久方ぶりに各地の主要都市を訪れると、その発展ぶりには目を見張るばかりだ。当時は古めかしく、のどかな地方都市という雰囲気を漂わせていたが、今では大規模な整備、都市改造が行われ、新しいターミナルビルには垢抜けた最新の商業施設が軒を連ね、多くの人たちが集まり大いに賑わっている。その様子を見ると、都市開発の点において神戸はすっかり遅れをとってしまったと思わざるを得ない。それらの都市の人々が、現在の神戸の中心市街地を見るとどのように感じるのだろうか。すべてのインフラが小規模で、古びており、もはや、神戸は憧れをもって見られるような存在ではなくなっているように思われる。それは、名古屋や福岡は言うに及ばず、広島、仙台など政令指定都市レベルだけではなく、県庁所在都市レベルと比べても言い得ることかもしれない。
現在、神戸市でも三宮の再整備が行われているところではあるが、それが完成したとして、それらの地方主要都市を凌駕するレベルの都心が実現するのだろうか。神戸市は、過去の「先進都市」の慢心は捨て、虚心坦懐に他都市の先進事例を学び、取り入れられる点は取り入れ、斬新なアイデアを発明し、再び全国から注目を集めるような都心を作り上げなければならない。
それはさておき、各地を訪れて感じることの一つに、各地方が主要ターミナルでの土産物の販売に非常に力を入れていることだ。例えば、駅や空港のターミナルビルの中の、人通りが多い一等地に広大なスペースを充てて土産物品を販売している。
それらは品ぞろえが非常に豊富で、その地方で買える土産物のほとんどがここ1か所で間に合うと言えるほどである。古くからの特産品だけではなく、そこから派生した商品が数多く販売されている。たとえば、本来何の関係もなかった旧来の和菓子や洋菓子に、ご当地の特産品を原料として加えたり、名物のイメージ(仙台の伊達政宗、高知の坂本龍馬、鹿児島の西郷隆盛など)を援用した土産物を数多く新たに開発し、販売している。これらのターミナルでは、観光客が出発までの待ち時間に大量の土産物を購入している姿を見ることができる。土産物を購入することは、旅行の主要な目的の一つとも言え、その経済的な効果も大きなものがあると思われる。
そうした各地の状況と比べると、新神戸駅や三ノ宮駅、神戸空港における土産物売り場は非常に小規模で品ぞろえも貧弱であることは否定できない。新たな商品を次々に開発し、売り込もうとする各地の行政、事業者、経済団体の貪欲さは、神戸の人々も大いに見習う必要がある。
神戸には、何も販売するような土産物がないのではないかと思うかもしれないが、果たしてそうだろうか。神戸にも、洋菓子や和菓子、清酒、神戸ビーフ、真珠などの名物がある。この他にも、元々食品工業が盛んなのだから、蒲鉾や竹輪、昆布の加工品、チーズやバターなどの乳製品も「ご当地」のイメージを乗せれば人気のある土産物になりうるのではないか。また、ゴム工業や鉄道車両、潜水艦などの工業製品も神戸の重要な産業なので、ミニチュアや模型、ブランドのロゴのついたグッズなどを工夫すれば土産物になりうる。
さらに、神戸は兵庫県の県都なのだから、兵庫県の特産品を、新神戸や神戸空港で大いに販売してもよいのではないか。そうすれば、兵庫県の県都として、県下の市町の発展に大いに寄与できるはずだ。例えば、赤穂の塩、塩味饅頭、姫路の和菓子、竜野の醤油、素麺、丹波の黒豆、栗、松茸、ぼたん鍋、豊岡の鞄、出石のそば、淡路の玉ねぎや琵琶、線香、西脇の播州織、明石の蛸や鯛、明石焼き(明石焼きのミックスなど、もっと「ご当地色」をパッケージすると、土産物として非常に有望ではないか)。小野のそろばん、三木の金物等もミニチュア化して土産物にできないか。旅行者が全県を回って特産品を買い集めることは困難であるが、新神戸駅や神戸空港の土産物品に集めて販売することは、大いに可能ではないだろうか。一方、観光客にとっても、新神戸駅や神戸空港の魅力向上に多いに役立つと思われるので、神戸市はこうした取り組みを全県的に音頭をとって進めるべきである。そのためには、新神戸駅や神戸空港、三ノ宮駅に大規模なスペースを確保しなければならないので、これらのターミナルの大幅な拡張を行う必要がある。このように、土産物品の販売拡充は、神戸の交通拠点性の強化にも寄与するはずである。