ルミナリエの復活

 阪神・淡路大震災の犠牲者を悼み、記憶を継承する光の祭典「神戸ルミナリエ」について、組織委員会(会長=久元喜造神戸市長)は24日、来年1月19~28日に開催すると発表した。2019年以来の本格実施で、1月開催は初。密集を回避するため光の装飾を旧居留地と東遊園地、メリケンパーク(いずれも神戸市中央区)に分散配置する。

(以下略)

 

神戸新聞 2023/7/24)

 

 新型コロナウイルスの影響で、しばらく開催が見送られてきた神戸ルミナリエが4年ぶりに復活することとなった。

 このたびの復活に合わせて、ルミナリエの開催方法が一部変更されるようだ。主な変更点は次の通りである。

(1)開催期間を従来の12月から1月に変更

(2)会場を一部メリケンパークに変更

(3)一部有料化

 

 これに対する人々の反応はどうだろうか。

 上記の記事に対するネットでのコメントを見ると、1月開催については概ね賛成意見が多かったが、そもそもルミナリエの継続に批判的な意見も多く見られた。その理由として、ルミナリエが震災の犠牲者の鎮魂をうたいながら、単なる観光イベントになってしまっているという点を指摘する者が多かった。

 

 ルミナリエは、阪神・淡路大震災が発生した1995年に初めて開催された。1月17日、大地震に見舞われ、美しかった神戸の街は一瞬のうちに瓦礫と化し、多くの人が犠牲になった。被害はあまりに甚大で、市民の多くが街の復興に自信を持てなかった頃、その年の12月にルミナリエが開催された。ルミナリエは口づてに大きな評判となり、その光を見に多くの人々が神戸の都心に戻ってきた姿を見て、神戸の復興の希望を見たという市民の共通体験に基づくものである。ルミナリエに対する思いは様々であると思うが、元々は、うちひしがれた人々を励まし、勇気づけるということが趣旨であり、犠牲者を悼むという趣旨ではなかったように思う。後者の趣旨では、1月17日の震災記念日がある。つまり、1月17日は鎮魂、ルミナリエは復活・希望と、両者は同じ震災を記念する行事ではあるが、全く別の性格を持っている。震災の記念ということを理由に開催時期を同じ1月に変更することは、その由来からは正確ではなく、かえって、震災記念日とルミナリエの異なる趣旨が互いに干渉しあって、結果的にルミナリエの賑わいに水を差すように思う。したがって、これまでどおり、ルミナリエは12月に開催すべきだと考える。

 会場の変更については賛成であるが、会場は分散すべきではない。過去にも、ハーバーランド新神戸駅に分散会場を設けたことがあるが、いつの間にか廃れてしまった。ルミナリエは、街区全体を会場とする規模の壮大さで見せるものだ。小規模のものを各所に分散しないで、1カ所に集中すべきだろう。メリケンパークからハーバーランド区間が会場として適しているのではないか。

 コメントでは、ルミナリエを、震災復興の名を借りた金儲けのための観光イベントと揶揄する意見も多く見られたが、ルミナリエは、1995年1月に現実に起きた歴史的な大災害とその渦中から生まれたという事実は、やはり重く受け止められるべきだ。それは、フィクションではなく、そのとき、その場にいた人が実際に感じた恐怖、悲しみ、不安、復活への希望という歴史的な事実に基づくものだ。現在あの大災害を思い出させる遺物はそれほど多くはない。しかし、ルミナリエは、毎年行われ、あの大震災を人々の念頭に呼び起こし、いつかまた襲うだろう大災害に思いを至らせる。ルミナリエは、あの大災害が遺した最大の「モニュメント」なのだ。それは、未来に向かって、神戸の人々だけではなく、全国の人、世界の人を救う希望の灯りとなるに違いない。

 

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