大阪府・市は22日、大阪市がもつ都市計画の7分野の権限を府に移管する方針を正式に決めた。「大阪都構想」の代案として、条例案を2月の府・市議会に提出する。吉村洋文知事(大阪維新の会代表)は当初、都構想並みに市の権限を幅広く府に移す考えだったが、大規模な移管は他党の協力を得にくいと判断し分野を大幅に絞ったとみられる。4月1日施行をめざす。
(日本経済新聞 2021/1/22)
昨年11月1日に実施された大阪都構想実施の賛否を問う2度目の住民投票は、再び反対多数の結果となり、それを受けて、推進派からは都構想断念の表明があったばかりだ。ところが、その舌の根も乾かないうちに、その一部を実施しようとする条例が大阪府・大阪市議会に提出されることになった。
大阪都構想の本質は、大阪市の権限と財源を大阪府に委譲することにある。今回の条例では、大阪都構想で進めようとした権限委譲 427事務のうち、その約半数にあたる、まちづくり 90事務、都市基盤整備 108事務の 198事務が大阪市から大阪府に権限委譲されるとのことだ。これは、住民投票で否決され、断念したはずの大阪都構想の一部をそのまま実行しようとするものに他ならず、これを進めようとしている推進派のご都合主義と民主主義軽視の姿勢を物語るものだ。
しかし、なによりも疑問に思うのは、大阪市民の利益を代表して行動すべき大阪市、大阪市議会が大阪市の権限や財源を包括的に放棄することに没頭していることだ。これは「背任(=他人のためにその事務を処理する者が、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えること)」というべきだろう。
現在、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が発せられ、多くの人々が不安を抱え、経済的な困窮に見舞われている。特に大阪府は感染者数、死者の数とも全国有数の状況となっており、人口千人あたりの死者数に至っては東京よりずっとひどい状況(東京都0.07人 ⇔ 大阪府 0.11人)だ。その混乱の最中に、あえてこのような重大な条例の可決を推し進めようとすることは市民の理解が得られるのだろうか。
(都道府県別 新型コロナウイルス感染者数等(2021/02/05 24時時点))
(厚生労働省HP 「各都道府県の検査陽性者の状況」から筆者が加工)