姫路市の都市戦略と神戸

 姫路市は、人口53万人、兵庫県西部の中核市である。

 近年、JR姫路駅周辺の再開発に力を注いでおり、その全貌が次第に明らかになってきている。

  1993年に、姫路城が我が国で最初のユネスコ世界遺産リストへの登録を受けて以降、姫路城を中心に据えて積極的な都市整備を行ってきた。

 まず第一に、「JR山陽本線等姫路駅付近連続立体交差事業」として姫路駅を含む山陽本線播但線姫新線の高架化および貨物基地・車両基地・保線区の移転などが行われた。1995年から本格的な工事が始まり、2008年にすべてのホームの高架化が完成した。

 その後、2013年4月に「piole(ピオレ)姫路」がオープンし、サンクンガーデンなどが整備された。

 これに続いて、現在では、JR姫路駅の東約700メートルの位置で大規模な文化・コンベンションセンターの建設が進んでいる。

 

姫路市文化コンベンションセンターについて

 キャスティ21イベントゾーンの文化・コンベンションエリアでは、本市の新しい交流拠点として、文化芸術の拠点としての機能と、「ものづくり力の強化」「地域ブランドの育成」「交流人口の増加」を促進する機能をあわせた『姫路市文化コンベンションセンター』を整備します。
これにより、本市の市民文化の振興並びに都市魅力の創造、発信を図り、地域住民の相互交流と中心市街地の賑わい、都市の発展に大きな役割を果たすことが期待されます。

姫路市HP)

https://www.city.himeji.lg.jp/shisei/0000006638.html

 

(施設の概要)

・面積:約4.6ヘクタール

・敷地面積:36,423平方メートル

・延べ床面積:約29,000平方メートル

・階数:地下1階、地上5階、棟屋1階

・ホール:大ホール(約2,000席)、中ホール(約700席)、小ホール(約180席)、メインスタジオ(リハーサル室)

・スタジオ:計6室 うち約160平方メートル(1室)、約70平方メートル(2室)、約17平方メートル(3室)

・展示場:屋内(約4,000平方メートル 3分割可)、にぎわい広場(屋外 約1,600平方メートル)

・会議室:多目的ホール(1室利用時は約690平方メートル、3分割可)、約80平方メートル(5室)、約35平方メートル(2室)

 

 姫路市の「キャスティ21イベントゾーン 文化・コンベンションエリア基本計画」 (2015年3月)を見てみると、はじめに、このイベントゾーン整備のための基本計画の策定に当たって、これからのまちづくりを考える上で注視、考慮すべき社会経済動向、まちづくりの潮流を整理している。

① 人口減少、世界でも類を見ない少子高齢化の進展
 我が国は既に人口減少時代に移行しており、今後、これまで世界でも経験したことのない急激な少子高齢社会を迎えようとしている。このような状況下においては、これまでのような人口増加を背景とした経済成長を期待することはできず、新たな活路を見い出し、都市やまちの活力を維持、増強していくことが求められている

② 新たな成長戦略、我が国の強みを活かした成長分野への重点的投資
 人口減少、少子高齢化等で内需での成長が見込めない状況下においては、これまでのストック等により我が国が強みを有する成長分野への重点的投資を行い、主に海外との関係を強化することによって成長を図ることが必要となっている。(略)

③ 我が国の成長を支える都市の役割の増大

 (略) 

④「交流」を核としたまちづくり
 都市の成長を推進する上で、「交流」の促進に大きな期待が寄せられている。近年では MICE の概念の下で、会議やイベントだけではなく観光も含めた総合的な取組みが世界的な潮流になっている。この背景としては、MICE による経済波及効果が多岐の産業に波及することがあげられるが、特に我が国では、内需の増大が期待できない中で、MICE による海外からの交流人口の受入れは経済成長に大きな役割を果たすことになる。(略)

 

 こうした状況分析を受けて、姫路市がとるべき施策を次のようにまとめている。

 (2)姫路市の都市づくりを進める方策

(略)
① コンパクトシティの推進
 目指すべき都市のかたちである「多核連携型都市構造」、地域が持つ資源や既存の都市基盤の維持と活用'あるもの活用、環境の保全等に寄不する資源循環'地産地消・地廃地活(を基調とする、都市全体としてコンパクトな都市経営を推進する。


② グローバルな視点に立った都市づくりの推進
 研究と市場の好循環をつくる仕組みの構築、都心部への高次都市機能の集積、情報発信力の向上により、産業の多様化・高度化や観光の国際化を図り、グローバル化に対応した都市の成長力強化に努める

 

 以上を見れば、姫路市は、自己の置かれた環境を冷静に分析し、明確な方針をもって、戦略的かつ着実に都市開発を行ってきたことがうかがえる。

 

 翻って、現在の神戸市にこれだけの明確な方針があるだろうか。

 神戸市が最近行っているのは、移住促進の「LIVE LOVE KOBE」、茅葺き民家の活用、アーバンピクニック、ストリートピアノの設置、街灯の増設など、小規模な施策が脈絡もなく、バラバラと打ち出されている。これらの政策だけを見れば、どちらが政令指定都市かわからない。

 姫路市との対比のため、神戸市が作成した「神戸都心の未来の姿」の前文を掲載して、本稿のまとめとしたい。

 

1.何よりも「人」がまちの主役

2.KOBEを大好きな人、KOBEに誇りを持つ人がまちをつくる

3.50年後、100年後にもずっと魅力的であり続ける


 神戸市は、「住み続けたくなるまち、訪れたくなるまち、そして、継続的に発展するまち」をめざして、神戸の今と未来をデザインしていくことで、人間らしいしあわせを実感できる創造都市「デザイン都市・神戸」を推進している。また、震災20年を機に、神戸で生まれた震災の教訓や知恵を集め、多くの人に発信するために「BE KOBE」のロゴとともに、”人”に焦点をあてた様々な取り組みを進めている。神戸のリーディングエリアである都心においても、まちの魅力はそこに集う人が創るという考えのもと、「ダイバーシティ」や「ソーシャルインクルージョン」の風土形成や、「ヒューマンスケール」のまちづくりなど、「居心地の良さ」を軸に、訪れ、働き、住みたくなるまち、そして発展し続けるまちとして、目指すべき都心の将来像を示し、その実現に向けて各種施策・取り組みを進めていく。

(神戸市HP「神戸都心の未来の姿」)