神戸市 人口100万人割れの衝撃

【神戸人口ビジョンの改定】神戸市“独自”算定による将来推計人口をダッシュボードで公表

 神戸市では初めて独自の算定手法で将来人口推計を行い、このたび公表に至りました。(昨年12月に公表された国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」とは別手法で算定。)
 今回公表の推計の特長として、「独自の算定方法採用による精度向上」や「毎年度ごとの更新が可能」、「ダッシュボード(複数のデータを可視化)の活用」などがあげられ、目まぐるしい社会情勢の変化に対応した足許のトレンド把握が容易となり、今後の公共施設の再配置検討や人口規模を踏まえた施策の立案に活用していきます。
 また、この将来推計人口を「神戸人口ビジョン」にも位置づけ、次期総合基本計画策定事業では基礎資料とし、検討を進めていきます。

 

市内将来推計人口概要


・全国の動向と同様に人口減少は進行し、2070年には約88.9万人(約42%減)になる

・市内全ての行政区で人口が減少する(2050年時0.5%~33%減)

・老年人口(65歳~)は2044年にピークとなり、人口の約40%の48.8万人に達する


(推計期間は2023年から2070年までの約50年間(行政区別は2050年までの約30年間))

 

(神戸市記者資料提供(2024/2/14))

 

 神戸市が、独自の算定手法で将来人口推計を行い、これを公表した。今から約50年後の2070年には、神戸市の人口は88.9万人(42%減)となるとのことだ。

 

 この記事では、神戸市が「初めて独自の算定手法で将来人口推計」を行ったと、誇らしげに公表している。しかし、一般の人々にとって重要なのはそこではない。将来、神戸市の人口が激減してしまうということだ。現に、この発表は新聞では次のように報じられている。

 

 神戸市は14日、市人口が2063年に100万人を切るという推計を発表した市人口は減少が続いており昨年10月に150万人を割っていたが、100万人を切る予測が公になるのは初めて

 市が70年までの人口予測を独自に計算した。70年の人口は88万9171人になる見通し。(以下略)

 

朝日新聞 2024/2/14)

 

 昨年10月に神戸市の人口が150万人を割り込んだと発表したことは大きな話題となった。その衝撃も落ち着かぬうちに、将来人口の100万人割れのニュースを流せば、神戸市の「衰退」はより強固に印象づけられるだろう。これではまるで、自ら「衰退都市」と宣伝しているようなものだ。そのような影響は考慮しなかったのだろうか。このような宣伝に努めるよりも、人口を増加させる対策に力をそそぐべきである。

 

 この神戸市の状況の一方で、福岡市について次のような報道がなされている。

 

福岡の地価上昇、財政潤す 市税収入は過去最高3700億円
成長都市・福岡

 

 福岡市の財政が潤っている。2024年度の市税収入は人口増や再開発を背景にした地価上昇で固定資産税が増加し、初めて3700億円を突破する見込みだ。税収増で1人あたりの市債残高は04年度のピーク時から半分以下に減少、財政の健全化も進んでいる。借金返済を進めつつ子育て支援やインフラ整備など重点分野に財源を振り向け、都市の成長を加速させる。

(以下略)

 

日本経済新聞 2024/2/26)

 

 

 それはともかく、これは大変な事態である。ほぼ半減の状態となると、そのとき現在の市の形がそのまま残っているとは考えられない。

 人口減少は我が国全体で進むとしても、その影響は地域ごとに均等ではないはずだ。つまり、劣勢の都市は加速度的に劣勢となり、他の優勢の都市に集中する傾向があると考えられる。というのは、人口減少が進めば、これまで置かれていた都市機能の維持が難しくなり、他の大都市に集約されるという事態が生じるからだ。つまり、人口減少がある程度進むと坂道を転げ落ちるように加速度的に衰退すると考えられるので、もし、この前提が正しいとすると、おそらく上記の予想をはるかに超える人口減少が現出すると思われる。

 神戸市はもっと危機感を感じなければならない。そして、このような結果を、何の対策案もなしに、嬉々として公表する感覚を疑う。

 

 神戸市は、久元市長の就任以来、有効な人口増加対策を講じず、「人口減少社会」という言葉を積極的に用いて、日本の人口減少問題を一手に引き受けるかのようだ。

 悪いことは早めに予想するということは悪いことではないと思う人があるかもしれないが、社会現象については必ずしもそうとも言えない。なぜならば、社会現象には、「予想が現実を招き寄せる」という傾向があるからだ。人口問題もそのような性質を帯びている。

 社会現象には、人々の予想というものが少なからず影響を与える。人々は現在のトレンドの先に未来を予測する。栄える都市と衰退する都市、人々はどちらに住み、また投資することを選ぶだろうか。将来、衰退が明らかであるのに、わざわざ投資をするだろうか。都市の選択において、人々は「勝ち馬」に乗ろうとするはずだ。都市の管理者とも言うべき神戸市が公式に、将来、人口が半減するといっているのに、人々はどうして自らの生活や財産を委ねることができるだろう。将来が明らかであるなら、まだ未来があると思われる選択肢を選ぶのは自然なことだ。

 

 

 このような予測をする一方で、有効な対策を提示せず、「人口減少時代にふさわしいまちづくり」と嘯(うそぶ)いている姿は、どこか他人事で、無気力であるとさえ感じられる。

 

 

 

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