新型コロナウイルス禍の下での関西3空港の状況(6)

 関西エアポートが2020年12月の関西3空港の運行状況について発表した。

 

(3空港の旅客数の推移)

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(2空港の旅客数・発着回数(2020年12月))

                      ( )は11月

          旅客数         国内線発着回数

 伊丹空港     △54%(△38%)  △19%(△22%)

 関西空港     △60%(△48%)  △23%(△32%)

 神戸空港     △46%(△38%)  △ 7%(△12%)

 

 上のグラフを見ると、12月になって3空港の旅客数は大幅な減少に転じている。特に下げ幅が大きいのは伊丹空港で前月から16ポイントの減少幅の拡大となっている。理由は言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染の急拡大である。1月7日には緊急事態宣言が発せられ、再び社会活動にブレーキがかけられることになった。ゆるやかにではあるが、次第に正常化しつつあった航空需要にも強い抑制が働くこととなった。

 上のグラフの推移を見ると、第一次の緊急事態宣言が発令されていた4~5月にかけて需要が激減し、その後、6~8月にかけて需要が回復しかかったが、8月に第2波が現れたことから再び行動の自粛が強まり、第2波が弱まった9月以降からは再び需要が回復し始め10月、11月と順調に需要が回復したところだが、11月からの第3波、それを受けた緊急事態宣言により、再び強い行動の制限がかかることとなった。

 このように、新型コロナウイルスは人々の行動が活発になればたちまち感染拡大を引き起こし、それを防ぐためには、また行動の抑制を強めなければならない。新型コロナウイルスに対して社会全体が免疫を獲得するまで、このような制限の緩和と強化が繰り返されることとなる。それまで、我々の社会はこのような状況に耐え続けなければならないのだ。

都市のテリトリー

 都市は単にそこに住む住民に対する役割だけではなく、広域にわたる役割がある。

 

(経済的中枢管理機能(支所)による主要都市のテリトリー(2000年))

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(出典:阿部和俊、山﨑 朗(2004)『変貌する日本の姿』古今書院(着色は筆者が加工))

 

 上記の表は、企業が国内の諸都市に置く「支所」がどのエリアを管轄するかを表したもので、調査時点は2000年である。具体的に言うと、例えば、仙台に置かれた支所のうち88.8%のものが青森県を管轄していることを示している。この表が示すものは、都市間の経済的に「管理する・管理される」の関係である。つまり、先の例でいうと、青森県仙台市の経済的管理下にある、すなわち仙台市の「支配域」(テリトリー)であるということだ。

 上の表では、その都市が所在する都道府県の値を赤く表示し、それを除いて最も高い値をオレンジ色で表示したものである。これを見ると各都市の支配域が見事にあぶり出される。

 このオレンジ色および赤色をその都市の支配域とすると、各都市の支配域は次のとおりである。(太字は赤色表示)

 札幌:北海道

◎仙台:青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島

 新潟:新潟

◎東京:北海道、宮城、茨木、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野

 横浜:神奈川

◎金沢:富山、石川、福井

◎富山:富山、石川

◎名古屋:岐阜、静岡、愛知、三重

 京都:京都

◎大阪:滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、広島、香川、福岡

 神戸:兵庫

◎高松:徳島、香川、愛媛、高知

◎広島:鳥取、島根、岡山、広島、山口

◎福岡:福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

 北九州:福岡

 

 この中で、自らの所在する都道府県以外の支配域を有するのは、仙台、東京、金沢、富山、名古屋、大阪、高松、広島、福岡の諸都市(◎の都市)である。これらはいわゆるブロック中心都市である。これに対して、自らの所在する都道府県のみを支配域とするものは、北海道、新潟、横浜、京都、神戸、北九州である。

 さらに、これらの諸都市間でも「管理する・管理される」の関係を読み取ることができる。その都市が属する都道府県(赤色)を支配域としている都市(オレンジ色)がある。この関係は、次の2都市に読み取ることができる。(大阪と名古屋にはこのような構図がないことに気づく。)

 

 東京:北海道、宮城、神奈川、新潟

 大阪:京都、兵庫、広島、香川、福岡

 

