正義関西経済連合会会長)が13日、大阪市内であった。神戸空港については、次回会合までに神戸市と3空港を運営する関西エアポートが共同で、国際化に向けたあり方を検討する方針を確認した。

(以下略)

神戸新聞 2022/1/13)

 

 1月13日、関西3空港懇談会が開催された。

 この件について、主要各紙が報じているが、今回の懇談会の結果について整理してみよう。

 各紙で報じているところを総合すると、次のとおりである。

(1)「関空の発着枠拡大」や「神戸空港の国際化」の方向性を再確認

(2)神戸市と関西エアポート神戸空港の国際化に向けた整備の方向性をまとめ、次回の会合で報告する

 

 以前にはほとんど「禁句」とさえなっていた「神戸空港の国際化」について、関西の政界、財界の主要な人物が集まる関西3空港懇談会で、その方針を改めて確認し、神戸市と関西エアポート神戸空港の国際化に向けた整備の方向性をまとめ、次回の会合で報告すると合意されたことの意義は非常に大きい。つまり、公に、神戸空港の国際化の議論ができるようになったということだ。

 では、「整備の方向性をまとめる」とは、どういうことを意味しているのだろうか。

 

 懇談会の座長を務める関経連の松本会長は、懇談会後の記者会見で、「万博もあり、関西の活性化もあり、次回(の懇談会)にも神戸空港の国際化をどうするかということは真剣に話し合う必要があり、空港へのアクセスも含めて神戸市から話があると思っている」、「国際空港だからターミナルを作る必要もあるし、西の方のカスタマーのポテンシャル(可能性)を大きくするため」の施策などが必要と指摘。「神戸市も重要なポイントをクリアしないといけない」と強調したと報じられている(神戸経済ニュース 2022/1/13)。 

 関経連の松本会長が求めていることは、(1)空港アクセスの能力強化と(2)国際線ターミナルの設置、(3)西の方のカスタマーポテンシャルの拡大の3点と思われる。これらの3つの重要なポイントについてクリアしなければならないと述べている。つまり、こうした需要ポイントを含めて、方向性をまとめ、次回に報告するということだ。

 

 この点について、読売新聞も次のように報じている。

(略)

 神戸空港は神戸市が施設を所有し、関西エアが運営している。現在は国内線のみに対応しており、国際線の就航には旅客ターミナルの改修が必要になる。空港に乗り入れるポートライナーや周辺の道路は混雑が目立ち、スムーズな交通手段の確保も課題となっている。

 市と関西エアは、これらの課題への対応策をまとめる

(略)

(読売新聞 2022/1/13(抜粋))

 

 

 関経連の松本会長は、神戸空港の国際化を中期的な取組に取り上げた2019年5月の3空港懇談会後にも、同様の積極的な発言をしており、神戸市の「背中を押す」姿勢は一貫している。したがって、これらの発言は、決して思いつきやリップサービスではなく、神戸空港の国際化が関西経済界の重要な課題になっているということを表していると考えられる。そしてそれを求めているのは、おそらく関西エアポートであると考える。関西エアポートは、関西国際空港の運営に加えて神戸空港の国際化により西日本全域における航空需要の拡大と独占を狙っており、関経連はそれを代弁しているのだと推測する。

 

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 その後、新型コロナウイルス禍の発生など、環境が激変し、神戸空港の国際化については、関西エアポート側からも先送りの意向が示されていた。

 

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 現在、新型コロナウイルスを克服できたわけではないが、全く先が見通せない状況からは抜け出せた感があり、コロナ収束後に向けて議論をする環境が整ってきたと理解してよいだろう。神戸市は、この機会を逃さず、神戸空港国際化の具体的な姿を提示する必要がある。

 

 その中心的役割を担う神戸市の久元市長は、懇談会終了後の取材で、今回の懇談会で、神戸市が空港運営会社の関西エアポートと共同で国際化を含む神戸空港のあり方について検討したうえで、次回の同懇談会で報告することで合意したことについて認め、「スピード感を持ってやりたい」と話したと報じられている(神戸経済ニュース 2022/1/13)。

 久元氏は、神戸空港が国際空港になった際の姿をどう想定するかについては、「滑走路を延長することはない」、「ターミナルは関西エアポートとの役割で、同社と相談をしながらだが、国際線ターミナルが必要という認識は持っている」と話したということだ。

 つまり、滑走路の延長は考えないが、国際線ターミナルについては必要と考えているようだ。

 2500メートル級の滑走路は短いように感じられるが、2500メートルでも、一部の長距離便を除き、国際便を就航させることは十分可能だから、現在の航空機の技術進歩や機材の小型化の趨勢も考え合わせると、優先順位は高くないだろう。

