神戸商工会議所「神戸経済ビジョン」について

 神戸商工会議所が、2018年(平成30年)3月に、神戸経済の目指すべき将来像及び都市政策・産業経済政策を提言した「神戸経済ビジョン(OPEN ×CONNECT(広く開かれ、神戸でつながる)= 世界へ開き、融合と革新を続ける神戸クラスター  つながりを進化させる産学官のパートナーシップ =)」を発表している。

 これは、神戸港の開港150年を節目として、神戸経済界の立場から、中長期の視点に立って、神戸経済全体のあるべき姿を将来展望として掲げたもので、目標年度は概ね10年後の2030年頃として、内外の幅広い関係者とビジョンの共有をはかり、その実現に努めるとしている。

PowerPoint プレゼンテーション (kobe-cci.or.jp)

 

 同ビジョンは、

1 Overview 現状認識と課題

2 Classify 都市・産業経済政策の視点に分類した方向性

3 Vision 神戸経済が目指す将来像(ビジョン)

4 Project 重点プロジェクト

 の4つの章から成っている。

 

 神戸経済が目指す将来像(ビジョン)は、次のように示されている。(以下、引用はすべて、神戸商工会議所「神戸経済ビジョン」2018年3月から)

 

都市政策の5つの基本目標


● 世界にオープンに開かれエッジの効いた人材や企業が集まり、交流するまち

● 中心部に人・産業が緊密につながるクラスターを形成 コネクト&コンパクトなまち

● 快適に住み、学び、働き、何度でも訪れたくなるまち

● 海と山の景観・ロケーション オンリーワンの地域資源が人を魅了するまち

● 陸・海・空の交通ネットワークがシームレスに快適につながるまち 

 

 これらの基本目標のうち、2番目の「中心部に人・産業が緊密につながるクラスターを形成」という点が注目される。これについては、次のように解説が加えられている。

 2030年に向けた、神戸においては中心部に産業・都市のエンジン機能を凝縮し、そこで、多様な人・産業を「コネクト」(融合・結合)させ、イノベーション(革新)を生み出すクラスター(集合体)を形成することこそが、新たな成長の源泉となる。

 さらに、「神戸クラスター」について、次のように考え方を示している。

 「神戸クラスタ」の考え方

 医療産業都市という単一テーマのクラスターではなく、神戸の中心部の南北軸における多様かつ重層的な産業や研究機関の集積全体をクラスターとして位置づける。具体的には「健康・医療」分野のみならず「ものづくり」「観光・コンベンション」「スポーツ」「生活文化」「海事」など多様な産業を包括し、一つのクラスターと捉えるもの。

 

 このビジョンの実現に向けて、オール神戸で取り組むべき、「重点プロジェクト」として5つのプロジェクトを挙げている。

 

① 外国人材・企業誘致推進プロジェクト

  欧米に加えてアジアの外国・外資系企業の誘致を強化。

② 神戸広域観光圏周遊拠点化プロジェクト

  周辺地域を含む「神戸広域観光圏」として捉え情報発信・周遊発着拠点としての体制を整備する。

③ ヘルスケア&スポーツ産業創出プロジェクト

④ ものづくり+イノベーション創出プロジェクト

⑤ アライアンス・融合促進プロジェクト(販路拡大・事業承継)

 

 そして、重点プロジェクトを支える2つの 「基盤プロジェクト」を示している。

⑥ 活力創造につながる都市基盤づくり~ 神戸中心部 南北アクセス強化 ~

⑦ まちや産業に誇りをもつ人づくり

 

 その中の、神戸中心部 南北アクセス強化については、次の4つのルートを挙げている。

・三宮 - ウォーターフロント

・三宮 - 六甲山

神戸空港 - 三宮

神戸空港新神戸

 

 最後の神戸空港新神戸について、次の2つのプランが提示されている。

・神戸中央線(新神戸トンネルと港島トンネル)の接続による自動運転バスやBRTの運行
ポートライナー延伸

 

 

 上記の「神戸経済ビジョン」について意見を述べてみる。

 

 当ブログでは、神戸は、その地理的条件および交通条件から、中国・四国地方を後背地とする、地方ブロックを超える、超広域の中心都市、関西圏の西の玄関口として都市整備を行うべきだと考えている。そのコアとして、新神戸、三宮、神戸空港を結ぶ多頻度の交通機関を整備し、そこに広域の都市機能を集積させ、中国、四国、関西圏の中で、最も機能的な都市空間を構築することを提案している。

 すなわち、神戸の都市作りにおいて、神戸市150万人だけを対象とするだけではなく、兵庫県540万人、中国地方714万人、四国地方362万人を対象とする都市機能を考えることが必要だということだ。以上の人口を合計すると1600万人を超え、それは、兵庫県を除く関西圏1500万人、九州地方1200万人を上回る規模の経済圏となる。仮にこれらが一体的な経済圏として成立するならば、関西圏や九州地方に対しても優位性が生じることになるだろう。

 神戸商工会議所の「神戸経済ビジョン」は、「神戸クラスター」として新神戸神戸空港を視野に入れ、神戸の中心部の南北軸に都市機能を集積させるという点で、筆者の見解と大いに重なるところがある。

 しかし、どうしてそこにクラスターを作るべきなのかという必然性の説明が弱いという印象を受ける。また、同ビジョンは、幅広い産業分野をカバーしようとするがあまり、やや総花的な印象を受けるが、全体としては現在の神戸経済のプレイヤーを念頭に置き、その視点から描いているところがあるように思える。それは、地元の商工会議所とすれば、致し方がないところだろう。

 当ブログの提言では、現在の神戸のプレイヤーよりも、この広域圏の中でいかに高次元の機能的な空間を構築し、その圏域全体のプレイヤーから利用されるようにすることに主眼がある。つまりは、場の提供である。そこで活躍する者は、地元のプレイヤーとは限らない。しかし、より高度の都市機能を発展させるためには、広い圏域から有為な人材や企業を集める必要があるだろう。これに対して、神戸市が謳う「BE KOBE」は、「神戸の様々な魅力の中で、一番の魅力は人である」というメッセージとのことだが、神戸の人だから他より優れた魅力があるということはない。そのような偏狭なプライドではなく、全国、海外からも分け隔てなく、優れた人がやってきて活躍する都市であるべきだというのが筆者の考えだ。

 

 

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