神戸市の人口減少対策第2弾

 本市は、本年9月に、まちや人が新たな輝きでつつまれるようなリノベーションに新たに着手し、まちの質・くらしの質を一層高めることで、都市ブランドの向上と人口誘引につなげるプロジェクトとして「リノベーション・神戸」をスタートさせました。
 この度、その第2弾として「リノベーション・神戸(第2弾)~見違えるような神戸へ~」を公表いたします。今後、来年度当初予算案の公表時期にあわせて、第3弾をとりまとめの上、公表する予定です。

 

1.第2弾のコンセプト

〇見違えるようなリノベーションを施し、心躍る駅前空間へ

・「駅」は、その地域の佇まいや雰囲気を印象付ける「顔」となる重要な空間です。

・第2弾では、市西部の3駅の拠点性を高めるため、業務・商業機能、行政機能、文化・子育て環境等の充実を図る整備を進めるとともに、駅周辺の住機能を強化し人口誘引を目指します。

 

2.今回リノベーションに着手する駅前空間とプランコンセプト

①市営地下鉄「名谷駅」周辺 「名谷活性化プラン~躍動する多世代共生のまちへ~」

②JR・山陽「垂水駅」周辺 「垂水活性化プラン~生まれ変わる海辺のまち~」

③市営地下鉄「西神中央駅」周辺 「西神中央活性化プラン~進化する上質なまち~」

(以下略)

(神戸市HP 2019年12月18日)

神戸市:神戸市人口減少対策「リノベーション・神戸」第2弾~見違えるような神戸へ~を公表

 

 12月18日、神戸市の人口減少対策第2弾が発表された。

 第1弾は「人にやさしく明るい神戸」で、人口減少対策としてはあまりの意外な内容に衝撃を受けたが、第2弾はどうだろうか。今回は、第1弾ほどの強烈な違和感は感じないが、効果のほどはどうだろう。

 プランでは、駅ビルや駅前商業施設のリニューアル、図書館の整備、駅周辺の環境整備を行うとともに、2020年度からの5年間で約1850戸、5000人分の住宅を新規供給するという。

 住宅の新規供給については、一見、多いような気がするが、1年あたりでは1000人ということになる。神戸市の昨年(2018年)一年間の人口減少数は5,001人であるから、これだけを見ても決して十分な数字とはいえない。さらに、5000戸がすべて供給されたとしても、すべてが市外からの入居というわけでもなく、市内からの転居もかなり多いと考えられるから、人口増加の効果はさらに少なくなるだろう。

 仮にいくらかの市内人口の増加が実現したとしても、都市の人口を規定するものはその都市の雇用力であると仮定すると、雇用数が一定であれば、神戸圏内部での人口の再配置にしかならないと考えられる。

 つまり、人口減少の対策としては、住宅供給ではなく、住宅の需要を増やすこと、神戸で働く人口の増加を考えなければ、根本的な解決にはならない。そもそも、住宅の需要が十分にあれば、住宅供給は行政が施策を行わなくても自然と増加するはずだ。

 神戸は、都市の発展、特に神戸港とその周囲の造船や鉄鋼等の重厚長大産業の発展に伴い、それらの勤労者用の住宅として垂水区須磨区、北区、西区の住宅地が新興住宅地として開発されてきた経緯がある。しかし、重厚長大産業は勢いを失い、それに伴って雇用力を喪失し、これらの新興住宅地で育った世代の働き口が神戸市内では十分提供されず、若年世代の大幅な流出超過が生じている。これが、神戸の人口減少の基本的な構造だ。したがって、十分な働き口をつくることこそが、現在の神戸に求められる施策ということになる。過去の高度経済成長時代のように、郊外に住宅を供給すれば人口が増加するという根拠はない。なお、北区や西区については、広域交通網の結節点に位置するという利点を活かして、産業施設を集積し、職住近接にも努めるべきだ。

 なお、実際に、今回の計画に上がっている住宅供給プランを見ても、垂水区の再開発など、これまで計画が進められてきたような案件も含まれている。そのように考えれば、第2弾というものの、既存の施策に聞こえのよい看板をかけただけのようにも思える。

 ニュータウンをリニューアルすることは当然のことなのだが、それは人口減少対策として行われるものではなく、単に街の維持管理に属することなのだ。そういう意味で、今回の施策も第1弾のレベルを超えるものではない。

 今回の第2弾は、華々しく打ち出されたが、平常の施策の延長線上にあり、特別なことは何も行われていないといってもよいように思う。数字だけを見れば、大きな施策を打ったように見える。しかし、上記で見たように、人口減少対策としては効果は限定的で、本来やらなければならない、神戸市の拠点性の回復、雇用力の増強が行われないままとなってしまうことが懸念される。有効な施策を第3弾に期待しよう。

(補論)

 ちなみに、「リノベーション」とは、英語の”renovation”で、日本語に直すと改修、建物のリフォームの意味だそうだ。今回のプランはまさにリノベーションにぴったりだ。しかし、リフォームで現在の神戸の人口が増えるとは思わない。必要なのは「再構築」であろう。時代に変化に合わせて、従来から持っている資産を転用し、新しい意味づけを与えること。単に資産をリフォームして守るだけではなく、意味付けを変えること。そのために必要な投資を行うこと。発想自体を変えることが必要だ。