 つまり、東京と大阪は、大都市が属する道府県をも支配域とする構図を読み取ることができる。この2都市は、大都市の中で別格の「超広域都市」ということができる。東京は我が国の首都として、大阪は江戸時代以前の流通経済の中心都市として、我が国の東西の首都と言えるだろう。

 

 次に神戸について詳しく見てみよう。

 この表を見ると、神戸に置かれた支所は兵庫県のみを支配域とすることが多いということがわかるが、その一方で、それ程割合は高くはないが、かなり広域にわたって管轄域が広がっていることに気が付く。すなわち、神戸の管轄が及ぶ範囲は、

富山、石川、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、島根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、高知  の17府県に及ぶ。

 

 この値は、東京 29、大阪 29に続くもので、これは神戸の特徴と言ってよいだろう。神戸の管轄域が広域にわたるということの理由は、神戸がかつて、世界有数の国際貿易港を有する都市として栄えたことが関係するのかもしれない。神戸に設置されている神戸税関の管轄区域は、兵庫県以西の山口県を除く中国・四国地方全域(兵庫県鳥取県島根県岡山県広島県香川県愛媛県高知県徳島県)となっており、神戸の支配域が神戸税関の管轄区域と重なるところが大きいことからも、それが推測される。また、神戸は我が国有数の経済的中心地である関西圏にあり、関西圏が有する中枢機能を京都、大阪、神戸の3都市で分担しているといえるのかもしれない。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 

 以上より、神戸はブロック中心都市ではないが単なる一地方都市でもなく、東京や大阪ほどではないものの、「超広域都市」としての性格も持っているといえるだろう。

 これらのことから、神戸が今後、どのような方向性をもって都市の発展を目指していくべきかを考えてみたい。

 一つには、神戸は関西圏という我が国有数の経済的文化的中心地の一翼を担う都市として、ブロックを超える超広域の高次の都市機能を担うべきだろう。それは、現在の、神戸港スーパーコンピューター「富岳」や医療産業都市、コンベンションセンターなどがこれに当たるだろう。将来的には、大規模アリーナなども設置したいところだ。

 二つ目は、決して緊密とは言えないが、現在有する経済的つながりのある地方との結び付きを維持強化することに努めるべきだろう。幾分でもつながりを持っているということはとても重要だ。現在でも神戸は長距離バス路線の西日本最大級の発着地の一つとなっているが、そもそもこれらのバス路線網が張り巡らされている背景には、神戸とそれらの地方との固定的な一定の人的な交流があるからだと考えられる。これらの路線網のさらなる充実強化を図るべきだ。その方策の一つとして、これらの経済的つながりのある都市の中心都市として、それらの都市のショーウインドウとしての役割を果たしてはどうだろうか。例えば、これらの諸都市の物産館の場を提供し誘致し、神戸からそれらの地方への観光を誘導するような機能である。神戸はそれらの地方と共存共栄を図らなければならない。それにより、神戸の超高域都市としての地位が高まるだろう。

 神戸はこれらの都市とバス路線の他、新幹線や航空機、フェリー航路などで結ばれているが、これらを相互につなぎ合わせる交通手段があれば、一層、広域の交通結節点としての機能が高まるだろう。それは、神戸だけの利益ではなく、これらの地方の人々の利益でもあるだろう。そういう意味からも、新神戸、三宮、神戸空港を結ぶ中央軸を構成する利便性の高い交通手段が必要だ。

 要するに、神戸の都市の成り立ち、性格をよく理解し、それを常に意識して、さらに機能の維持向上に努める必要があるということだ。

 

新型肺炎の流行について(41)

 久元市長がツイッターで、次のような投稿を行った。

本日対策本部を開き、ひっ迫する医療提供体制を共有。病床使用率は96%に至り、極めて厳しい状況が続きます。このままでは助かる命も助からなくなります。一人ひとりが強く意識して行動を変えなければなりません。医療提供体制を守るために、大切な命を守るためにご協力をお願いします。

久元喜造twitter 2021/1/14)

