関空の発着枠、3割増の30万回に拡大を 促進協が要望

 関西空港の地元自治体と経済界でつくる「関西国際空港全体構想促進協議会」(促進協)は19日、関空の発着枠を現行の年23万回から3割多い30万回に拡大するよう、赤羽一嘉国土交通相に求めた。(中略)

 促進協会長の松本正義・関西経済連合会会長や大阪府の吉村洋文知事らが要望。吉村氏によると、赤羽氏は「3空港一体で(検討を)進めてほしい」と応じ、大阪(伊丹)・神戸空港との調整を求めたという。(中略)

朝日新聞 2019/9/19) 

 発着枠の拡大には飛行高度の規制緩和や新しい飛行ルートの設定、地元住民の合意などが必要とされている。

 関西国際空港全体構想促進協議会は、「関西国際空港2期事業の円滑な推進及び全体構想の早期実現を図り、もって世界への貢献と関西・我が国の発展に寄与することを目的に、関西の自治体・経済団体などから構成された団体」で、活動内容は、国等に対する関西国際空港に関する要望、関西国際空港の利用促進・利便性向上に関する事業、その他当協議会の目的を達成するために必要な事業となっている。同協議会の会長は松本関経連会長で、副会長には、吉村大阪府知事、松井大阪市長、永藤堺市長、仁坂和歌山県知事、尾崎大阪商工会議所会頭に加えて、井戸兵庫県知事、久元神戸市長が名前を連ねている。

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 このニュースについて、どう考えるべきだろうか。

 まず、要望を行ったのが、松本関経連会長と吉村大阪府知事の名前が挙がっているが、神戸側も要望に加わったのだろうか。要望先の赤羽一嘉国土交通大臣衆議院兵庫2区(兵庫区・北区・長田区)選出であることを考えると、神戸側も同席していただろう。

 次に、促進協の役員構成をみると、副会長7名のうち、5名が関西空港側のメンバーで、神戸側は2名に過ぎず、神戸側の立場がきわめて弱いことを痛感する。おまけに中立の立場の者(京都など)は役員に加わってはおらず、関西の総意を演出するため、ご丁寧にも副会長に兵庫県知事と神戸市長も就かされており、神戸はまさに首根っこを押さえられた状態であることがわかる。

 要望の内容は、関西空港の発着回数を現在の23万回から30万回へ、7万回を上積みすることを求めるものだ。今春の3空港懇談会で神戸空港は1日20回の発着回数増加が認められたが、これは年間でいうとわずか7,300回(0.73万回)にすぎない。関西空港は、実にこの10倍の発着枠拡大を求めたことになる。

 そもそも要望が、関西圏全体の発着回数でなく、関西空港の発着回数としたところにもひっかかる。3空港一体運営は名目にすぎないのだろうか。

  これに対して、赤羽国土交通大臣が、「3空港一体で進めてほしい」と述べたのは、3空港の最大利用という国の意向と相容れない、関西空港独占の強化とも見える要望案にクギを刺さざるを得なかったというところではないだろうか。

  赤羽国土相の発言について、新聞は、わざわざ「(検討を)」と書き加えているが、これも、3空港一体での発着枠拡大を求めるのが発言の真意であって、関西空港の発着枠拡大を一緒に検討するという内容に意図的に矮小化しているようにも思える。

 今春の3空港懇談会で、神戸空港規制緩和の動きがあったところだが、今回の要望を見れば、関西空港側の関西圏の航空需要独占の意思は全く変わっていないように思われる。わずかな規制緩和と将来における規制緩和の希望を材料に、関西空港独占体制に神戸が奉仕を求められることにならないか、警戒が必要だろう。

 今回の要望を、神戸空港規制緩和につながるものと歓迎する見方があるかもしれないが、現在のこの促進協の構成等を見ると、状況はまだまだ厳しいと言わざるを得ない。神戸は、今なお、神戸空港の利用を抑制してまでも、大阪南部の振興を目的に建設された関西空港の発展に奉仕させられる立場にあるというのが実態のようだ。

 神戸市としては、やはり、地道に利用客を開拓し、ユーザーの支持を増やしていくほかにはないのだろう。今回の3空港懇の規制緩和は、部分的な規制緩和かもしれないが、いったんくびきが緩んだチャンスには違いない。神戸市は、この機会を逃さず、迅速に神戸空港のターミナル拡大、アクセス強化に取り組み、神戸空港の港勢拡大に努めるべきだ。