ルミナリエの進化(3)

 今年のルミナリエの来場者数が、好天にも恵まれ、順調に推移しているようだ。このままであれば、2013年(平成25年)以来、6年ぶりの350万人超えもあるかもしれない。

ルミナリエ 一日あたり来場者数)

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(※ 2019は予想)

 

 グラフを見てもわかるとおり、ルミナリエの一日あたり来場者数はここ数年増加傾向にあり、全盛期に迫る勢いである。ルミナリエは始まってから数年たつと、パターンが固定化しマンネリ化が否めなかったが、ここ数年で、従来のパターンを破るような、構成の多様化、細密化、動態化等の変化が見られるようになってきた。来場者数の復活は、これらの変化が功を奏したものだと考えられる。今後も、新しいアイデア、工夫をどんどん取り入れ、日本最大の光の祭典の地位を不動のものとしてほしいところだ。

 

 従来から問題とされていた、周囲の店舗への悪影響については、実際に歩いてみると、元町から三宮にかけて、歩道は鉄柵で囲われ、出入りが制限されている様子が確認できる。したがって、そのような苦情の原因となる状況があるのも、やはり否めないのではないかと思われる。

 この問題の解決方法の一つとして、会場の変更が考えられる。ルミナリエは夜間に行われるので、周囲の街並みはあまり関係がない。むしろ、明るくならないように照明を落としているくらいだ。また、市の中心部で行われているというものの、元町から東に進み京町で西へ折り返し、大丸前で播磨町を南に下るという誘導路となっており、その間、5~600メートルはあるだろうか。それだけの距離を歩くのであれば、メリケンパークで開催することも可能なのではないか。メリケンパークであれば、元町駅ばかりでなく神戸駅にも近く、交通が便利である。もともとが観光地であり、周囲への悪影響もあまり考えられない。かえって、最近、元気がない元町商店街にとっては好影響を与えるのではないだろうか。

 一つ問題となるのは、市街地側から、国道2号線を超え、メリケンパークへ渡る部分が、陸橋しかなく、導線としての容量が小さい点である。これについては、陸橋ではなく、大規模な地下ロータリーを新たに建設してはどうだろうか。国道2号線の地下に大きなロータリーを建設して、そこへ複数の降り口(階段やスロープ)を設けるわけだ。イメージとしては、ハーバーランドの地下街の店舗のないようなものだ。これがあれば、現在でも危険なまでに混雑している花火大会の導線にもなるし、日頃からメリケンパークへ人の足が向くようになるのではないだろうか。こうした施設を、できれば、税関前交差点など複数箇所に設置すれば、臨港地帯への導線が大幅に改善し、今後の大規模イベントにも耐えられるようになるだろう。税関前に大規模な陸橋を建設する計画があるが、導線としての容量が少なく、地上部の景観から考えても地下ロータリーの方がよいと思う。それに加えて、加納町の交差点にも地下ロータリーがほしい。

 ルミナリエの開催が、クリスマスを外し、期間を短縮したのは、この悪影響を考慮したものであるから、会場の変更と併せて会期の大幅延長を図るべきだ。できれば1ヶ月くらい開催すればよいのではないか。

 現在のルミナリエは10日間で約350万人の来場者数で、一日あたりでは約35万人という数だ。東京ディズニーリゾートの2018年の年間入場者数は3255万人で、一日あたり9万人足らずだ。ルミナリエの一日35万人というのが、いかに巨大な数であるかがわかる。1日35万人として30日間開催すれば、単純計算で1000万人を超える。これは荒唐無稽な数字なのだろうか。考えてみれば、師走の12月の10日間に限定して来場できる人というのは、きわめて限られた人に限られるだろう。また、10日間だと、イベントの開催の周知すら不十分なまま開催期間が終わってしまうような感じだ。開催期間を延長すれば、来場可能な人口も増えるのだから、来場者数も増えると考えられる。

 ルミナリエが、仮に年中、開催されているとすれば、ゴールデンウィーク、春休み、夏休み、秋の行楽シーズン、冬休みと、全国から大勢の人々が観光にやってくるに違いない。ルミナリエが開催されている期間は、神戸にとって、街のにぎわい不足の問題は、ほとんど解決していると言ってよい。とは言え、震災を記念するルミナリエとしては年中開催するわけにもいかないだろう。しかし、光のイベントはルミナリエでなければならないというわけではない。人々は「光の祭典」を神戸に求めているのだ。ルミナリエは、人々が神戸に求めている役割に合致しているので、成功しているのだ。ルミナリエに続く、光のイベントを検討すべきだ。そして、年中、なんらかの光のイベントが開催されているとしたら、神戸のにぎわい不足の問題は存在しなくなるだろう。

 ルミナリエに集まった人々は皆、屋台で買い物をし、飲んだり食べたり、ほんとうに楽しそうだ。こうした楽しみの場を人々に提供するのも大事な都市の役割だと考える。