大阪都構想住民投票のその後(3)

 政令市20市の市長で構成する指定都市市長会(会長・林文子横浜市長)は5日に開催した臨時会議で、かねて指定都市市長会が制度化を求めていた「特別自治市」の議論を加速することなどを盛り込んだ、大都市制度の多様化を求める提言を採択した。市長会の総務・財政部会長を務める久元喜造神戸市長がとりまとめた。今後、総務省など関係機関に積極的に働きかける。(以下省略)

(神戸経済ニュース 2020/11/06)

 

 「特別自治市」とは、政令指定都市が、市域の県税を全て市税に移管し、県が担っている業務も移して、市域での行政を一元化するという都市構想である。2010年5月に開催された指定都市長会議において、指定都市市長会が初めて提案したものであるとされている。

 これは、域内の行政権限と財源を県から市に一元化しようとするもので、ちょうど大阪都構想と逆方向の構想である。ただし、二重行政の解消ということではなく、基礎的な自治体である市の自治の拡充という意味合いを有するものといえるだろう。

 大阪市の例で考えると、二重行政の解消というなら都構想だけでなく特別自治市という選択肢もあるわけで、都構想を推進しようとするならば少なくとも特別自治市との比較衡量が必要だと思うが、そのような検討はされたのだろうか。大阪府大阪市より適正に判断できると、なぜ自明の前提として主張できるのであろうか。

 都構想は地方公共団体自治を縮減するものであり、市民の自治を拡充する特別自治市の方が優れていると考える。では、神戸市を含む政令指定都市は直ちに特別自治市を実現するように取り組むべきであろうか。筆者はこれに対しては、直ちに取り組むべき問題ではないと考える。

 大阪都構想のように、何か制度を変えなければ目的が達成できないという発想は、現在の制度下においても実行が可能である課題についての関心と努力を疎かにし、結果的に実現を遠ざける結果を招きがちだ。大抵のことは現在の枠組みでもできないわけではないから、まずその枠組みの中で事を運ぶべきで、いたずらに大きな改革案を提唱することは、それによる軋轢を招くばかりで、課題解決という観点からも適切ではない。特に現在のようなコロナウイルス対策に全力で取り組むべきときに行うべきことではないだろう。

 今回の都構想についても、住民投票後に大阪市を存続させた上で同様の改革を行おうとしているのを見ると、本当の目的は大阪市からの権限と財源の大阪府への委譲であったのではないかと考えられ、であるとすると、そもそも大阪市の廃止は必要だったのかという疑問がわく。さらに考えると、大阪市の廃止を謳わなければ、もっと実現が容易だったのではないだろうか。大阪市廃止という不必要な要素を含めた大阪都構想は目的の実現のためのものではなく、「歴史的大改革」という看板を掲げたいがための構想であったのではないかという疑念を抱かせるものだ。