兵庫県の井戸敏三知事は23日、2万人以上を収容できる大規模アリーナ(室内競技場・多目的施設)の建設を検討する方針を明らかにした。(中略)井戸知事は定例会見で、20年度当初予算案に検討費を盛り込む可能性を示唆。財政面も加味し実現性を議論するとしながら、交通やアクセス手段を踏まえ、JR明石駅に近い県立明石公園は「候補地の一つ」とした。
(神戸新聞 2019/12/24)
井戸兵庫県知事が、2万人以上を収容できる大規模アリーナを建設する方針を明らかにした。建設場所について、明石公園を候補地の一つとして挙げた。
大規模アリーナの建設については、当ブログでは、たびたび推進論を述べてきた。建設場所は、神戸市の中心市街地、三宮近辺に建設することが適当であると考える。
その理由は、大規模なアリーナは、地方都市には必ず存在する市民ホールのような全国津々浦々で催されるレベルのイベントではなく、首都圏で1カ所、西日本で1カ所、場合によれば日本で1カ所というレベルのイベントを開催するような会場となる。したがって、大阪ドームや大阪城ホールなどが競合施設ということになる。これらを制してイベントを誘致するためには、すぐれた施設とともにすぐれた交通条件を兼ね備える必要がある。大規模な人口を抱える大阪や京都からもアクセスが便利な場所でなければならない。仮に、明石公園にこのアリーナを建設したとしたらどうだろうか。大阪、京都の住民が明石まで出向いてイベントに参加するのは、あまりに距離が遠い。それでは、大阪ドーム等と競合しても勝ち目がない。せっかく、新神戸や神戸空港があり、長距離バスターミナルも三宮に整備するのに、そこから、わざわざ遠い明石にアリーナを建設するのでは、みすみす兵庫県の武器を放棄するようなもので、実にもったいない話だ。しかし、神戸の三宮であれば、大阪から新快速で20分、京都からも1時間以内で到達することができる。しかも、新神戸、神戸空港からも近く、大阪ドーム等よりも広域の交通条件はすぐれている。神戸の三宮であれば、競合を制する可能性がある。だから、神戸の三宮こそ、大規模アリーナ建設がふさわしい。三宮の交通機関の輸送力は、ルミナリエの連日35万人の観客を混乱なく輸送していることで立証済みだ。
また、別の観点から言うと、神戸に大規模アリーナがぜひ必要だ。というのは、神戸の都心の求心力が非常に衰えているからだ。神戸市は県庁所在都市であるにもかかわらず、人口の減少に悩み、周辺都市の再開発が先行し、神戸市民が神戸の都心で買い物や余暇を過ごさず、大阪梅田や西宮北口で買い物や余暇を過ごす場面が増加している。ここで、さらに明石に大型アリーナが建設されると、神戸市民は、大規模なコンサートなどを、市外の明石に出かけて楽しむことになる。これでは、県庁所在都市としての存在価値がますます揺らぐことになってしまうのではないだろうか。神戸市の県下他都市との相対的地位が低下し、結果的に、絶対的大都市の大阪に対して、兵庫県下には大都市は存在せず、中小都市が並列するようなことになってしまうのではないか。これまでも、兵庫県立図書館が明石に、兵庫県立芸術文化センターが西宮に建設されるなど、兵庫県も、兵庫県下での集中ではなく分散を進めてきたきらいがある。その結果、大阪に対して対抗できるだけの都心が存在せず、兵庫県全体の地盤沈下を招いているのではないだろうか。現下の課題としては、兵庫県下に大阪に負けない都心を建設することが重要課題ではないだろうか。そういう観点からも、神戸の中心市街地にアリーナを建設することが必要である。
広島市には、中心ターミナルである広島駅のすぐそばに広島スタジアムがあり、賑わっている。大型のアリーナ、スタジアムは大都市の都心にあるべき施設なのだ。
明石がアリーナ建設の候補地になっているのは、一つには土地があるからだろうが、空いている土地に施設を建設することはもうやめるべきだ。便利なところ、必要なところに建設をするようにするべきだ。
また、今回のニュースに接して、いったい、神戸市は何をやっているのだろうと思う。先日、兵庫県知事が兵庫県下にアリーナを検討する必要があると述べた時点で、すぐに誘致にかかっておくべきだ。このアリーナの誘致に失敗すると、神戸市の相対的な地位の低下は否みがたい。神戸市はそういう危機感を持って当然ではないだろうか。神戸市に兵庫県の県庁所在都市の自負はないのだろうか。神戸市は、大阪や京都どころか、県下の他都市にすら優位性を失いかかっている。このような状態で、どうして関西3都を名乗ることができるだろうか。すぐに適地を提示すべきであるし、適地がないなら、交通機関を整備すれば適地も生まれる。それこそが、都市計画、都市経営ではないのか。諸々の小規模なまちおこし施策ではなく、そうした大きな構想、戦略を立てることこそが大都市の市長の役割ではないのだろうか。