神戸市の人口 150万人割れが目前に

 神戸市の人口が150万人を割り込もうとしている。2011年をピークに下降局面に入り、少子高齢化による死亡者数の増加などを背景に近年は減少ペースが加速。23年中には01年以来の140万人台になることが予想され、人口減少の波が「150万都市」を揺さぶり続けている。

 同市の推計人口は4月1日時点で150万1678人。1年前と比べて約7千人減少し、今年に入ってから毎月約2千~3千人減っている。(略)

 

 神戸市によると、人口減少を招く最大の要因となっているのが、出生と死亡に基づく自然増減だ。07年から連続で減り続ける中、その数は年々大きくなっており、22年の自然減は年間9173人を数えた。転出入を見ると、外国人の増加などで転入超過が続くが、自然減を補うには至っていない。

 市が20年に改訂した「神戸人口ビジョン」では30年に145万4千人まで減り、60年には111万人までの減少を想定する。市の担当者は「高齢化率が高いので自然減は当面続く」とみる一方、通勤・通学目的で神戸に滞在する昼間人口は多いとし、こう指摘した。

 「働く場所としてのニーズがあるのならば、住みたくなる環境や施策をより一層充実させる必要がある

 

神戸新聞 2023/5/5)

 

 神戸新聞が、神戸市の人口が今年中に150万人を割り込む見込みであることを報じている。

 神戸市の人口減少問題は、これまでも度々論じてきたが、少子高齢化による自然減の拡大の問題ではない。神戸市の都市活力の衰えによる社会減の問題なのだ。下の表は、2020年(令和2年)の政令指定都市各市の人口増減の順位をまとめたものである。神戸市は、第19位と、政令指定都市の中で京都市に次いで人口減少数が大きかったことになる。この表を見てもわかる通り、政令指定都市のうちでも、ほとんどの都市が自然減となっている。つまり、我が国全体の社会の高齢化を受けて、自然減は各市ほぼ共通の事象である。しかし、すべての都市が人口減となっているわけではなく、ほぼ半数の都市は人口が増加している。大阪市横浜市、札幌市は、神戸市よりも多くの自然減が発生しているにもかかわらず、人口は減少していない。その違いを生み出すものは、各都市の社会増減の動向である。都市部においてはなお人口集中の傾向があり、その勢いの差が人口の増減を左右しているということがわかる。

 下の表において、10位以下の都市は人口が減少した都市となり、自然減を社会増で補うことができなかったということになる。その中でも、社会減となっているのは、神戸市のほか、熊本、堺、北九州、京都の4市のみである。

 

政令指定都市の人口増減の状況(2020年(令和2年))

(神戸市HP「大都市比較統計年表 令和2年版」から筆者が作成)

 

 

 日本全国で自然減が生じている中で、人口が増えている都市と減少している都市がある。この違いにこそ着目しなければならない。すべての大都市が一律に人口が減少しているわけではなく、都市部の人口増加が続く傾向の中で、神戸市の人口が減少を続け、人口順位を低下させ続けていることが問題なのだ。

 冒頭の報道では、神戸市の人口減少は、自然増減が最大の要因で、社会増減がそれを補うには至っていないとしているが、わざわざこの問題を取り上げるのであれば、もう少し掘り下げをしてほしいところだ。

 

 神戸市の久元市長は、神戸市の人口減少問題を語る時にも好んで「人口減少社会」と言うが、我が国の人口減少の問題と神戸市の人口減少の問題は全く別問題である。これを同列に語ることは、問題を覆い隠すことになってしまう。神戸市の人口減少問題は、神戸市の都市活力の低下、具体的には都市の経済活動の不振という真の問題を直視しなければ、有効な対策をとることができないだろう。

 言葉ひとつであるが、「人口減少対策」と言ってしまうと、どうしても、「減少の抑制」に意識が向けられ、街灯の増設や老朽化したインフラの更新、空き家対策など、人口減少に伴う環境悪化を防ぐ守りの姿勢や現状維持的な発想となってしまう。だから、同じ言うなら「人口増加対策」と言うべきで、人口増加させるには、新たな産業や都市施設の新設や拡充、都市機能の強化など、目指すべき都市像の設定とそれにどう近づけていくのかという動態的な攻めの発想が必要になってくる。

 都市の人口増加対策は、同一都市圏内の人口の再配分だけでは意味がない。都市圏全体として、経済活動、社会活動など都市活動が活性化し、国内、世界から人が集まる、都市の吸引力を高める施策が必要だ。

 リーダーの役割は、現実を正しく把握し、適切な目標を掲げることだ。久元市長は、その役割を発揮できているだろうか。

 

 

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 最後の神戸市の担当者のコメントはどうだろうか。

 「高齢化率が高いので自然減は当面続く」として、自然減が最大の問題という考えを示す一方、「通勤・通学目的で神戸に滞在する昼間人口は多い」とし、「住みたくなる環境や施策をより一層充実させる必要がある」と述べている。つまり、神戸市に居住していないが、神戸市に通勤・通学目的で通う昼間人口を取り込むことにより人口を回復させようということのようだ。そして、その方策として「住みたくなる環境、施策をより一層充実させる」ということだという。

 神戸市は、近時、駅前の再整備や街灯の増設などを精力的に進めているが、こうした考え方に基づくものだろう。

 都市の活力という点から都市の人口を考えると、昼間人口こそが都市活動の活性度のバロメーターであると考えられる。都市活動の多寡によって、昼間人口が決まり、昼間人口によって夜間人口が決まる。つまり、次の図式が成り立つ。

 

 都市活動の活性度 → 昼間人口 → 夜間人口 

 

 都市の人口増加の鍵は、都市の活力の向上、すなわち経済活動の活性化にある。つまり昼間人口を増やすための方策が必要がある。それに取り組むことなく、単なる同一都市圏内での人口の呼び込みを進めるだけでは、結局、問題の根本的な解決にはならないだろう。

 

 

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