スーパーコンピューター「富岳」が性能世界一を獲得

 理化学研究所理研)は23日、神戸・ポートアイランドに整備中のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度ランキング「トップ500」をはじめ、スパコンの計算性能を示す主要4部門で世界1位になったと発表した。トップ500で日本勢が1位となるのは、2011年に2期連続1位になった先代の「京(けい)」以来9年ぶり。初採用の1部門を加え、「4冠」を達成するのは世界のスパコンで初の快挙という。

神戸新聞 2020/6/23)

 

 

 理化学研究所は、23日、「京」コンピューターの後継機となるスーパーコンピューター「富岳」がスパコンの計算性能を示す主要4部門で世界1位になったと発表した。文字通り世界一であり、世界的なニュースといえるが、逆に、設置場所である神戸には関心が及ばず、本文中に設置場所が神戸であることに触れていない報道もあった。

 では、このスパコンが神戸に設置されたことにはどのような効果があるのだろうか。

 

 神戸市のHPを見ると、次のような説明が掲載されている。

神戸市:ポスト「京」

 
 その中で、地元のメリットとして、次の5点が挙げられている。
 
(1)世界最高水準のスーパーコンピュータ研究教育拠点の形成促進
(神戸医療産業都市及び播磨科学公園都市との連携による機能強化と知的創造拠点の形成)
(2)イノベーションと新産業の創出による神戸経済の成長
(3)国内外の企業の誘致と優秀な研究者・技術者の集積促進
(4)神戸空港など交通インフラの利用拡大
(5)都市のイメージアップ 等
 

 さらに、具体的な地元への効果として、次のページに詳しい説明が掲載されている。

スーパーコンピュータの産業利用 | 神戸市 企業進出総合サイト START UP! KOBE

 

 例えば、新しい薬の開発時間の短縮や地震や津波などの災害予測の精度向上、新車の開発時間の短縮など、様々な分野での利活用により、市民生活の向上に大きく貢献することが期待されています。

 また、「京」は、科学技術の幅広い分野に亘り、国内外の研究者に活用される汎用スパコンです。あわせて企業も利用が可能ですでに60社を超える企業が利用しています。

  神戸市が推進しているプロジェクトである「医療産業都市」においてもライフサイエンスの分野でさらなる研究の加速が期待されています。

 また、神戸市、兵庫県、産業界により設立された計算科学振興財団の拠点として、平成23年4月「高度計算科学研究支援センター」が「京」の隣接地に開設されました。さらに、「京」の周辺には、甲南大学、兵庫県立大学、神戸大学といった大学も集積しており、知の拠点(COE)とイノベーション拠点(COI)の形成が進んでいます。

今後は、「京」と兵庫県播磨にあるSPring-8やSACLAといった最先端研究施設と連携して「革新的創薬開発」や「省エネ材料開発」といった研究成果を、世界に先駆けて神戸から発信していくことが期待されています。

 

 「富岳(ふがく)」の開発に携わる理化学研究所計算科学研究センター長の松岡氏は、先代の「京」について、特殊なソフトでしか動かせないなど汎用性に乏しく、商業的には成功したとはいえないと評価している。それに対して、「富岳」は、世界的に普及するマイクロソフト社製の文書作成ソフト「ワード」でさえ動かせる汎用性を重視し、富岳用に開発した技術が広く社会に普及することを重視しているという。(神戸新聞 2019/8/28)

 

 性能が世界一を獲得したということだけでも素晴らしいことではあるが、「富岳」コンピューターが設置された神戸の地で、多くの研究者や企業に利用がされ、研究機関や企業の進出が進み、神戸がコンピューター利用分野の一大中心地となって、世界の発展に貢献することを大いに期待したい。