神戸市では、現在のコンベンションセンターが老朽化し、他都市との競争が激化していることから、コンベンションセンターの再構築を検討している。
神戸市は、平成25年3月に、「コンベンションセンター再構築基本構想 ~アジアの MICE センターを目指して~ 」という報告書を作成している。インターネットでも公表されており、全文を読むことができる。
コンベンションセンター再構築基本構想について(概要)
1.はじめに・コンベンション誘致を展開するうえで求められるコンベンションセンターの機能やサービス等について検討し、今後の整備方針を策定するために、検討委員会(委員長: 渡辺厚㈱情報伝達研究所代表取締役)を設置し、検討を行った。
基本構想によると、「将来目標 ・施設整備の目標年次はコンベンション都市として40周年を迎える概ね10年後の2022 年度を目指す。」となっている。
3.神戸コンベンションセンターの現状評価と課題整理
(1)現状評価(医学会を対象に行った聞き取りをもとに)
① センター内に展示場、会議場、ホテルが集約している点やアクセス、アフターコ ンベンションの点で競争力は高い。
② 施設自体については、規模・構成・クオリティ、価格の面において「商品価値」 の低下が顕著である。
・具体的には、展示場が4フロアに分散するうえに各施設のスペックが異なる (1号館の老朽化、1号館1階の柱、2階の床荷重等)。
・会議場の各部屋の規模が中途半端で利用者ニーズに合致していない。
・展示会場と隣接して講演会やパーティー、懇親会が開催できる場所が不足して いる。
・会議場機能をホテルが代替していることから料金が割高になる。等
(2)現状評価を受けた今後の課題と方向性・利用者からの厳しい評価に対し施設改修等の対応を早急にしなければ、今後、顧客が逸失する可能性が強く、一方で他都市でも施設拡充の動きがあり、このままでは神戸市の競争力が大幅に低下する恐れがある。
・利用者ニーズ、および近の他都市の施設整備状況を踏まえ、中長期の視点により、現状のコンベンションセンターゾーンにおいて、集約型のコンベンションセンターの整備を進めるべきである。
結論としては、現状のコンベンションセンターゾーンにおいて、集約型のコンベンションセンターの整備を進めるべきであるとしている。
4.今後の神戸コンベンションセンターのあり方
(1)基本方針・ゾーン全体で 15,000㎡~20,000㎡程度のワンスパン・無柱の展示ホールを有し、会議室やロビー、控え室等を備えたコンベンションセンターを整備する。
(2)整備プラン・ゾーンの西エリアにあたる現行の国際展示場1~3号館の敷地内に、建て替えにより、展示ホール15,000㎡を一体としてワンスパンで配置するA案、10,000㎡と5,000 ㎡それぞれをワンスパンで配置する B 案を検討する。・詳細については、誘客計画の策定を踏まえたうえで検討する。
(3)建替え時の対応・新コンベンションセンターの整備は、現行の国際展示場を順次建替えすることから、建替え期間中に床面積が大幅に減少する。
・建替え期間中に顧客を逸失し、戻らなくなる可能性が高く、大きな経済損失が見込まれるため、その回避策として代替施設の整備を検討する必要がある。
基本構想では、新コンベンションは、現行の国際展示場1~3号館の敷地内に、建て替えにより、展示ホール15,000㎡をワンスパンで配置する案が望ましいとしている。
ただし、現在地での建て替えとなるため、建て替え期間中に顧客を喪失するおそれがあるため、その回避策として代替施設の整備を検討する必要があるとしている。
(基本構想 新コンベンションセンター整備イメージ)
以上が、基本構想の概要である。これについては次のとおり考える。
現在地で旧施設を取り壊し、建て替える案では、基本構想が述べるとおり、代替施設をいったん整備しなければならない。しかし、それでは時間も費用もかかるので、代替地を用意して新施設を建設し、建設後、現施設は取り壊し、敷地は他に転用すべきであろう。
代替地は、現敷地の近くであれば南公園を転用することも考えられるが、現在地を離れることを考えるのであれば、ポートアイランド2期の中で十分な敷地を確保し、展示ホール15,000㎡などと最低限のものを建設するのではなく、将来の他都市との競争も考え、日本最大級の施設を建設するべきだと考える。その場合の適地としては、ポートアイランド2期の京コンピュータ前駅の東方向、ポートライナー延伸部の空港側への屈曲部分(下図)が適当ではないかと考える。
しかし、この基本構想は平成25年3月の発表であるから、その後6年が経過している。新コンベンションセンターの建設は、いったいどうなっているのだろうか。