 

 

 では、神戸市が提示すべき神戸空港の国際化の姿はどのようなものだろうか。

 それは、西日本全域から国際航空需要を集め、西日本全域へ送り出す真の意味の「関西国際空港」である。これまでも当ブログでたびたび述べてきたが、関西国際空港は建設場所決定を巡る紆余曲折があり、関西の中心部から大きく外れた南に偏った立地となってしまった。その結果、東京、名古屋、京阪神、広島、福岡を貫く国土軸から大きく南に外れた位置になってしまった。関西3空港問題の混迷はこの立地場所の選定から始まる。すなわち、現関西国際空港の新幹線への接続は新大阪駅が最寄り駅となるが、そのアクセスに1時間半近くの時間が必要であり、西日本からアクセスする場合には、大阪湾を半周しなければ到達できない。その不便さから利用が伸びず、本来、西日本全域を後背地とする真の意味での関西国際空港であるべきところが、大阪や和歌山など、関西地方南部の「関西地方の国際空港」にしかなれていない。関西空港へのアクセスの改善については、たびたびプランは打ち上げられるが、なかなか実現は容易ではないのが現実だ。それを補完するのが神戸空港に期待されている役割である。

 神戸には、新幹線、在来線の大動脈が集まり、今後、西日本最大級のバスターミナルも建設される。それらとアクセスができれば、まさに西日本全域から利便性のよい国際空港が実現するだろう。

 国際線のターミナルは建設する方向性がすでに示されている。あとは、神戸空港と新幹線、在来線、バスターミナルとのアクセスをどうするかが課題である。

 神戸市には、今、大きな期待を寄せられている。その役割は、振り返ると、神戸市が明治時代以降、この国で果たしてきた役割である。この機を逃さず、大きな絵姿を描いてほしい。この大事業は神戸市だけで行えることではなく、経済界全体の参画が必要だ。その期待に応えられるかどうかに神戸市の未来がかかっている。

 次回の開催時期について、松本会長は「夏前には」との見方を示している。スピード感のある対応が必要だ。

 

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(資 料)第11回関西3空港懇談会 報告(全文)(2022/1/13 関西3空港懇談会)

 

2022 年1月 13 日 関西3空港懇談会

 

第11回関西3空港懇談会 報告

 

1.基本方針
・ワクチン接種の進捗など、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた対応が進む
一方で、新たな変異株の発生等により、関西3空港は依然として厳しい状況が続
いており、とりわけ国際線を主力とする関西空港は顕著である。
・新型コロナの収束により、入国規制が解除されるタイミング等を捉え、速やかに
航空ネットワークや需要を回復させ、併せて、2025 年までに、万全な空港受入体
制を整えることにより、国家プロジェクトとして、関西一体で取り組む「2025 年
大阪・関西万博」の成功を期すとともに、さらなる関西の成長へと繋げていかな
ければならない。
・こうした共通認識のもと、まずは、今年度末に関西観光本部において策定が予定
されている「関西ツーリズムグランドデザイン 2025」などをベースに、迅速に需
要回復を図るための取組を準備し、関西の官民が一丸となって、進めることを確
認した。
・また、第9回懇談会取りまとめで合意した取組である関西空港の発着容量の拡張
に関する検討、神戸空港のあり方の検討などを着実に進めていくことを改めて確
認した。


2.各空港に関する報告と取組方向
(1)関西空港
・T1リノベーション、災害対応力強化などの取組について、関西エアポートより進
捗状況の報告がなされた。
・コロナ収束後を見据え、国際拠点空港として、一層の競争力向上と機能強化を図
っていく必要性を確認した。
・新型コロナ発生前の 2019 年実績等を踏まえ、2025 年万博開催時とその後の成長
に適切に対応できるよう、国土交通省に対し、現行空域における最大発着回数の
検証を依頼した。
・調査委員会による将来航空需要の予測については、現時点においても新型コロナ
の動向等、見極めが困難であることから、次回(第 12 回)懇談会への報告に向け
て精査を継続することとした。


(2)伊丹空港
関西エアポート社から定時運航率向上の取組状況等について報告がなされた。
・引き続き、都市型空港として、地域社会との共生を基本に、環境改善と利用者の
利便性向上に努めることとした。


(3)神戸空港
関西エアポート社及び神戸市から国内線発着枠・運用時間の拡大に対応した取組
やアクセス改善の取組について報告がなされた。
・今後、新型コロナの動向等も踏まえつつ、関空・伊丹を補完する観点からの国際
化を含む空港機能のあり方について、関係団体の協力の下、関西エアポート及び
神戸市による検討を深化させ、次回(第 12 回)懇談会で報告を受けることとし
た。


以上