  これに対して、多くの市民から不安を訴える声が寄せられ、それらの中には、こうした事態が十分予想できたにもかかわらず病床確保ができていないことを非難する意見も見られる。

 

 では、実際には、兵庫県と神戸市の病床の確保状況は、多いのか少ないのか、全国的に見るとどの水準なのだろうか。

 

(1 都道府県別の新型コロナウイルス対応病床数等)

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 (厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(1月13日0時時点)」から作成)

 

 集計されている項目は、新型コロナウイルス患者受け入れ用の、確保病床数、そのうちの重傷病床数、軽症者隔離用の確保居室数の3項目である。

 まず、確保病床数については、兵庫県は 756床で人口千人当たりの病床数は0.138となり、この値は全国47都道府県のうち実に45番目となる。

 次に重傷病床をみると、兵庫県は 116床で人口千人当たりの病床数は0.021となり、全国で38番目となる。

 軽症者隔離用の確保居室数をみると、兵庫県は 988室で人口千人当たりの病床数は0.181となり、全国で25番目となる。

 神戸市について見ると、確保病床数については、160床で人口千人当たりの病床数は0.105となり、兵庫県より数値は低く、全国最下位の福岡県の0.120よりもさらに低い数字である。確保居室数は、298室で人口千人当たりでは 0.196であり、兵庫県より高い数値であり、21位の福岡県の 0.207に近い数字である。

 

 これを見ると、兵庫県及び神戸市は、軽症者隔離用の確保居室数については全国的に中位であるが、確保病床数についてはかなり少ない方であることがわかる。兵庫県は、確保病床の使用率について、東京都の83%に次いで、78%と全国ワースト2位となっているのは、この確保病床数自体が少ないという事情が現れているようだ。比較対象として、近隣の大阪府の使用率は72%、京都府は39%であり、関西圏で感染者数が圧倒的に多い大阪府よりも病床の逼迫の度合いが高くなっていることは注目される。

 

 あわせて、都道府県別の感染者の発生状況を見てみよう。

 

(2 都道府県別の新型コロナウイルス感染者発生状況)

 

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 (厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(1月13日0時時点)」から作成)

 

 表は、都道府県別の新型コロナウイルスのPCR検査陽性者数と入院者数について、実数と人口千人あたりの値をPCR検査陽性者数の多い方から順に並べたものである。

 陽性者数については、1位から6位までが、東京都、千葉県、埼玉県、大阪府、神奈川県、福岡県の順となり、首都圏および大都市圏の値が高いのがわかる。特に東京都は千人当たりの陽性者数が 1.380と2位以下に大差をつけている。以下、8位 京都府、10位 愛知県、15位 広島県、16位 北海道となり、兵庫県は18位となっている。

 これから見ると、兵庫県の人口千人あたりの陽性者数は他の大都市と比べ決して高くはなく全国で中位程度の値である。

 参考までに神戸市の値を見てみると、千人当たりの要請者数の値は0.569と8位の京都府と同水準である。

 

 以上のデータからみると、上記のツイッターでの兵庫県や神戸市の病床確保の遅れを非難する意見は的外れとは言えない。少なくとも、兵庫県や神戸市が全国のお手本となるような先導的な取り組みができているとは言えないだろう。

 

 

 さらに、その翌日、久元市長はツイッターで次のような投稿を行った。

市内病床160床のうち155床を使用中。このままでは助かる命も助かりません。そのため、今日からハーバーランドのモザイク大観覧車からメッセージを発し、広く行動の変容を呼び掛けます。メリケンパーク周辺の施設にもご協力いただき、21時以降ライトアップを消灯します。
久元喜造twitter 2021/1/15)

 

  市内病床160床のうち155床が使用中のため、このままでは助かる命も助からないと訴えつつ、それに対する対策がハーバーランドの観覧車にメッセージを表示することであるということに違和感を指摘する市民の声が寄せられている。

 

 

 神戸市は、これまでも昨年4月の緊急事態宣言下に花時計の絵柄を笑顔のデザインにしてみたり、次のようなメッセージ募集を行うなどの情緒的な取り組みが多かった。

 

