久元神戸市長、神戸空港〜三宮間「鉄道輸送を考える必要が間違いなくある」

 神戸市の久元喜造市長は12日の定例記者会見で記者の質問に答え、神戸空港都心部の三宮を結ぶ交通機関について「いまの(新交通システムである)ポートライナーの存在を前提として、鉄道輸送を考える必要が間違いなくある」と述べ、神戸市内の新たな鉄道の敷設が必要との認識を示した。ポートライナーは「時間帯によって乗客数は大きく異なるが、朝の通勤時間帯が非常に混雑する」と指摘。混雑のピークには現在も三宮とポートアイランドを結ぶバスを運行しているが「それで十分なのかという問題が、やはりある」と語った。(以下略)

 

(神戸経済ニュース 2023/01/12)

 

 

 1月1日、新年最初の神戸新聞の朝刊で「神戸市が神戸空港と都心・三宮を結ぶ地下鉄新線の整備を検討している」との記事が報じられたことから、神戸空港と三宮を結ぶ新交通機関についての関心が高まっている。こうした中、神戸市の久元市長が、12日の定例記者会見で、神戸空港都心部の三宮を結ぶ交通機関について、記者の質問に対して「鉄道輸送を考える必要が間違いなくある」との考えを示した。

 会見の中では、その発言以外には、「勉強している段階」、「地下鉄を作ることに絞って勉強しているわけではない」、「どういうシステムで、事業主体や、どういうルートか全く材料はない」と述べるにとどまった。一方、新神戸駅神戸空港の間については「道路で結ぶのが基本」と、検討の対象外であるとの考えを示した。

 

 以下、記事についてのコメントである。

 今回、久元市長の口から、「神戸空港と三宮を結ぶ鉄道輸送を考える必要が間違いなくある」と述べたのは、今までの立場から一歩前に踏み出したものと言える。というのも、ポートライナーの輸送力については、これまで、利用者をはじめ各所から限界を指摘する声があり、神戸空港規制緩和の動きが強まる状況の中、空港アクセスの増強を訴える声が随所から上がっていた。ところが、久元市長は、問題を真正面から捉えようとせず、①バス便の増発(混雑緩和を図るための共通乗車証社会実験)や、②時間をずらして利用する「時差利用」を呼び掛けたりと、本質から外れた対策しか講じようとしてこなかった。これらが問題の根本的な解決に結びつかないことは明らかであった。結局は、問題先送りに過ぎなかったのではないか。ポートライナーの輸送力不足は明白であったから、その時点で、少なくとも抜本的な対策の検討を専門家を交えて開始すべきだった。

 

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 神戸市は、これまでも同様の「検討」を様々に行っては、立ち消えのようになることを繰り返している。思うことは、その検討の中で、どのような案が出て、それぞれの利害得失は何で、どういう議論を経て、どのような結論に至ったのかが一向に明らかにならないということだ。

 これに比して想起するのは、昭和49年の関西国際空港の建設地決定の運輸省航空審議会答申である。この結論が正しかったかどうかはともかく、その報告書の中で、各案の概要、評価基準と評価、その投票結果が得点に至るまで詳細に記録され、その50年後の現在でも、その議論の過程をたどることができる。そして、その議論の考え方はどうであったか、どこに問題があったのかを現在の視点で改めて検証することができる。

 検討するなら、このような徹底した検討をしてほしい。そして、その過程を広く市民、関係者に公表し、意見を求め、市民や広く国内、世界の叡智を結集するように努めてほしい。

 

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(参考)神戸市長定例会見 2023年1月12日

記者:一部報道で出ていたことについてなんですが、神戸空港と三宮を結ぶ新たな鉄道を敷設するということについて神戸市で検討しているというのは事実ということでよろしいでしょうか。

久元市長:検討しているというところまでは言えないと思いますね。少なくとも勉強しているということは事実です。ただ、新しく地下鉄をつくるということを、そこに絞って勉強しているわけではありません。少なくとも神戸空港が国際化をする、そして2030年に定期便が就航するというふうになったときに、今のポートライナーで十分なのかということは、これは考えないといけないわけですね。

 そのためにどんな方法があるのかということについては、これはやっぱり幾つかの選択肢を当然考えないといけないわけで、その1つが新しく鉄道を引くということが可能なのかどうかということです。まだこれは、どういうシステムで、どこが事業主体になって、ましてやどういうルートにするのかなどは全く何も材料はありません。こういうことを考えなければいけないというところです、今の段階ではね。

記者:では、三宮と神戸空港を結ぶということも課題だというふうに世間的には言われているかと思うんですが、三宮以外にも、新神戸と結ぶというのが大事なのではないかといった議論であるとか、あるいは既存の阪神、阪急、JRが神戸空港まで乗り入れることが必要なのではないかといった議論なんかもあったりするかと思います。今、市長としては、そういったもの、どこと神戸空港を結ぶのが、順番といいますか、優先度みたいなのを考えになっていたりすることはあるんでしょうかということなんですが。

久元市長:まず考えないといけないのは三宮と神戸空港ですね。それから、新神戸駅神戸空港ですね。それから、それ以外のエリアとのアクセスですね。特に3空港懇談会では、神戸空港の国際化を含む利活用に当たっては、神戸以西の需要をしっかりと喚起して取り組んでいくということが指摘されていますから、そういう神戸以西とのアクセスというのも、これも重要なテーマなんですね。そういうことを考えていかなければいけません。その中でも、特に最初の2点について言うと、新神戸駅とは、これは道路で結ぶというのが基本だろうと思います。これは新神戸駅だけの問題ではありませんが、空港連絡橋も4車線化が、近い将来というか、間もなく実現をいたします。港島トンネルを北伸させる、新神戸トンネルを南伸させるという方法が、これは一番現実的で、これもまだ計画が具体化しているわけではありませんが、それは、そういう必要性を私どもは国土交通省にも相談をしながら、これを、具体化に向けた検討をしているということは事実です。

 一方で、三宮との間では、これはバスと、それからポートライナーがあって、ポートライナーが主要な輸送機関になっているわけですね。しかし、このポートライナーは、開通して、あれは1981年でしたかね、開通したのはね。もう40年以上になるわけですよ。状況が非常に大きく変わっている。それから、もともと車両が小さいという問題があって、そういう神戸空港の利活用が大きく進んだときに対応できるのかという問題があるわけです。

 一方で、このポートライナーについては、これはコロナで状況が少し変わってきているという面もありますが、時間帯によって乗客数がかなり違う。特に朝の通勤時間帯が非常に混雑すると。そこのピークに対して対応するということがこれは不可欠ですね。今もその時間帯はバスを走らせているわけですね。しかし、それで十分なのかという問題がやっぱりあって、そういう観点から、三宮と神戸空港の間には鉄道輸送ということを、今のポートライナーの存在を前提として、考える必要というのは、これは間違いなくあるということは言えようかと思います。

記者:逆に言うと、三宮と神戸空港以外のアクセスというのは、新たな鉄道というのは基本的には必要ないであろうというふうにお考えだということですか。

久元市長:必要ないと断言できるかどうか分かりませんが、先ほど申し上げましたように、新しくポートライナー以外の鉄道システムをつくるとしたときに、それをどこが、事業主体をどうするのかということについては、まだそこまで検討は行っていないので、どこと組むとかというのは、まだその問題、そういう論点自身が現時点ではまだないということです。


(神戸市HP(2023/1/12)