総務省の住民基本台帳に基づく人口動態調査で、神戸市に住む日本人の人口減少数が全国ワーストだったことなどを受け、神戸市は4日、新たな人口減少対策「リノベーション・神戸-人にやさしく明るい神戸へ」の第1弾を発表した。駅周辺・通学路の街灯や防犯カメラの大幅増設など10項目を盛り込んだ。
(神戸新聞 2019.9.5)
人口減少に悩む神戸市が、新たな人口減少対策の第1弾を発表した。1 明るいまち、2 駅前空間の刷新、3 やさしいまちの3つの観点から神戸のまちのリノベーションに着手するとしている。
神戸市 人口減少対策「リノベーション・神戸」
~人にやさしく明るい神戸へ~第1弾に取り組みます!!
神戸のこれまでの歴史・資産を活かしながら、神戸のまちや人が新たな輝きでつつまれるようなリノベーションに着手し、まちの質・くらしの質を一層高めることで、都市ブランドの向上と人口誘引につなげるプロジェクトとして、「リノベーション・神戸 ~人にやさしく明るい神戸へ~」をスタートします。
今回はその第1弾として、以下のリノベーションに着手します。1 明るいまち
① まちなか街灯の大幅増設とLED化対応
・駅周辺、通学路などを中心に街灯を1.5倍に増設
・市内すべての街灯をLED化② 防犯カメラの大幅増設
2 駅前空間の刷新
① 駅前空間のクオリティアップ
② 駅前駐輪場のクオリティアップ
③ 鉄道事業者との連携による駅舎の美装化
④ 駅前空間でのLED街灯の増設/駅前駐輪場のLED化
⑤ エリアの拠点となる駅周辺の再整備・機能アップ
3 やさしいまち
① 子どもの誕生をお祝いする「こべっこウエルカム
プレゼント」
・神戸で子育てする魅力づくりの一環として、出生時に、
神戸のベビー用品ブランドの商品や絵本、神戸にゆかり
のある品物などを掲載したカタログギフトを贈呈
② 「ひきこもり」相談支援体制の充実
③ 犯罪被害者支援体制の充実
(神戸市HPから抜粋)
http://www.city.kobe.lg.jp/information/press/2019/09/20190904040101.html
神戸市が、これを人口減少対策の第1弾と銘打って発表したことに、驚きを覚える。
まちの明るさをアップすること自体は悪いことだとは思わないが、それが人口減少対策になるだろうか。街灯を1.5倍に増設するというが、そもそも神戸のまちは暗くない。周辺都市と比べても、神戸はむしろ明るい方だろう。定例記者会見の中で、久元市長は「若者と対話すると、神戸は夜が暗いと指摘されることが多かった」と述べたそうだが、それは、おそらく神戸の繁華街と大阪の繁華街とを比較して述べられた意見で、住宅街とはまったく別の話だろう。
神戸の人口減少は、神戸の住環境の悪さが原因ではない。原因は住宅需要の不足によるもので、住宅の供給側の問題ではない。ところが、久元市長は、供給側の改善を図ろうとしている。原因にそぐわない施策が効果を上げることはないだろう。
記者会見の中で、人口減少対策は年度内に3回に分けて発表する計画であることを示し、「第1弾は神戸の魅力づくり、グレードや質を高めることで神戸に住みたい人へのアピールを強める」と述べ、「第2弾は、住宅供給など、もっとストレートに人口増につながる対策にできないかと考えている」と述べ、あくまでも住宅供給側の視点のようだ。
また、出生時に、神戸のベビー用品ブランドの商品や絵本、神戸にゆかりのある品物などを掲載したカタログギフトを贈呈する「こべっこウエルカムプレゼント」については、カタログギフト欲しさに神戸に住居を移す人がいるとも思えないし、単にバラマキにすぎないのではないだろうか。
ひきこもり相談支援体制の充実や犯罪被害者支援体制の充実を魅力に感じて神戸に転入する人があるだろうか。
久元市長が人口減少対策に「全力で取り組む」と言ったときから、「あらゆる施策」を取るのではないかと懸念していたが、まったくそのとおりとなった。
本当の原因はどこにあるのかをよく分析し、その根本に効果を及ぼす施策に集中すべきだ。他にやるべきことが山積している中で、因果関係がよくわからない、雑多な小規模の施策に資源を分散投入すべきではない。
これでは、来年度も神戸市は人口減少のワースト都市に名を連ねることになるのではないだろうか。