神戸港に1万人収容のアリーナ整備へ

 神戸市は26日、神戸港の新港突堤西地区(同市中央区)にある第2突堤の再開発事業で、スポーツや音楽などの興行開催を念頭に、多目的アリーナの整備を提案した企業連合体を優先交渉権者に選んだと発表した。アリーナは1万人規模の収容能力を持ち、兵庫県内では最大、関西圏でも有数の施設となる。民設民営で、2024年度中のオープンを目指す。

(2021/3/26 神戸新聞

 

 神戸市の発表によると、このたび整備されるアリーナは、プロスポーツ興行、国内外トップアーティストによる音楽興行、MICE など、多様な興行や演出に対応できる、関西圏では数少ない1万人超規模(固定席、可動席で8千席)の世界水準の最先端アリーナという計画である。報道によると、バスケットボール男子Bリーグ2部(B2)の「西宮ストークス」が24~25年シーズンからこのアリーナへ本拠地を移転させるそうだ。

 

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 まずは、大規模アリーナが神戸に実現することについて歓迎したい。 今回のアリーナは、神戸の都心に隣接し、神戸港を臨む開放的で美しいロケーションの下、コンサートやイベントなどに人気を博することになるだろう。

 

 神戸の都心部への大規模アリーナの設置については、これまで何度も述べてきた。

 

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 神戸にアリーナを設置をする意義については次のとおり考える。神戸は関西圏の西部に位置し、中国、四国、九州地方との交通の結節点であり、西日本全域を見渡した時に、最も交通手段が集中している都市だ。つまり、このエリアで何かイベントを開催するとすれば、そのエリア内の人々が集合するのに最も便利な都市である。したがって、神戸に集客施設を設置することは理にかなっており、そのエリアの人々全体の便益の向上に寄与することになる。神戸が行うべき、都市としての貢献とは、神戸市内にある文化や魅力、観光資源の提供ではなく、「場」の提供なのだ。それによって、エリアの人々の利便性の向上とともに、場を提供する神戸にとっても、多くの人々が集い、そこから派生する消費や飲食、宿泊、サービスなどが都市の経済を潤すことになると考えられる。神戸は関西圏、中国、四国、九州など西日本全域、さらには海外も視野に入れ、これらの人々を対象とした集客都市を目指すべきだ。

 

 ここで、先に兵庫県知事が発表したアリーナ構想との関わりを考えてみたい。2019年12月に井戸知事は、大規模アリーナ(室内競技場・多目的施設)の建設を検討する方針を明らかにしていた。

 

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 今回のアリーナ計画は、この兵庫県の構想が実現したものなのだろうか。その答は知事の会見の質疑の中にある。

 

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 この会見の中で、井戸知事は次のように答えている。

 

 まだ具体的な詳細が決まっているわけではありません。ともあれ、大きなアリーナがないと、世界大会等も誘致できません。興行的に言うと2万人以上ぐらいの観客が入れないと成り立たないとも言われているようです。(中略)国際大会を誘致できるような拠点施設を兵庫に1つ持つ必要があるのではないかということを、関係者が非常に強く熱望されているところです。

 

 1万人では小さいです。横浜はもう1万7000人ぐらいのアリーナがありますので、それで1万人規模でもそれなりの意味があると思うのですが、兵庫の場合は、基本的にアリーナというのは、神戸市総合運動公園の横にある神戸市のアリーナとワールド記念ホールですので、いずれも5000人から6000人。もっと詰め込んでも8000人ぐらいですので、それではなかなか国際競技大会は、呼びにくいという実情があります。ですから、2万人以上の規模が良いのではないかと思っています。

 

 つまり、兵庫県知事が構想していたアリーナは、世界大会等の誘致を目標としての構想であり、そのためには1万人では規模が小さく、2万人規模のアリーナを構想していると考えられる。

 

 以上から、今回、神戸市が発表したアリーナは兵庫県の構想に基づくものではなく、別の目的の下に計画されたものと考えられる。

 

 今回の神戸市の計画によって、兵庫県のアリーナ構想は無用となるのだろうか。兵庫県の構想と神戸市の計画とは、目的も用途も異なり、別物と考えるべきだろう。現在の新型コロナウイルス禍の状況では、こうした世界大会の誘致も夢物語のように思えてしまうが、いつの日か災厄は克服され、再び自由に人々が往来できるようになるだろう。その日がやってくることを想定して、兵庫県のアリーナ構想もぜひ実現させてほしいものだ。

 では、兵庫県のアリーナの設置場所はどこが適地であろうか。これについても、過去に提言したように、みなとのもり公園が最適地であると考える。今回の新港地区のアリーナとみなとのもり公園を地図で眺めてみると、新港地区は主要ターミナルである三宮駅とはやや距離がある。ざっと2キロメートル近くの距離があり、これは徒歩では少し遠すぎる。となれば、なんらかの交通手段が必要となるが、新登場の連節バスでは輸送力が貧弱である。対して、みなとのもり公園は、ターミナルから約7~800メートルほどであり、徒歩圏として充分である。主要ターミナルから交通手段が不要であれば、数万人が一斉に入退場をしても交通が障害となることはないだろう。

 

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