「神戸の玄関口」が廃墟同然? 駅直結モールは空き区画「7割」という現実、神戸市は再生ビジョンを描けるか
神戸市の新神戸駅直結商業施設「コトノハコ神戸」(中央区北野町)が廃墟同然の厳しい状態だ。市のイメージにも悪影響を及ぼしているだけに、神戸市は活性化に乗り出した。
全区画の7割近くが空き状態
山陽新幹線を新神戸駅で降り、神戸市営地下鉄のホームへ向かう途中、新神戸エリアにある総合商業施設「コトノハコ神戸」に入って驚いた。大半の区画がシャッターを閉じ、廃墟のようにも見える。この暑さのなか、涼を取りながら、地下鉄ホームへ進めるのに、歩いている人はほとんどいない。
(中略)
フロアガイドを見ると、地下1、2階は閉鎖中。3階は21区画中10区画、2階は18区画中5区画、1階は29区画中6区画、地下3階は5区画中2区画しか埋まっていない。全区画の7割近くが空き状態。それなりに人を見かけたのは、スーパーが入る地下3階だけだ。
(高田泰『「神戸の玄関口」が廃墟同然? 駅直結モールは空き区画「7割」という現実、神戸市は再生ビジョンを描けるか』 2025/7/31 Merkmal(メルクマール) | 交通・運輸・モビリティ産業の最新ビジネスニュース)
「神戸の玄関口」が廃墟同然? 駅直結モールは空き区画「7割」という現実、神戸市は再生ビジョンを描けるか | Merkmal(メルクマール)
最近、上記のような新神戸駅に隣接する「コトノハコ神戸」の苦境と、神戸市が活性化に乗り出したことを伝える記事をネット上で見つけた。
筆者はこれまで、何度も新神戸駅およびその周辺の活性化策について述べてきた。
新神戸駅周辺が低利用状態に陥るのは、新神戸駅が、神戸の都心部からわずかに外れた場所にあり、都心部と一体化が難しく、仮に大規模な商業施設を立地させても、それ単独で経営が成り立ちにくいことが理由であると考える。また、新幹線の新神戸駅そのものの利用者は、近年増加傾向にあるものの、人口が神戸市の半分にも満たない岡山駅の新幹線利用者数にも及ばないという状況にある。このことは、同記事でも指摘されている。
コトノハコ神戸に人が集まらないのは、新神戸駅の特殊性が関係している。新神戸駅には山陽新幹線のほか、神戸市営地下鉄西神・山手線が乗り入れ、駅前から都心部の三宮方面へ向かう神戸市営バス、四国や淡路島方面の高速バスなどが運行している。しかし、JR西日本の在来線は乗り入れていない。
神戸市内発着の乗車券に限り、在来線の三ノ宮、元町、神戸(ともに中央区)、新長田(長田区)のJR4駅と新神戸駅を乗り継ぐ特別下車ができるが、兵庫県統計書によると、新神戸駅の新幹線乗車人員は2023年度で1日平均約9600人にとどまる。
JR西日本の駅別乗車人員ランキングで上位50位に入らず、山陽新幹線の発着駅では
・新大阪(大阪市淀川区)
・博多(福岡市博多区)
・広島(広島市南区)
・岡山(岡山市北区)
・小倉(北九州市小倉北区)の5駅を下回る。乗り継ぎの不便さから、神戸市民でも在来線と新幹線を同一駅で乗り換えられる新大阪駅を使う人が少なくないからだ。
(高田泰(同))
しかし、新幹線新神戸駅は、山陽新幹線、九州新幹線のすべての列車が停車するというすばらしい利便性を有している。新幹線を有していない地方からみれば、まさに「羨望の地」であると言っても過言ではないだろう。この条件を最大限に活用することを神戸市は真剣に考えるべきだ。
筆者が考える新神戸駅の活性化策は次のとおりである。
(1)新幹線新神戸駅利用者に対する、市営地下鉄の新神戸駅~三宮駅間の運賃無料化
(2)コトノハコ神戸の有効活用
今回は、(1)新幹線新神戸駅利用者に対する、市営地下鉄の新神戸駅~三宮駅間の運賃無料化について述べる。
新神戸駅は政令指定都市にある新幹線の駅で、唯一JR在来線と接続していない駅である。在来線に接続しておれば、JRの「市内発着」扱いにより市内の移動については交通費が発生しないが、在来線に接続していない新神戸駅は、都心からわずかに外れているが故に市内の中心駅まで余分の交通費がかかってしまう。つまり、通常の政令指定都市であれば享受できている便利さを、神戸市民および神戸市への来訪者に限っては受けることができないのだ。これは、神戸市民にとって、他の政令指定都市の住民に対する著しいハンディである。新神戸駅周辺の活性策以前に、神戸のウイークポイントとして速やかに解消すべき問題と認識すべきだ。
そこで、次のような案を考えてみた。
新神戸駅発着の新幹線の乗車券を持つ利用者について、地下鉄新神戸駅と三宮駅間の料金を免除する。つまり、新神戸駅から新幹線に乗車する利用客について、地下鉄三宮駅から新神戸駅までの間の料金を免除し、逆に、新神戸駅で下車した新幹線の利用客について、地下鉄新神戸駅から三宮駅までの間の料金を免除する。ただし、無料とするのは、新神戸駅・三宮駅間を利用する場合のみとし、それ以外の場合、たとえば、西神中央方面から新神戸駅に直行する場合は、通常どおりの運賃とする。無料となるのは、JR、阪急、阪神から三宮駅で市営地下鉄に乗り換えて新神戸駅に向かう場合に限られる。(市営地下鉄の沿線の利用者も、いったん三宮駅で下車して再び三宮駅から新神戸駅に向かう場合は、この間の運賃は無料となる。)
この場合、無料化された運賃分は、市営地下鉄の経営にとって減収となるが、実質的な減収となるのは、現在JRや阪神、阪急、市バス、長距離バス等から市営地下鉄三宮駅に乗り換えて新神戸駅に向かっている場合(またはその逆の場合)のみとなるので、減収の幅は限定的である。一方、この施策の実施によって、市営地下鉄を新たに利用する者が増加すると思われるが、この部分の運賃は、新たに発生する需要なので、減収と考える必要がない。最終的には、減収分は市の財政により負担される。
この施策によって、新神戸駅の利用客が増加し、それに伴う消費や宿泊等の経済効果が期待できる。
この案のポイントをまとめると次のようになる。
・対象はJR・阪急・阪神などから、地下鉄三宮駅を経由して新神戸駅へ向かう(逆に、地下鉄新神戸駅から三宮駅で下車する)新幹線利用者
・新神戸駅~三宮駅間のみ運賃無料とする(地下鉄全区間の無料化ではない)
・市営地下鉄沿線からの直通利用や、地下鉄三宮駅の利用がない場合は対象外
この案であれば、運賃無料化の減収は限定的で、これまで、新大阪や西明石に流れていた乗客の一部が新神戸駅を利用するようになることによる経済的効果(消費、飲食、宿泊など)が見込まれる。さらに、三宮駅と新神戸駅間の移動の1回限りではなく、終日、乗り降り自由にすると、新神戸駅と三宮駅間の回遊性が著しく高まるだろう。
また、新神戸駅の利用者の増加により、新神戸駅が西日本における広域交通拠点であることがクローズアップされることになり、神戸市の拠点性を高めるPR効果も考えられるだろう。
くりかえしになるが、新幹線を乗車するアクセスに余分の費用がかかるのは政令指定都市で神戸市だけなので、このハンディは速やかに解消すべきだと考える。