神戸港に海上ロープウエー構想 21年度調査へ

 神戸市が神戸港一帯の回遊性を高めるため、ウオーターフロント再開発事業で、国内最長を見込む海上ロープウエーの整備を検討していることが同市への取材で分かった。三宮の南にある新港突堤西地区と神戸メリケンパークのある中突堤、神戸ハーバーランドを結ぶルートを構想し、2021年度に調査を計画。実現すれば、海上から見下ろす臨海部に加え、市街地と背後に連なる六甲山系も眺望できる観光資源になりそうだ。

神戸新聞 2021/1/3)

 

www.kobe-np.co.jp

 

 神戸港臨海部でのロープウエイ建設の提案は、今回の計画以前には、ある神戸市議会議員の ブログ上の2018年5月頃の記事に確認することができる。この案は、ゴンドラで、ハーバーランド(モザイク)から、メリケンパーク、神港突堤、神戸税関付近からフラワーロードを北上し、三宮駅新神戸、ハーブ園を結ぶという壮大なプランだ。

 

www.shozan-hirano.jp

 

 これに類した構想で筆者が知る限り最も古いのは、神戸市の「神戸の都心の「未来の姿」検討委員会」で2014年(平成26年)3月19日の第1回検討会議の市民提案に挙がっている項番117の「ハーバーロープウェイ構想」である。ハーバーランドからメリケンパーク、ポートアイランド六甲アイランドをロープウェイで結ぶものだ。

(第1回検討委員会(平成26年3月19日開催) 参考資料1)

神戸市:神戸の都心の「未来の姿」検討委員会 (kobe.lg.jp)

 

 今回の神戸市の構想についての筆者の見解を述べてみよう。

 この計画は臨海部の集客施設の間を、海上で最短距離で結ぼうとするもので、もし実現すれば眺望等もすばらしく一時的には人気を集めるかもしれない。

 しかしながら、課題もありそうだ。

(1)建設費はどの程度かかるのだろうか。海上を結ぶとなると、陸上部とは異なり、架線を渡す鉄塔等の支間長も長くする必要があり、船舶の通行の障害とならないような高さに建設する必要もあり、それなりに高額な建設費になるのではないだろうか。とすれば、料金もそれなりの高額になるのではないか。料金が高額になれば、一度くらいは利用しても、繰り返し利用されることにはならないのではないか。

(2)海上部に架線を渡すことになるが景観の問題はないのだろうか。陸上でも電線の地中化が求められるぐらいだから、景観を害することはないのだろうか。

(3)最大の問題は、モザイクから新港第2突堤あたりを結ぶ計画だから、西のハーバーランド側はともかく、東側がどの交通機関からも離れていることだ。最大の交通ターミナルである三宮や広域交通拠点の新神戸駅神戸空港からの接続はどうするのだろうか。神戸港一帯の回遊性を高める目的としては、これだけでは目的を十分に果たすことができない中途半端な交通機関になるのではないだろうか。交通機関として中途半端なものであれば、一種の観光施設的な性格が強くなるが、それで、どの程度人気を集め続けることができるだろうか。さらに、同一の目的で連節バスの運行も計画しており、それとの関係はどうなるのだろうか。相互に需要を分け合う形になり、共倒れにならないだろうか。ロープウェイを建設すると、規格の合わない互換性のない新交通機関がまた増えてしまう。とりあえず今必要なものは、神戸港一帯の回遊性を高める目的のものだから、インフラ建設を伴わないバス等の既存の交通手段で実績を上げることではないだろうか。

 

 ハーバーランドメリケンパーク、新港突堤あたりは神戸市の都心の観光の目玉となる部分なので、場当たり的ではなく周辺の交通体系との整合性も考え、しっかりとした計画を考えるべきだ。

 

 筆者は、ポートライナーの複線化と新神戸駅への延伸を提案している。これにより、今後発展が期待される神戸空港の輸送能力を拡充し、さらに新神戸駅から三宮駅を経由して神戸空港を結ぶ、新幹線と航空機の2大長距離交通機関へのツーウェイアクセスを有する長大な沿線を生み出し、その沿線沿いにビジネス街や集客ゾーン、コンベンションセンターを配置して、日本全国からのアクセスが優れた高度の利便性・機能性を有するエリアを創造すべきだと考えている。新神戸駅から三宮、神戸空港を結ぶポートライナーの沿線を中央軸とすると、臨海部は中央軸から派生し、集客施設や娯楽施設、ホテル、ショッピングセンター等を集中立地させ、テーマパークのようなエリアにするのがよいと考えている。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 臨海部の交通機関としては、新神戸駅神戸空港を結ぶポートライナーの乗り継ぎ駅を神戸港の臨海部に設け、それと神戸駅との間の臨港地帯を往復する多頻度の交通機関を設けるのがよいと思う。それは、おそらく循環バスやシャトルバスのようなものになるのではないかと考える。

 このように考えていくと、やはり、都市全体のグランドデザインが必要であり、全体的な構想が事実上ない中で、個々にバラバラと計画を行うことでは、なかなか成功はおぼつかないのではないだろうか。

  都市のグランドデザインさえ、しっかりとできれば、その枠組みの中で個別の計画が立案され実現されていくのではないだろうか。そのグランドデザインの柱は、やはり、中央軸、すなわち新神戸駅から神戸空港を結ぶ沿線の実現であると考える。

 

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