新型コロナウイルス感染症体験等に基づくメッセージを募集します

 
 現在、市民のみなさまそれぞれが新型コロナウイルス感染症と闘っており、様々な不安を感じていらっしゃることかと思います。

 また、医療の最前線で新型コロナウイルスに立ち向かう医師や看護師をはじめとする医療従事者のみなさまにおかれましても、日々大変な思いをされていることと存じます。

 こういった様々な不安をやわらげ、応援するために、ご自身が体験して感じたことや感謝の気持ちなどのメッセージを募集します。

 

(神戸市HP 2020/9/11)

 

 こうしたイメージだけの取り組みより、本質的に取り組むべきことがあるはずだ。優先順位はどうなっているのだろうか。そんなことをする余力があるなら、他のことに充ててほしいという意見が起きるのは当然だ。この情緒優先の姿勢は神戸市の都心再開発にも共通する姿勢のように感じる。

 

 

新型肺炎の流行について(40)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、菅義偉首相は7日、緊急事態宣言を再発令した。対象地域は首都圏の1都3県で、期間は2月7日までの1カ月。飲食店の営業時間短縮、テレワークによる出勤7割減、午後8時以降の外出自粛、イベントの人数制限をパッケージとして対策を行う。菅首相は会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせる」と語った。

朝日新聞 2021/1/7)

 

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(出展:厚生労働省 HP) 

 

 新型コロナウイルス感染症の感染は昨年11月頃から急激に拡大し、年末には全国で4000件を超えて驚いたのもつかの間、年明けの1月7日には一気に7500件をも超え、ついに東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で2度目の緊急事態宣言が発せられるに至った。

 事態はそれにとどまらず、兵庫、大阪、京都の関西2府1県が緊急事態宣言の発令を国に要請するなど、緊急事態宣言はさらに全国へ拡大することも予想される。 

 

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて大阪、京都、兵庫の3府県の知事は9日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すよう西村康稔経済再生相にオンラインで共同で要請した。西村氏は会議後、「極めて厳しい状況との認識を共有した」と話し、専門家の意見を聞いて判断する考えを示した。

 3府県の知事は連名で、「年明け以降、感染が急拡大するとともに、医療提供体制は非常に逼迫(ひっぱく)。さらなる感染防止対策をとることが必要である」として、西村氏に要請した。

 西村氏は会議後、記者団に「緊急事態宣言の措置をとっている首都圏に準じた取り組みを検討するように要請した」と明らかにした。

朝日新聞 2021/1/9)

 

 海外でも感染拡大が続いており、従来より感染力が強いとされる変異型が出現するなど、さらに勢いを増しているようだ。特にイギリスでは、ロンドン市長が市内の新型コロナウイルスの感染拡大が「制御不能の状態にある」と表明したことは新型コロナウイルスの恐ろしさを再認識させるものだ。

 

 英国の首都ロンドンのカーン市長は8日、市内の新型コロナウイルスの感染拡大が「制御不能の状態にある」とし、「重大事態」を宣言した。英国政府は同日、英国全体の1日の新規感染者数は6万8053人、死者数は1325人に上ったと発表。ともに過去最多となった。

朝日新聞 2021/1/9)

 

  世界の感染者数は、1月7日現在で 8619万人、死者は 186万人に達している。 

 

 ここでもう一度、新型コロナウイルス感染防止対策はどうあるべきか、整理をしてみょう。

 新型コロナウイルスは人を介して人に感染していくものだ。したがって、感染の拡大を防ぐためには人と人との接触を禁じればよいということになる。しかし、人は社会的存在なので、全く他者と接することを禁じてしまうわけにはいかない。この二律背反性が、この新型コロナウイルス対策の最も難しい点だ。

