神戸市の久元喜造市長は28日の定例記者会見で、神戸空港と中心市街地を結ぶ交通アクセスについて「商工会議所からの提言を受けて、(国際定期便が就航する)2030年を見据え、もう少し検討を加速する必要があると感じた」と述べた。
(神戸経済ニュース 2023/9/28)
久元神戸市長が、昨年9月28日の定例記者会見において、神戸商工会議所から要望のある「神戸空港と中心市街地を結ぶ交通アクセス」について、検討を加速する必要があると述べた。
神戸商工会議所の要望とは、9月25日に神戸商工会議所会頭が神戸市長に手渡した「令和6年度 神戸市政に対する要望」のことであり、その中の神戸空港に関する部分を抜き出すと次の通りである。
神 戸 商 工 会 議 所 令和6年度 神戸市政に対する要望(抜粋)
3.神戸空港国際化に向けた対応
昨年9月の関西3空港懇談会で合意を得て、神戸空港国際化に向けた道筋が示された。2025年国際チャーター便の運用開始、2030 年前後の国際定期便就航に向けて、ターミナル整備等受入態勢に万全を期し、運用開始時の稼働率を高めるとともに、長期的な視点をもって神戸空港を成長発展させるため、以下の施策に取り組まれたい。
(1)神戸空港の利用促進ならびに規制緩和に向けた働きかけ強化
神戸空港国際化の認知度向上に向けたPR施策の展開
神戸以西の需要獲得に向けた積極的なプロモーション活動
2030年前後の国際定期便就航を見据えた国際チャーター便の誘致促進
発着枠拡大・運用時間延長、ひいては規制撤廃に向けた働きかけ
国際チャーター便・プライベートジェットの円滑な受入れに向けたCIQ体制充実の働きかけ強化
(2)空港ターミナルビルの整備強化
新ターミナル整備の着実な推進
2030年前後の国際定期便就航を見据えた新たなターミナル整備の早期検討
カーボンニュートラルエアポート実現に向けた取り組み強化
(3)南北アクセス強化に向けた地下鉄導入の早期検討
抜本的な南北アクセス強化策となる『新神戸~三宮~神戸空港間を結ぶ地下鉄導入』について、神戸市が主体的に検討を進めること
生田川右岸線道路改良工事、新神戸トンネル南伸事業の早期完了に向けた予算措置
《会員企業からの意見》
・神戸空港の機能強化については、国際線定期就航に加えて国内線拡充など、中核空港としての整備を遅滞なく進めてほしい。また、空港へのアクセスも含めて、特に南北のアクセスとしての地下鉄整備や新神戸駅へのJR在来線接続などの鉄道ネットワークの強化も検討いただきたい。【建設業】
・神戸空港について、機能強化・利便性の向上もさることながら、2025年には開港20周年を迎え、グローバルな玄関口となるべく、環境等にも配慮したシンボリックな存在となる必要がある。【エネルギー】
・MICE誘致と神戸空港国際定期便就航獲得に向けて、ポートアイランドと市街地のアクセス強化が求められるため、より充実した交通インフラを整備いただきたい。【ホテル業】
(令和5年9月 神 戸 商 工 会 議 所 令和6年度 神戸市政に対する要望(抜粋))
この要望に対して神戸市長の定例記者会見で、記者から質問があったことに答えたということを報じたのが冒頭の記事である。
その記者会見の議事録が神戸市のHP上で公開されているので、その内容を見てみよう。
記者: 月曜日に神戸商工会議所からの要望を受け取るというのがあったかと思うんですが、その中で、やはり2030年前後の神戸空港の国際線就航に向けて定期便が出るということについて、そのためのインフラ整備をどうするかということで、また引き続き、南北インフラと、市街地と神戸空港をいかに結ぶのかということについてもまた要望が上がっていたかと思うんですが、その後、何か神戸市のほうで検討が進んでいるようであればお伺いしたいと思います。果たして30年、定期便が就航し始める時点で完成している必要があるのかどうかということも含めて議論があるのではないかという気もしますが、その辺も含めてお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
久元市長: 現在のポートライナーの増強、あるいは短期的にバスの便を増便したりするということはあり得るかと思いますが、より抜本的に踏み込んだアクセスについては、まだ十分検討はできておりません。ただ、改めて、商工会議所からの提言を受けまして、2030年という時期を見据えて、神戸空港へのアクセスについては、もう少し検討を加速させる必要があるということは感じました。
記者: 基本的には、やっぱり、国際定期便が就航し始める時点で何らか新たなインフラができている必要があるというふうにお考えになっているということでしょうか。
久元市長: 新たなインフラというよりも、道路だけではなくて、ポートライナーの増強も含めて、鉄道輸送という面でも対応を考える必要があるということは感じております。
記者: バスの増便以外にも何らか必要だと。
久元市長: 何らかの対応がやはり必要ではないかというふうに思っておりまして、改めて、商工会議所からの提言を受けて、この辺の検討は加速する必要があるというふうに感じました。
(2023/9/28 神戸市長記者会見)
久元市長の回答の要旨は次のようにまとめられるだろう。
(1)神戸空港のアクセスについては、鉄道輸送でも対応を考える必要がある。
(2)鉄道輸送の対応の中には、ポートライナーの増強が含まれる。
(3)商工会議所の提言を受けて、検討を加速する必要がある。
ポートライナーの輸送力については、これまで、利用者をはじめ各所から限界を指摘する声があり、神戸空港の規制緩和の動きが強まる状況の中、空港アクセスの増強を訴える声が随所から上がっていた。ところが、久元市長は、問題を真正面から捉えようとせず、①バス便の増発(混雑緩和を図るための共通乗車証社会実験)や、②時間をずらして利用する「時差利用」を呼び掛けたりと、本質から外れた対策しか講じようとしてこなかった。
しかし、今年の1月12日の定例記者会見で、神戸空港と都心部の三宮を結ぶ交通機関について、記者の質問に対して「鉄道輸送を考える必要が間違いなくある」との考えを示した。
神戸商工会議所からは、昨年度も「新神戸駅・三宮駅と空港を結ぶ南北アクセス強化(鉄軌道整備)」の要望が出されている。今年度の要望では『新神戸~三宮~神戸空港間を結ぶ地下鉄導入』となっており、少し内容が具体的になっている。
久元市長は「商工会議所からの提言を受けまして、2030年という時期を見据えて、神戸空港へのアクセスについては、もう少し検討を加速させる必要がある」と述べており、その時期から考えると、できるかぎり早期に検討結果を発表する必要がある。そして、要望の趣旨に沿った検討結果が発表されることが期待される。