京橋の復原

京橋(神戸市)

 

 京橋(きょうばし)は、神戸市中央区の京町筋の南にある橋である。京町に在ったので京橋と名前がついたといわれる。

 付近に阪神高速3号神戸線京橋出入口や京橋パーキングエリアがある。

 1864年(慶応元年)5月に勝海舟により神戸海軍操練所が立てられた。現在は橋の東側に記念碑が残る。

wikipedia

 

 神戸ポートミュージアムがオープンし、市街地側の京町から新港町に向かって人通りが増えたが、その経路の中程に京橋という地名がある。これは京町と新港町を挟んで実際に存在する京橋という橋にちなむ地名である。京橋は、橋とはいうものの、その西側は海ではあるが東側は地続きなので、うっかりすると見過ごしてしまうかもしれない。しかし、注意して見ると、その道路の両側には欄干があり、要所には石柱が立ち、その上にはクラシカルなデザインの街灯を戴いている。石柱と石柱の間にはモダンな幾何学的文様の装飾を施した重厚な鋳鉄の格子が施されている。かつて、ここには実際に海を隔てた陸地と陸地を結ぶ橋があったのだ。

 

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(Google ストリートビューから作成)

 

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(Google ストリートビューから作成)

 

 京橋は明治から大正にかけて建設された新港突堤と市街地を結ぶために建設された橋で、1960年頃までは橋の東側にも船だまりが広がり、橋の形態を保っていたが、その後埋め立てられて現在のような地続きになったようだ。橋のデザインが重厚であるのは、橋が建設された時期が神戸港が繁栄をした時代であったためであろう。

 この度の新港地区の再開発に合わせて京橋もライトアップなどの化粧直しが行われたようだ。京橋から西側を眺めると、辺りは船だまりとなっている。神戸税関の監視艇をはじめ多くの小型船舶が係留されている姿を見ることができ、その先にはメリケンパークが見える。しかし、東側は埋め立てられて地続きになっており、現状は駐車場やストックヤードとして利用されているようで、あまり見栄えがよいとは言えない。西側が実際に船だまりとして利用され、港町神戸にふさわしい景観で雰囲気がよいだけに、東側の状態が残念に思われる。もしも、かつてのように橋の両側に船だまりが広がり、海を渡る橋であることが見て取れるようであれば、京橋は今でももっと存在感がある橋であったに違いない。

 そこで、京橋の東側を掘り起こし、再び水を引き込み、京橋を「橋」として復原してはどうだろうか。神戸の市街地には大きな河川がないため、街のシンボルとなるような橋がない。京橋は規模といいグレードといい、立地といい、街のシンボルになるのに十分な風格を備えている。東側は欄干が撤去されている部分があるので、これを修復すれば橋としての姿がより明瞭になるだろう。

 地図をあらためて眺めてみると、京町から新港町まで一直線に道路が続いており、京町には市立博物館やオリエンタルホテルなどの重厚なデザインの建築物が建ち並び、その先には新阪急三宮駅ビルがそびえ立っている。京橋の東側の歩道脇には幕末の神戸海軍操練所跡の碑が立っている。この京町から新港町に向かう道路を神戸のシンボルロードと位置づけて整備すれば、周辺の建築物とあいまって、神戸らしい景観が形成されるのではないだろうか。そして、京橋を、往年の神戸港の繁栄をしのばせる歴史的遺産、市街地と港を結ぶシンボルとして復活させればどうだろうか。どこか中心が不明確な神戸の市街地に中心地が確立されるのではないだろうか。