東京一極集中と神戸の役割(4)

 これまで見てきたように、都市のパフォーマンスを測るのには、単にその市や都道府県の人口を見るだけではなく、周囲を含めた圏域全体の人口を考えなければならない。むしろ大切なのは圏域で、その都市を含む圏域がどれだけの人口を有するかということがの方が重要だ。

 

(図1 東京圏(関東地方)と関西圏(近畿地方)の人口の全国割合)

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  上のグラフ(図1)を見ると、東京圏の全国に占める人口の割合は、1950年代の後半には戦前の水準を回復し、その後も高い率で上昇を続け、近年では全国の3分の1を占めるまでになっている。一方、関西圏は、戦前の水準を回復するのは漸く1970年頃で、その後も長期低落傾向にあることが読み取れる。

 

(図2 東京都の東京圏に占める割合、大阪府の関西圏に占める割合)

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 次のグラフ(図2)は、東京都の東京圏に占める割合(青色)と大阪府の関西圏に占める割合(茶色)を表したものである。

 注目すべきは、大阪府が1970年代以降、常に関西圏全体の4割を保っているが、東京都は1960年代以降、東京圏に占める割合を低減させており近年では東京圏全体の3割相当である。東京圏は拡大を続け全国の3分の1を占めるまでになり、いわゆる東京一極集中を出現させているわけだが、東京都そのものは東京圏でのシェアを落としてきたことがわかる。つまり、東京一極集中は、東京圏の拡大によるもので、東京は東京の周囲に機能を分担させつつ拡大してきたといえる。

 対して、大阪府の関西圏に占める割合は変わらなかったが、大阪圏全体のシェアも伸ばせなかった。

 この相違は、東京が全国の中心地として広域的に拡大を続けたのに対して、大阪は、広域的というより、一地方都市として拡大を続けたことを意味するのではないだろうか。

 振り返って、大阪は全国第2の都市として東京都に対して強い対抗意識を持ち、人口拡大を目指してきたが、その方策は、関西圏全体の拡大を目指すものではなく、関西圏の中で機能の独占を図って大阪を拡大するという姿勢があったように思われる。つまり関西圏における大阪一極集中を対東京の大阪復権の大方針としたのだ。いくつかの事例を挙げると、既に神戸に神戸港があるのに同様のコンテナターミナルを建設したこと、須磨の水族館があるのに大阪の市街地に海遊館を建設したこと、神戸がコンベンション都市に取り組むと同様にコンベンション施設を建設したこと、神戸がテーマパークを構想すると大阪にUSJを誘致したこと等、こうした事例は枚挙に暇ない。つまりは、関西圏全体として優位をどう確保するかという姿勢ではなく、周囲にある施設をいかに大阪に取り込み、独占を図ることによって大阪の発展を目指すものであった。関西国際空港の独占政策はその最たるものである。つまり、周囲にあるものを大阪が独占し、周囲の発展を抑え、大阪が発展することを考えてきた。その結果、大阪はある程度の人口の維持には成功したが、同時に、周辺部の発展は阻害され、全体としては、圏内のそれぞれが適性を発揮して関西圏全体が発展するということができなかったと考える。

 今後は、こうした姿勢を改め、それぞれの都市が圏域の中で役割を分担し、それぞれが持てる優位性、能力を十分発揮させるようにしなければならない。つまりは、全体が発展しなければ、自らの発展もないことを肝に銘じて、関西圏が力を合わせて、再び関西圏が我が国の中心地に返り咲くように努めなければならない。

 現在、大阪は大阪都構想の実現を目指しているが、これも関西圏の中での大阪の相対的地位の強化、繁栄の大阪独占を目指す考えがあるように思われるので警戒が必要だ。