 そこで、感染防止対策は、マスクを着用し手指を消毒し、ソーシャルディスタンスを保ちながら一定の社会生活を確保するというのが基本的な考え方だが、そこには1点弱点がある。それは、人は飲食を行う際にはマスクというディフェンスを解除して外界から飲食物を摂取しなければならないということだ。これが文字通り「アキレス腱」となって、ウイルスに侵入の隙を与えてしまうことになる。だから、飲食の際には、個々人は通常よりも厳しいソーシャルディスタンスをとらなければならないところだ。ところが、飲食店は、一般的に、比較的狭く、閉ざされた空間で、場合によっては向かい合い、隣り合い、密集した状態で複数の人が場所を同じくして、無防備な状態をさらし、一定の時間を過ごすことになる。ここに感染の危険が内在していると考えられる。特に、会話を楽しみながらの「会食」などは、最も危険な行為と言えるだろう。

 政府の新型コロナウイルス対策分科会が昨年12月に発生したクラスターの分析を行ったところ、最も多いのは医療・福祉施設の45%、飲食関連は約20%、その他、教育施設、職場関連が続いている。(朝日新聞 2021/19)それによれば、飲食関連は全体の約20%にしか過ぎないので、感染の主たる原因ではないとの見方もあるかもしれない。しかし、教育施設や職場がほぼ半日時間を過ごす場所であるのに対して、飲食関連は滞在時間は比較的短時間のはずだ。であるにもかかわらず、2割のウエイトを占めているということは、やはり感染の確率が高いということだろう。推測するに、飲食関係で部外の人々と接触して感染し、日常生活のグループ内に持ち帰り感染を広げているという図式ではないだろうか。つまり、飲食関連が感染拡大のハブになっているということではないだろうか。

 以上のように考えると、感染拡大防止のためには、これまでも言われてきたことであるが、飲食関係の営業を抑制することは一定の合理性があると言えよう。

 実際、同分科会でも「感染の拡大を抑えるうえでは「飲食の場が重要で、そこを抑えていかないといけない」との見解のようだ。 (同)

 

 感染防止を図るという目的のためには、やはり飲食関係の営業、具体的には店内での飲食を禁止するのが最も基本的な方策ではないだろうか。

 旅行については、交通機関による移動そのものは、それほど危険だとは思われない。なぜならば、通勤電車等でクラスターが発生したとは聞かないからだ。しかし、観光旅行には旅先での飲食がつきものであるから、必然的に飲食店での飲食が付随することになるので、抑制的に考えるべきだろう。

 

 以上より、感染防止の観点からは飲食店の営業を制限することが重要であると考える。これに対して、それでは飲食店の営業、従業員の生活が成り立たないとして、営業の規制に反対する声がある。こうした意見については次のように考える。感染防止のための営業規制は、社会全体の感染防止の目的のために制限をするものだから、そのコストを営業者のみに負担させることは妥当ではなく、政府が徹底した保障を行った上で、営業制限を行うべきだろう。ところが、これまで政府はこの費用の支出を出し惜しみ、政府の支出を呼び水に一般市民の財布を開かせようとするのがGOTOイートやGOTOトラベルだった。生命や健康はお金では取り戻せないが、営業の問題は基本的にすべてお金で解決ができる問題だ。政府は腹を括って全額負担をするべきだ。

 現下の政府の、アクセルとブレーキを同時に踏むかのように見えるバラバラの施策は、根本的にはこの「お金の出し渋り」が原因だと考える。これを惜しむがために、すべてが中途半端な施策となり、それを正当化するかのような「コロナはただの風邪だ」、「2類指定を解除すべき」等の問題のすりかえやごまかしなどの流言飛語の類いがまき散らされる背景となっているように思われる。人は問題を直視しないと正しい結論を導き出すことができない。

 様々な意見を聞かされる国民も混乱している。ここまでに国民の考えが不統一であると、どのような施策を講じたとしても徹底できないだろう。ここは、やはり政治のリーダーが、お金の出し惜しみをせずに、しっかりと方針を定めて、感染対策の観点から誠実に問題に取り組み、国民に真剣に語りかける必要がある。

 

 

  

 

 

