神戸空港と三宮直結、新地下鉄構想 国際便の就航を見据え、市が需要やルート調査へ

 神戸市が神戸空港と都心・三宮を結ぶ地下鉄新線の整備を検討していることが同市への取材で分かった。国際化が決まった同空港は、2030年前後の国際定期便の就航で国内外の利用客増が見込まれるほか、周辺の臨海部への企業進出によって開発が加速することも想定。都市部に近く便利な国際空港としてアクセス強化が必須とみて、23年に需要調査に乗り出す。

 

神戸新聞 2023/1/1)

 

 2023年の新年1月1日の神戸新聞に、神戸市が、神戸空港と三宮とを結ぶ新地下鉄構想について検討を進めており、新年度に調査を行う方針であることが報じられた。

 神戸空港に国際定期便が就航した際の年間旅客数は、市の試算では約700万人と予測され、過去最高だった2019年(329万人)の2倍以上になると見込まれる。そのため、神戸空港の国際化が決定以降、空港へのアクセス増強の必要性を唱える声が高まっていた。

 

神戸空港の国際化、朗報の裏に輸送パンクという消せない不安 ポートライナーは混雑が常態化

 

 9月18日、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の国際化が決定しました。これにより神戸空港の利用者が増えることが予想されますが、一方では利用者増加に伴う懸念点もあります。

(略)

■問題は空港アクセスの強化

 神戸空港利用者の増加は歓迎すべきニュースですが、懸念点も存在します。それが空港アクセス、特にポートライナーの増強です。
(略)
 国土交通省によるとポートライナーの2019年度最混雑区間は貿易センター→ポートターミナル間(8:00~9:00)で、混雑率は126%。最もこの混雑率は1時間あたりの平均値なので、ピンポイントではより混雑率が高くなります。
(略)

 現在はコロナ禍により減少はしていますが、今後、利用者数がコロナ禍前の水準に戻り、さらに国際線による空港利用者が増えると、輸送がパンクする恐れがあります
(以下略)

 

神戸新聞 2022/10/7)

 

 新神戸駅三宮駅と空港を結ぶ南北アクセス強化(鉄軌道整備)については、神戸商工会議所も神戸市に整備を要望している。

 

3.神戸空港の国際化


 神戸空港の国際化に向けては、関西3空港懇談会での一定の合意を得て、そのあり方について検討が進められており、当面、2025 年の大阪・関西万博開催を目途に準備を急ぐ必要があることから、以下の取り組みを早急に進められたい。
(1)神戸空港の将来ビジョンの明確化

   (略)
(2)神戸空港ターミナルの拡張整備と南北アクセス強化
 神戸空港の将来ビジョンを着実に前進させ、期待される機能を発揮していくためには、関西エアポート株式会社との連携はもとより、空港ターミナルビルの拡張整備や新神戸駅三宮駅と空港を結ぶ南北アクセス強化(鉄軌道整備)に、神戸市が主導的役割を果たしていくことが不可欠である。

 ついては、神戸空港への国際線就航の実現に向けて、まずは 2025 年大阪・関西万博の開催に照準を合わせ、関西エアポート株式会社との協議を最大限加速させるとともに、関係各方面との具体的な調整作業や受入体制づくりを急がれたい。

 また、「ポートアイランド・リボーンプロジェクト」をはじめとする空港を基点としたまちづくりとも連動を図りつつ、次代につながる発展性や計画性をもって、神戸空港の国際化に向けた施策に大胆に取り組まれたい。

 

神戸商工会議所「令和5年度 神戸市政に対する要望」(令和4年9月))

 

 一方、神戸市長は、神戸空港国際化が決まった関西三空港懇談会直後の記者会見で、神戸空港の交通アクセス強化に関する記者の質問に、次のように答えている。

 

久元市長:これは今、様々な検討を行っておりますが、ポートライナーをどうするのか、あるいは新たな新線を建設する、これは相当莫大な経費が要りますから、これについては検討は行っておりますけれども、まだ方向性は見えてはおりません

 

(神戸市長記者会見 2022/9/20))

 

 このような経緯の中での、今回の新聞報道であるが、この記事をどのようにとらえるべきだろうか。

 神戸新聞は、神戸市の施策について、これまでも、決して実現することがなかった構想、たとえば、阪急電鉄と市営地下鉄の直通化構想、ポートライナー8両化構想、ポートライナー三宮駅の拡張構想や、加納町交差点の立体交差化構想、神戸港海上ロープウェイ構想、新神戸=三宮間水路整備構想などの記事を度々流してきていることから考えると、今回もどれだけ実現可能性のある記事なのかは疑わしい。

 これまでの記事には、一部には実現の可能性以前にそもそもの必要性について疑問のあるような構想もあったが、今回の神戸空港のアクセス強化構想については、実際に必要性が高く、それを求める経済界の声も強い。なによりも神戸商工会議所の公式の要望書に掲げられているという点では、雲を掴むような話ではなく、今後の展開が注目される。

 今回の記事では、これから調査に乗り出すとしながらも意外なことに、「地下鉄新線として想定される二つのルート」という図表まで掲載されている。

 

(出典:神戸新聞 2023/1/1)

 

 筆者は、これまで、新神戸神戸空港を直通する交通機関の導入を提案してきた。それが下の図であるが、新神戸~三宮~神戸空港間をポートライナーの新線(紫色の実線部分)を建設する構想(ポートライナー複々線化)である。今回の新聞に掲載された想定ルートのうち、「東部ルート」(緑色の破線部分)とほぼ同一である。異なる点は、新神戸~三宮間が、今回のルート案にはない点である。

 

 

 新聞が報じるところによると、今回の地下鉄新線を建設した場合、建設費は2,400億円を上回るとされ、「現実的なアクセス強化策として、既にあるバス路線やポートライナーの輸送力の増強も視野に入れる」とのことだ。したがって、ポートライナー新線による神戸空港と三宮、新神戸との直通も可能性があるだろう。

 バス路線の案も上がっているが、これでは輸送力が不十分だと思われる。単純に、神戸空港の利用客数を年間700万人として、往復では1400万人の移動となる。1400万人は1日あたりでは約4万人となる。4万人をバスで輸送するとなると、バス1台の定員を50名とすると、バス800台分に相当する。これだけのバスを神戸空港と三宮、新神戸の間を運行させると考えると、バスでは多数の運転人員を要するし、環境にかける負荷も相当に大きくなるだろう。年間1400万人の人々の流動は、ポートライナーの2007年当時の乗客数が約1900万人であったことを考えると、決して少ない数ではない。そして、今後、沿線開発を進めていくと、さらに多くの乗客も見込まれるのではないだろうか。そもそも新線は、空港や沿線の一層の利用拡大をしていくためのものなのだから、今後のやりようで事業の成算は十分だと思われる。

 

 

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