関学、神戸・王子公園への進出に意欲

 神戸市が計画する王子公園(同市灘区)の再整備について、関西学院兵庫県西宮市)の村上一平理事長が神戸新聞社のインタビューに応じ、大学誘致の公募について「できれば参加したいと考えている」と前向きに検討している考えを示した。大学内に設置した検討委員会で、具体的な計画内容を詰めているといい、エントリーの期限である2月中旬までに最終判断する。

 

神戸新聞 2023/1/4)

 

 王子公園の再整備の方向が明らかとなり、敷地の一部を用地として、大学が誘致されることになった。進出する大学は、やはり関西学院大学の線が濃厚であるようだ。関西学院は、かつて現在の王子公園の場所で創立され、現在の西宮市上ヶ原に移転したという歴史がある。王子公園の西南の場所にある、かつて関西学院のチャペルであった神戸文学館がその名残をとどめている。

 市内に大学を誘致するとしても、どうして王子公園でなければならないのか、それは、関西学院大学が新たな拠点の設置を検討する中で、創立の地である王子公園の場所を希望したからだろう。したがって、王子公園の一部が大学に転用されることになったのは、先に神戸市の構想があったからではなく、先に関西学院大学の進出構想があったからだと考える。つまりは、関西学院大学の構想を受けて、神戸市が王子公園の再整備に着手をしたものであろうと想像する。

 そして、関西学院大学の構想の一端をうかがわせる情報も報じられている。

 

 インタビューで村上理事長は「(公募に)できれば参加したいと考えている」とした上で、「関学の今後の発展に役立ち、神戸市にとっても価値のあるプロジェクトにしなければならない」と力を込めた。

 具体的な教育カリキュラムの策定に向けて、国内外に調査団を派遣しているとし、「学部を移すとか、関学にない学部を増やすとか、そのレベルの話では意味がない。最先端のものをつくり出すために議論を続けている」と語った。

 

(同)

 

 神戸新聞の同記事によると、「学部を移すとか、関学にない学部を増やすとか、そのレベルの話では意味がない。最先端のものをつくり出すために議論を続けている」と関西学院の理事長が述べており、相当大がかりなものであることがうかがわれる。また、 「具体的な教育カリキュラムの策定に向けて、国内外に調査団を派遣している」と、神戸市の再整備方針を受けて急遽検討したものではなく、かなり前から時間をかけて構想を進めたものであることが推測される。

 では、関西学院大学の構想はどのようなものだろうか。筆者は何も情報を持っているわけではないので、あくまで勝手な想像である。

 おそらくは、西宮市上ヶ原を本拠地とする関西学院大学の第二の拠点ともいうべき神戸三田キャンパスが問題の中心ではないかと考える。というのは、神戸三田キャンパスは、現在、理工学部総合政策学部が設置されているが、西宮から遠く離れた三田市の、そのまた中心から距離がある、その立地がきわめて不便であるということだ。これは、少子化による学生数の減少という今後の情勢からみて、通学が不便で学生の確保に支障を及ぼすおそれがある。その点、王子公園は大阪と神戸の市街地の間にあり、かつその駅前であれば学生が通学するのに非常に便利だ。また、西宮市の上ヶ原とは同じ阪急沿線だから、相互の往来にも便利だ。周囲は美術館や閑静な住宅地である文教地区で、大規模な商店街にも近く、すぐれた環境にある。そしてなにより、決め手になるのは、関西学院の創立の地であるという点だ。そのような大学の拠点の再編成という大きな流れの中で進んでいるものではないかと思われる。

 となると、問題は、どういう系統の学部が進出するかという点である。これは、おそらく神戸三田キャンパスの理工学部総合政策学部が移転・進出するという可能性が一つである。今回の王子公園の大学用地は3.5ヘクタールの広さだから、神戸三田キャンパスの13.8ヘクタールにはほど遠い。だから、この可能性は低いとも思ったが、神戸三田キャンパスの実情を見ると、建物が建つ部分は敷地全体の一部であり、建物を複層化するなどの工夫をすれば、王子公園の用地でも収まるのではないだろうか。では神戸三田キャンパスは、どうなってしまうのかと考えると、大学では、やはり大きな敷地を要するような運動施設や実験施設などが必要になるだろうから、そうした用途として利用されるようになるのではないか。

 また、第二の可能性として、神戸三田キャンパスの理工学部等が西宮市の上ヶ原に入り、現在上ヶ原にある学部が再編されて王子公園に入ることもあるかもしれない。

 いずれにしても、関西学院大学の今後100年の計として、大規模な再編をもくろんでいるとするならば、かなり本格的かつ大規模な大学施設が王子公園に配置されることになるのではないだろうか。そうした計画であるからこそ、神戸市はあえて王子公園の再編に着手したと想像する。

 

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