兵庫県議会(定数86)に不信任決議を全会一致で可決された斎藤元彦知事(46)は26日午後、県庁で記者会見を開き、県議会を解散せずに失職を選び、出直し知事選に出馬することを正式表明した。
(毎日新聞 2024/9/26)
全会一致で不信任決議を可決された斎藤兵庫県知事は、9月26日、県議会の解散を選択せず、10日間の経過による「失職」を選び、再度、知事選に出馬することを表明した。
これに対して、同日、神戸商工会議所の川崎会頭が次のコメントを発表した。
齋藤兵庫県知事の失職等表明に対するコメント
神戸商工会議所 会頭 川崎 博也
内部告発に端を発した県政のかつてない混乱が続く中、一連の対応において、県民が納得する説明責任を果たしてきたとはいえず、職を退くことは不可避であった と思う。
そのような状況において、自身で出処進退を判断すべきステージを超え、県議会全会一致の不信任決議の可決、知事失職という進退窮まる異例の事態にまで至ったことは、残念 と言わざるを得ない。
地域経済・社会において様々な課題が山積する中、兵庫県政の果たすべき役割は大きく、次年度予算編成をはじめ県政を前に進めていく上において、これ以上の停滞や空白は許されない。
ポスト齋藤県政においては、内外からの信頼と落ち着きを早く取り戻し、県民や事業者のための安定した県政運営が行われることをまず何よりも願う。
令和6年9月26日
(神戸商工会議所HPより)
兵庫県知事の失職等表明に対するコメント – 神戸商工会議所 (kobe-cci.or.jp)
神戸の経済界の代表というべき神戸商工会議所の会頭が、今回の内部告発問題について斉藤知事は「県民が納得する説明責任を果たしてきたとはいえず、職を退くことは不可避であった」との認識を示している。そして、斉藤知事の再出馬の意向にかかわらず、「ポスト斉藤県政」と明言していることは注目される。すなわち、斉藤県政の終了は当然のこととして、新たな知事によって「内外からの信頼と落ち着きを早く取り戻し、県民や事業者のための安定した県政運営が行われること」が今後の最優先の課題であるとの考えを示している。経済界が県知事に対してこれほど明確に「NO」を突きつけたのは、極めて異例のことのように思われる。まさに、今、求められるものは、不信と恐怖に陥ってしまった兵庫県政の、混乱の収束と信頼の回復である。
また、翌27日、久元神戸市長が、報道陣の取材に対して次のように自らの考えを述べた。
神戸市の久元喜造市長(写真)は27日午前、兵庫県の斎藤元彦知事が不信任決議を受けて失職することを表明した26日の記者会見について「違和感を禁じ得ない記者会見だった」と述べた。(略)「どうして(県議会が)全会一致で不信任になったのか、という点について斎藤知事自身から納得のいく説明はなかったように思う」との認識を示した。(略)
さらに「特に2人の職員の方が亡くなっている。(略)どうして2人の職員が亡くなるという悲しいことが兵庫県庁に起きたのか」。そのうえで「斎藤知事は亡くなった職員に感謝と哀悼の意を述べていたが、説明としては不十分だ」と指摘した。
斎藤知事が出直し選に再出馬することについては「通常の選挙とは異なり失職の受けての選挙だけに、政見や政策だけでなく、不信任に至った理由をしっかり説明されることと、問題になっている知事としての能力、資質を説明されることが今回の選挙ては求められる」と重ねて強調した。
(略)
斎藤氏の実績については「斎藤県政の3年間を全面的に否定するものではない。仕事をされてきた」という。一方で、斎藤氏が続けたいと言っている「改革」については「改革の中身が外郭団体だとかOBの処遇などとするなら、いわば兵庫県のマネジメントに関することであり、そういう点からすると私ば部外者」として評価を避けた。斎藤氏はハードよりもソフト面に力を入れたと強調していたことを聞くと、久元氏は「県が行われたソフト施策で、私としてこれは素晴らしいと思った施策は正直ない」と話していた。
(神戸経済ニュース 2024/9/27)
久元神戸市長は、この斉藤知事の会見について、県議会で全会一致の不信任となったことについて「納得のいく説明はなかった」と述べ、特に2人の職員がなくなったことについて「説明が不十分」と評した。そして、来る出直し選挙について、単に政策の内容だけでなく、兵庫県政に対する県民の信頼を取り戻すための、県知事の能力、資質が問われるとの考え方を示した。
やはり、久元神戸市長が指摘するのも、次の兵庫県知事に求められるものは、兵庫県政の混乱の収束と信頼の回復であるということだ。
また、県が行ったソフト施策で、「素晴らしいと思った施策は正直ない」ともコメントしたことも、目を引いた。
斉藤知事は、県議会において全会一致の不信任決議を受けた。このことは非常に重大なことである。つまり、すべての会派、すべての議員が、その政策や主義を超えて、一致して斎藤氏その人が県知事として不適格で、最早その地位にあるべきではないと判断をしたということである。そうした流れの中で、上記の神戸商工会議所会頭や神戸市長のコメントについては何の違和感もない。これが、その時点(9月26日時点)における、兵庫県民の意見の大勢であろう。
しかるに、不信任決議の頃から、突然に斎藤知事(前知事)を擁護する意見がSNS上に噴出するようになった。さらに、不信任決議後から失職までの期間に、反対派を交えない条件付きのテレビ各局への出演、不自然な市民の応援場面がテレビで挿入されるようになってきた。なぜ、この時期になって、突然にこのような動きが生じているのか不可解で、きわめて不自然な作為的な現象と感じられる。おそらくは、外部から、兵庫県民の民意を曲げようとする意図を持つ者が、これまでの兵庫県庁、兵庫県議会、兵庫県民の取り組みを否定し、問題をうやむやにし、斎藤県政の復活を企図しているものと推測される。
今回の斎藤県政の誕生は兵庫県史上未曾有の危機であった。その危機は、斎藤知事を批判する県民の声、兵庫県議会の全会一致の不信任決議、斎藤知事の失職という形でいったん終息をしたかのように見える。しかし、この期にいたって、その「斎藤知事」を擁護し、問題をなかったことにし、斎藤県政を復活させようとする強力な力が働いている。これは、これまでの兵庫県民の努力を水泡に帰そうとする動きであり、兵庫県民に対する挑戦ともいえるものだ。危機は去ったわけではなく、危機の第二幕が開けたというべきなのかもしれない。
我々に必要なことは、健全な価値判断と冷静沈着な態度である。そして、今後生じる様々な動きについて、その意図を見抜き、真実を明らかにすることである。真実こそ重要である。我々が恐れるべきは忘却である。今こそ、兵庫県民の「良識」が問われている。
(参 考)
今回の事件の発端となった兵庫県庁の職員に対する兵庫県議会 百条委員会によるアンケートの結果の全文が公開されている。
兵庫県職員アンケート(全文)
兵庫県職員アンケート調査」中間報告
兵庫県職員アンケート調査」中間報告以降ネット回答分報告
兵庫県職員アンケート調査」郵送回答分報告
(出典:兵庫県議会HP)