関西の空港配置はどうあるべきだったのか

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 神戸空港の国際化も決まり、ようやく関西3空港問題の解消に向かって進み始めたが、この現在の目で過去にさかのぼり、関西圏の空港配置はどのような決定をしておけばよかったのかを考えてみよう。

 

 下の図は、関西3空港、すなわち関西国際空港関西空港)、大阪国際空港伊丹空港)、神戸空港、のそれぞれの1時間利用圏域人口を表したものである。

(出典 兵庫県「関西3空港の目指すべき姿」平成21年12月14日)

 

 これを見ると、伊丹空港が1500万人で突出しているが、そもそもが騒音問題による制約を抱える伊丹空港の代替空港の建設という目的からこれを除外とすると、関西国際空港の設置場所の選定は関西空港神戸空港との比較の問題となる。関西空港の1時間利用圏域人口は400万人、神戸空港は1000万人で、神戸空港関西空港の2.5倍の規模となることがわかる。さらに、新幹線などの高速鉄道網とのアクセス条件や在来鉄道網の充実等の条件も考え合わせると、神戸空港の優位性はそれをはるかに上回るだろう。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 この問題について、大阪の都心を中心に考えると関西空港神戸空港も立地条件に大した差がないように思われるかもしれないが、国土軸の観点から見ると、関西空港神戸空港は全く異なる条件下にあることがわかる。国土軸から大きく外れた関西空港と国土軸に沿った位置にある神戸空港との差は歴然としている。すなわち、「関西国際空港」を、いわゆるローカルとしての「関西」ではなく西日本全体で利用する文字通りの「関西(=西日本)」の国際空港と考えるならば、現在の関西空港はすでにその条件を満たしていないことは明らかだ。

 ここまで考えると、なぜ、関西国際空港の設置場所を現在の泉州沖に選んだのか、不思議に思えるほどだ。

 

 その条件を満たしていない場所にある関西空港を「関西国際空港」に選んでしまったことが、すべての過ちの始まりである。さらに問題をこじらせたのは、地元自治体を筆頭に、在阪メディア等が身びいきから関西国際空港の「ハブ空港論」を持ち出し、その独占を永久化しようとして莫大な工事費を投入して二期工事まで性急に行ってしまった。これが第2の誤りである。その過ちを、「神戸市が建設に反対したから泉州沖に決まった」というストーリーで責任転嫁しようとし続けたのが関西3空港問題だ。

 

 では、本来のあるべき姿はどうだったのだろうか。これは、上記の圏域人口の分布からも明らかである。神戸沖空港を「関西国際空港」とすべきだった。十分な建設費をかけて、3000メートル滑走路2本を有する立派な国際空港を建設すべきであった。これが、関西圏の人々にとっても、西日本全体の利益のためにも選ばれるべきプランであったであろう。

 では、泉州沖の「関西空港」はどうあるべきだったのだろうか。これに対しては、現在とは全く逆の発想とはなるが、そもそも建設をしないか、せいぜい「大阪南部及びその周辺の国内航空需要に対応する地方空港」として、小規模(2500メートル滑走路1本)な「関西空港」を建設するというのが妥当な結論であったのではないだろうか。

 しかるに、現状はこれと全く逆の姿となってしまっている。しかし、交通というものは合理性が貫徹するものであるから、合理性ない選択は今後長期間をかけて修正されていくことになるだろう。現在は、その過程がはじまったばかりなのだ。