少子化問題について(1)

我が国の少子化の現状と未来

 

 我が国の少子化問題については、様々なところで論じられているが、内閣府のホームページに「選択する未来」委員会の報告書(「報告」)が掲載されている。「選択する未来」委員会は、経済財政諮問会議が平成26年1月に設置した委員会で、今後半世紀先を見据え、持続的な成長・発展のための課題とその克服に向けた対応策について検討を行ったものだ。

 

●将来推計-現状のまま推移した場合、100年後には現在の3分の1まで急減

 


 国立社会保障・人口問題研究所は、「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」において、日本の将来推計人口を算定している。

 将来推計人口とは、基準となる年の人口を基に、人口が変動する要因である出生、死亡、国際人口移動について仮定を設け、推計した将来の人口である。(中略)

 その結果に基づけば、総人口は2030年の1億1,662万人を経て、2048年には1億人を割って9,913万人程度となり、2060年には8,674万人程度になるものと推計され、現在の3分の2の規模まで減少することとなる。さらに、同仮定を長期まで延長すると、100年後の2110年には4,286万人程度になるものと推計される。

 


内閣府HP 選択する未来 ‐人口推計から見えてくる未来像‐ (平成27年10月28日発行)(2015年12月2日))

 

 

「選択する未来」委員会 : 経済財政諮問会議 - 内閣府 (cao.go.jp)

 

 これによると、我が国の人口は、2048年(今から25年後)には1億人を割り、2060年には現在の3分の2の規模まで減少、2110年には現在の3分の1の4,200万人程度になると推計されている。

 

 

 少子化の問題を考える場合に、「合計特殊出生率」の値が一つの目安となる。

 「合計特殊出生率」は、女性が出産可能な年齢を15歳から49歳までと想定し、ある時点における、出産可能年齢の女性の数を分母とし、その年代の母親が産んだ子供の数を分子として算定する。(正確には注のとおり)単純に言えば、この値が2.0であれば、生殖年齢にある男女に相当する子供が生まれることになる。ただし、実際には男性の数が女性の数を幾分上回るので、生殖年齢にある男女の人口の維持に必要となる出生率は2を少し超える値だといわれている。

 

 

 「報告」によると、現在の我が国の合計特殊出生率は、2005年には過去最低の1.26となったが、その後は微増に転じ、直近(2014年(概数))は1.42であるとしている。このことが意味することは、生殖年齢にある男女2人に対して、1.42人しか生まれていないということであり、これは単純再生産レベルの7割程度しかないことになる。つまり、1世代ごとに人口が3割減少するということである。とすると、おおまかに計算すると、1世代で3割減、2世代でさらにその3割減と、3世代続くと当初の3分の1の水準(0.7×0.7×0.7=0.343 ≒ 1/3)になってしまう。1世代をおおよそ30年とすると、3世代はおおよそ100年に相当するから、先ほどの「報告」とほぼ合致する。さらに長期間、このような状態が続くなら、人口は限りなくゼロに近づいていくことになる。

 そして、この「報告」後、合計特殊出生率は、さらに低下傾向で、2021年は1.30、2022年は1.27となっている。

 

 これは大変な事態である。このような状況が続けば、社会の発展どころか、社会の維持すら困難となり、インフラは崩壊し、国土が荒廃してしまうおそれすらあるだろう。

 これは、今はやりの言葉で言うと、「持続可能な社会」とは言えないだろう。

 

(注)期間合計特殊出生率


 女性が出産可能な年齢を15歳から49歳までと規定し、それぞれの出生率を出し、足し合わせることで、人口構成の偏りを排除し、一人の女性が一生に産む子供の数の平均を求める。

 ある年において、f(x)を「調査対象において、年齢の女性が一年間に産んだ子供の数」、g(x)を「調査対象における年齢の女性の数」とすると、その年の合計特殊出生率は 49 ∑ x=15(f(x)/g(x))で表される。

 一般に合計特殊出生率とは期間合計特殊出生率を指す。

 

Wikipedia合計特殊出生率」)

 

 

合計特殊出生率について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)