羽田空港と成田空港から見る関西の空港問題

 日本経済新聞が、羽田空港について次のように報じている。

 羽田空港の国際線の発着数が、来年3月から現在の1日約80便から50便増加して1日約130便に拡大する。米軍が管制する横田空域で旅客機の利用が認められ、都心上空を通過する新飛行ルートの導入に伴うものだ。

 今回の増便で羽田空港の国際線旅客数は、現在の年間1800万人から700万人増え、2500万人に上るとみられている。これは成田空港の国際線旅客数3300万人の約75%に相当し、羽田空港の存在感が一段と増すことになる。

 羽田空港は東京の都心からアクセスがよく、運賃も高めとなり、成田空港はアクセスが悪いが運賃が安い格安航空が多く就航することになりそうだという。運賃よりアクセスを重視するビジネス需要は羽田空港、安い運賃を求める旅行等は成田空港という役割分担が考えられると報じている。(日本経済新聞 2019/9/2)

 

 羽田空港は、成田空港が完成するまで、首都圏唯一の国際空港として定期便が就航していたが、1978年に成田空港(新東京国際空港)が完成すると、一部の便を除いて国際線定期便は全て成田空港に移され、羽田空港は事実上、国内線専用空港となった。その後、2000年代になり、羽田空港の利便性が再認識され、国際チャーター便が運航されるようになり、定期便に限りなく近い「定期チャーター便」という方式も導入され、ついには2010年に32年ぶりとなる国際線定期便が羽田空港に就航した。その後も、羽田空港の国際線は拡大し続け、今回の増便により、羽田空港の国際線の便数が成田空港に迫る状態となった。また、アメリカのデルタ航空は、今回の羽田空港の増便を機に成田空港を撤退し羽田空港に拠点を移すことになった。

 

 羽田空港と成田空港の国際線の推移を見ると、交通機関というものは合理性が求められるものであり、どのような人為を施そうと、水が低きに集まるように、長い目で見れば、利便性の高い方に需要はシフトしていくということが理解できる。つまり、長期的には合理性が貫徹するのだ。

 これを神戸空港関西空港にあてはめればどうだろうか。ここでも、やはり、合理性が貫徹するだろう。長期的に見れば、関西の空港機能は、神戸空港に中心が移り、関西空港はその補完という役割に落ち着いていくことになるだろう。それは、当初、関西国際空港が計画されていたとおりである。

 建設経緯を見ると、関西空港は、大阪南部の振興を目的に現在地に建設されたものだ。ところが、「既得権」を握った周辺自治体はそれを手放そうとせず、当時、合意もなかった大阪南部への空港機能の集約を主張して譲らない。大阪南部の振興のために、関西圏の航空需要をむりやり集約するということは不合理だ。しかし、3空港の役割を見直そうとすると、益体もない雑言が吹き荒れる状況だ。これは関西圏の悲劇だ。しかし、長い目でみれば、合理性に抗うことはできないので、将来的には本来あるべき姿に収斂していくことになるだろう。

 しかし、そこに至るまでには、相当の期間を要し、激しい摩擦を生じる。そのように考えたとき、インフラ建設については、その決定を行った者の責任は重大であり、本来考えるべきではなかったことを潜り込ませた者、判断を歪ませた者の責任はきわめて大きい。

 

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