神戸港に海上ロープウエー構想 21年度調査へ

 神戸市が神戸港一帯の回遊性を高めるため、ウオーターフロント再開発事業で、国内最長を見込む海上ロープウエーの整備を検討していることが同市への取材で分かった。三宮の南にある新港突堤西地区と神戸メリケンパークのある中突堤、神戸ハーバーランドを結ぶルートを構想し、2021年度に調査を計画。実現すれば、海上から見下ろす臨海部に加え、市街地と背後に連なる六甲山系も眺望できる観光資源になりそうだ。

神戸新聞 2021/1/3)

 

www.kobe-np.co.jp

 

 神戸港臨海部でのロープウエイ建設の提案は、今回の計画以前には、ある神戸市議会議員の ブログ上の2018年5月頃の記事に確認することができる。この案は、ゴンドラで、ハーバーランド(モザイク)から、メリケンパーク、神港突堤、神戸税関付近からフラワーロードを北上し、三宮駅新神戸、ハーブ園を結ぶという壮大なプランだ。

 

www.shozan-hirano.jp

 

 これに類した構想で筆者が知る限り最も古いのは、神戸市の「神戸の都心の「未来の姿」検討委員会」で2014年(平成26年)3月19日の第1回検討会議の市民提案に挙がっている項番117の「ハーバーロープウェイ構想」である。ハーバーランドからメリケンパーク、ポートアイランド六甲アイランドをロープウェイで結ぶものだ。

(第1回検討委員会(平成26年3月19日開催) 参考資料1)

神戸市:神戸の都心の「未来の姿」検討委員会 (kobe.lg.jp)

 

 今回の神戸市の構想についての筆者の見解を述べてみよう。

 この計画は臨海部の集客施設の間を、海上で最短距離で結ぼうとするもので、もし実現すれば眺望等もすばらしく一時的には人気を集めるかもしれない。

 しかしながら、課題もありそうだ。

(1)建設費はどの程度かかるのだろうか。海上を結ぶとなると、陸上部とは異なり、架線を渡す鉄塔等の支間長も長くする必要があり、船舶の通行の障害とならないような高さに建設する必要もあり、それなりに高額な建設費になるのではないだろうか。とすれば、料金もそれなりの高額になるのではないか。料金が高額になれば、一度くらいは利用しても、繰り返し利用されることにはならないのではないか。

(2)海上部に架線を渡すことになるが景観の問題はないのだろうか。陸上でも電線の地中化が求められるぐらいだから、景観を害することはないのだろうか。

(3)最大の問題は、モザイクから新港第2突堤あたりを結ぶ計画だから、西のハーバーランド側はともかく、東側がどの交通機関からも離れていることだ。最大の交通ターミナルである三宮や広域交通拠点の新神戸駅神戸空港からの接続はどうするのだろうか。神戸港一帯の回遊性を高める目的としては、これだけでは目的を十分に果たすことができない中途半端な交通機関になるのではないだろうか。交通機関として中途半端なものであれば、一種の観光施設的な性格が強くなるが、それで、どの程度人気を集め続けることができるだろうか。さらに、同一の目的で連節バスの運行も計画しており、それとの関係はどうなるのだろうか。相互に需要を分け合う形になり、共倒れにならないだろうか。ロープウェイを建設すると、規格の合わない互換性のない新交通機関がまた増えてしまう。とりあえず今必要なものは、神戸港一帯の回遊性を高める目的のものだから、インフラ建設を伴わないバス等の既存の交通手段で実績を上げることではないだろうか。

 

 ハーバーランドメリケンパーク、新港突堤あたりは神戸市の都心の観光の目玉となる部分なので、場当たり的ではなく周辺の交通体系との整合性も考え、しっかりとした計画を考えるべきだ。

 

