神戸空港新ターミナル 整備事業概要決定

 神戸空港を管理する神戸市は、国内・国際一体型のターミナル施設「神戸空港サブターミナル」(仮称)の事業概要を5月10日に発表した。2025年に開かれる大阪・関西万博を視野に、国際チャーター便の運用と国内線発着枠の拡大に向け、同年3月末の供用開始を予定する。

 サブターミナルは、現在の旅客ターミナルから見て北西に整備する。地上2階建ての鉄筋造で、延床面積は1万4600平方メートル、建築面積は1万2900平方メートル。出発・到着ロビーと保安検査場、搭乗待合の旅客機能を1階に集約し、階層移動が少ない構造にする。

(略)

神戸新聞 2023/5/11)

 神戸市は神戸空港の2025年の国際チャーター便運用開始・国内線発着枠の拡大に向けて国内・国際一体型のターミナル施設の整備を行うため事業者の公募を行っていたが、このほど整備事業者が決定し、新ターミナル(サブターミナル)の事業概要が発表された。

 

(出典:神戸市 記者提供資料(2023年5月10日))

 

神戸市:神戸空港 新ターミナルの整備 (kobe.lg.jp)

 

 発表された事業概要を見て気が付くことは、まず、新ターミナルの設置場所である。以前に公表されていた計画案(下図)では、新ターミナルは、現在のターミナルの西側の、管制塔などの空港管理施設を挟んで反対側の場所に位置していたが、発表された事業概要では、空港管理施設の北西側に建設されることになっている。以前の案では、空港の駐機場に面した場所であったが、少し奥に入る形となる。元々、ボーディングブリッジは設置せず、バスハンドリングによる搭乗を想定していたので、必ずしも、駐機場に隣接させる必要はないと判断したのだろう。

 

 

 いつ、このような変更がされたのかと、今回の事業者の公募・選定の入札関係資料
(要求水準書及び提案の要件)を見ると、事業実施予定地について次の資料があった。

 

 

 この資料には、新ターミナルは図の赤枠内に建設敷地を設定することと記載されている。今回採用された事業計画は、この赤枠に掛かる最も東寄りに位置を定めたことになる。

 この新ターミナルの最大の懸念点は、交通アクセスである。当初の計画でも、ポートライナー神戸空港駅からかなり隔たった場所にある。主として団体客の利用によるチャーターバスの送迎を想定しているのかもしれないが、それでもなんらかの移動手段を設ける必要があると考えられていた。この事業計画では、当初の計画よりは、かなり東寄りに位置することになり、神戸空港駅および現空港ターミナルとの距離は縮まったものの、やはり利用者のためにはなんらかの交通手段を設ける必要があるだろう。

 この問題については、次のような報道がなされている。

(略)

 新たなターミナルは駐機場に隣接せず、消防庁舎や管制塔など空港施設をはさんで建設する。このためターミナルビルから航空機に直接乗り込めず、バスでの移動が必要になりそうだ。加えてポートライナー神戸空港駅から新ターミナルビルまでは、約400メートルの距離がある。10日の定例記者会見で久元喜造市長は、駅とターミナルビルの間について「当面はバスの移動になるが、できるだけ早くLRT(次世代型路面電車)を敷設したい」と話していた。

 

(神戸経済新聞 2023/5/11)

 

 駅と新ターミナルビルの間は当面バスによる移動が想定されているようだ。

 ポートライナーの延伸を期待する声もあるが、神戸市にはそのような考えは毛頭なさそうだ。ならば、今回の事業計画のような空港から奥まった場所に設置することができるのであれば、いっそのこと、もっと東側に敷地を移して、現ターミナルの神戸空港駅を挟む北側の駐車場の位置に建設すればどうだろうか。ここならば、神戸空港駅の真正面となるし、現ターミナルとの往来にも便利だ。どうせ、搭乗する飛行機まではバスで移動するのだから、駐機場から距離が少々離れていても問題はないだろう。現在の案のように、神戸空港駅からバスに乗って新ターミナルに到達し、そこから再びバスに乗って飛行機まで移動することと比較すると、利用者の負担ははるかに少なくなると考えられる。空港島にはまだまだ空地があるから、駐車場の場所を移すことは容易にできるのではないだろうか。緑地の位置は、新ターミナルの場所を定めてから決めればよいだろう。そもそも、事業実施予定地(赤枠)は、なぜ、その場所と定められたのだろうか。

 神戸空港は、アクセスとしてポートライナーがあるおかげで、空港までのバス路線がかえって広がりにくい傾向がある。となると、今後もポートライナーが主たるアクセス手段であるという状況は変わりないだろう。ポートライナー神戸空港駅までやってきて、そこからわずかな距離をバスで移動させ、さらに飛行機まで再びバスに乗せるというのは、少々不格好ではないだろうか。いくらターミナルがおしゃれであっても、神戸空港の印象はすこぶる悪くなるおそれがある。神戸空港は、ポートライナー神戸空港駅の改札を出てすぐに搭乗できる利便性が高く評価されている。ここで、バスへの乗り継ぎを強いるなら、手間と時間を費やすことになり、せっかくの都心近接の神戸空港の利点を大いに減じることにもなる。

 久元神戸市長は「当面はバスの移動で、できるだけ早くLRTを敷設したい」と述べたようだが、いったいどことどこを結ぶことを考えているのだろう。今年1月には神戸空港と三宮を直結させる地下鉄新線の整備を検討するということが報じられたばかりだ。先行きに不安を覚える市長の発言だ。

 

 

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 神戸空港では、この新ターミナル(サブターミナル)の設置後、国際定期便の就航に向け現在のターミナルがある場所およびその東側を敷地として新たなメインターミナルを建設(あるいは増築)することになる。メインターミナルの完成後、この新ターミナルはどうなるのだろうか。神戸市のHPを見ると、次のような回答がある。

 

神戸市:神戸空港サブターミナル整備基本計画(案)に関する市民意見募集手続きの結果 (kobe.lg.jp)

 

 国際定期便が就航する2030年前後以降についても、サブターミナルが有する防災機能やにぎわい空間などの機能も活かしながら、既存ターミナルと一体的に運用してまいります。

 

(神戸市HP「神戸空港サブターミナル整備基本計画(案)に関する市民意見募集手続きの結果」)

 

 新ターミナルは、ユニバーサルデザインの導入を求められているが、オープンスポットにおいて飛行機にタラップで搭乗することは根本的にバリアフリーと相容れない。したがって、バスハンドリングを前提とする、この新ターミナルは将来的には空港ターミナルとしては使用できない、あくまでもメインターミナルが完成するまでの仮設的な施設と考えざるを得ないだろう。

 新ターミナルのコンセプトは、「基本計画」によると「海に浮かび、森を感じる。」とされているが、空港は交通機関であるから、まずは機能面にこそこだわるべきで、デザインや眺望等はその次の問題と考えるべきだろう。仮設的施設に、それほど高いデザイン性を求めるべきであろうか。むしろ、簡素で平易な仕様として、建設費を抑制し、新たなメインターミナルにこそ資源を集中すべきではないだろうか。

 

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