 筆者は、ポートライナーの複線化と新神戸駅への延伸を提案している。これにより、今後発展が期待される神戸空港の輸送能力を拡充し、さらに新神戸駅から三宮駅を経由して神戸空港を結ぶ、新幹線と航空機の2大長距離交通機関へのツーウェイアクセスを有する長大な沿線を生み出し、その沿線沿いにビジネス街や集客ゾーン、コンベンションセンターを配置して、日本全国からのアクセスが優れた高度の利便性・機能性を有するエリアを創造すべきだと考えている。新神戸駅から三宮、神戸空港を結ぶポートライナーの沿線を中央軸とすると、臨海部は中央軸から派生し、集客施設や娯楽施設、ホテル、ショッピングセンター等を集中立地させ、テーマパークのようなエリアにするのがよいと考えている。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 臨海部の交通機関としては、新神戸駅神戸空港を結ぶポートライナーの乗り継ぎ駅を神戸港の臨海部に設け、それと神戸駅との間の臨港地帯を往復する多頻度の交通機関を設けるのがよいと思う。それは、おそらく循環バスやシャトルバスのようなものになるのではないかと考える。

 このように考えていくと、やはり、都市全体のグランドデザインが必要であり、全体的な構想が事実上ない中で、個々にバラバラと計画を行うことでは、なかなか成功はおぼつかないのではないだろうか。

  都市のグランドデザインさえ、しっかりとできれば、その枠組みの中で個別の計画が立案され実現されていくのではないだろうか。そのグランドデザインの柱は、やはり、中央軸、すなわち新神戸駅から神戸空港を結ぶ沿線の実現であると考える。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 

 

 

 

消防艇による定期歓迎放水 / GlobalRainbow @kobe2020

 世界中が新型コロナウイルス禍に見舞われた2020年は、神戸にとっても明るい話題の少ない1年であった。しかし、そうした中で次のような取り組みが行われた。

 

 消防艇が定期歓迎放水でおもてなし  

 ~神戸を訪れるすべての人に元気を!明るさを!~

 

 神戸を訪れるすべての人へ、“コロナに負けるな!”“頑張ろう神戸!”などのメッセージを込めて、消防艇による歓迎放水を定期実施します。

 これまでは外国客船が神戸港に入港・出港する際に、乗船客に対して歓送迎の放水をしていましたが、新型コロナウイルスの影響で低迷する市内の観光振興策のひとつとして行います。

 

1.放水の概要

 メリケンパーク内のBEKOBEモニュメント南側海上にて、15時から約15分間のカラー放水を行います。見応えのある放水で皆様を元気づけます。

 

2.期間

 令和2年8月21日以降の毎週金曜日、令和2年12月25日までの間(計19回)

(以下略)

 

(神戸市記者資料提供 2020/8/14)

 

神戸市:消防艇が定期歓迎放水でおもてなし

 


毎週金曜日に消防艇が歓迎放水(神戸経済ニュース)

 

 神戸市の水上消防署が、新型コロナウイルスの影響で低迷する市内の観光振興策のひとつとして実施をしたとのことだ。最終日には、夜間の放水も行ったようだ。夜間の放水はライトアップされて、幻想的でとても美しい。

 


消防艇の定期歓迎放水に夜のサプライズ(神戸経済ニュース)

 

 今回の取り組みは「新型コロナウイルス下での観光振興」を目的に挙げているが、今後も新型コロナウイルスとは関係なく、神戸の観光施策の一つとして実施すればよいと思う。

 

 

 当ブログでは、兼ねてより、神戸港一帯に観光施設を集約し、テーマパークのような場所にしてはどうかと提案している。

 

firemountain.hatenablog.jp

 

 

 神戸港は神戸の有力な観光資源であるが、もっと有効に活用すべきだと思う。神戸港の眺めは開放的ですばらしいものであるが、実際に訪ねてみると船の出入りが頻繁にあるわけでもなく、案外、動きのない静的な風景で、残念ながら今ひとつ見所に欠けるように思う。この静的な風景に動きを与えるものとして、消防艇による放水はちょうどよいアクセントになるだろう。これまでもクルーズ船の入港時などに消防艇の歓迎放水が行われていたが、歓迎を受けるクルーズ船からはともかく、陸上からでは距離が離れすぎていてその迫力を十分に感じることができなかった。しかし、メリケンパークの目の前であれば、多くの人がその迫力を十分に感じることができるだろう。

 消防艇は大型港湾ならではのものであり、定期的に実施すれば、港町神戸の名物になりうるものだろう。

 

 

 また、次のようなイベントも行われた。

 

  アジア初!神戸の夜空にレーザーアートが出現します

ーGlobalRainbow @kobe2020ー

 

趣旨

 一般財団法人神戸観光局は、神戸港ウォーターフロントエリアのさらなる魅力向上の取り組みとして、ニューヨーク/ベルリンを拠点として活躍する女性ビジュアルアーティストYvette Mattrn(イヴェット・マターン)氏により独自開発された7色のハイパワーレーザーを使用した巨大なパブリックレーザーアート「GlobalRainbow(グローバルレインボー)」を神戸港内から六甲山系に向けて出現させます。

 本作品は、これまでにアメリカ(ニューヨーク、ピッツバーグ、ニューヘイブン)、イギリス(ロンドン)、ドイツ(ベルリン)、スウェーデン(スモーゲン)など、世界の主要都市で展示されていますが、美しい神戸の港が本作品のイメージと重なり、アジア初の展示に至りました。

 

実施概要

 本事業は、中突堤メリケンパーク等を中心に、広域および夜間なら期間中いつでも鑑賞できるスケールの大きな広域アート作品とすることで、観客が一か所に集中しない、公共交通機関が混雑しないなど、withコロナ時代の「新しい生活様式」を意識した観光施設・観光商品等のケーススタディとして、観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」における実証事業(1次募集)に採択され、「あたらしいツーリズム」の一環で実施しています。

 ■名  称:GlobalRainbow @kobe2020

 ■展示期間:令和2年12月4日(金曜)~12月13日(日曜)

 ■照射時間:日没後~21時

 ■主催団体:一般財団法人神戸観光局、神戸市港湾局

 ■協  力:神戸学院大学神戸港“U”パークマネジメント共同事業体、メリケンパーク協議会、阪神高速道路株式会社、兵庫森林管理署

 ■WEB:https://globalrainbow-kobe.jp(外部リンク)

(神戸市記者資料提供 2020/11/24)

神戸市:- GlobalRainbow @Kobe 2020 -

 


KOBEレーザーアート

 

 神戸港内から六甲山系に照射されたというから、海と山が近接する神戸の地理を活かしたイベントといえるだろう。これまでにも、ニューヨーク、ロンドン、ベルリンなど世界の主要都市で開催され、アジアで初の都市として神戸が選ばれたとのことだ。今回は、新型コロナウイルス禍の中であったから、多くの人がこれを見に訪れることが難しかったとは思うが、こうした先進的な取り組みが行われたことは評価できる。

 こうしたイベントが実施できるのは、都心の中心部に神戸港という大空間を擁する神戸ならではだ。これを一過性のものとせず、できれば継続的に実施してほしい。

 

新型コロナウイルス禍の下での関西3空港の状況(5)

 関西エアポートが11月の関西3空港の運航状況を発表した。

 

 

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          旅客数   国内線発着回数

 伊丹空港     △38%   △22%

 関西空港     △48%   △32%

 神戸空港     △38%   △12%

 

 

 国内線について、伊丹空港神戸空港が旅客数でともに△38%であるのに対して、関西空港は△48%と回復が遅れている。発着回数を見ても、伊丹空港△22%、神戸空港△12%に対して、関西空港は△32%と回復が遅れている。これは、一つには関西空港の主力である国際線が前年比△99%が続いており、国内線についてだけでいうと、都心に近接する伊丹空港神戸空港の方が便利であり、加えて大手航空会社の路線の集約の方針が関西空港に対して不利に働いていると考えられる。こうした傾向は当分続くだろう。

 下のグラフは3空港の毎月の旅客数の比率を表したものである。

 

  (旅客数の比率  伊丹空港関西空港関西空港神戸空港

 

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 このグラフを見ると、伊丹空港関西空港の比率(オレンジ色)は1月の2.33から3.10に上がっており、これは伊丹空港関西空港に対する優位が強まっていることを表している。また、関西空港神戸空港の比率(青色)は1月の1.97から1.58に低下している。これは、関西空港神戸空港に対する優位が弱まっていることを表している。この結果は、関西空港の回復が伊丹空港神戸空港に対して相対的に遅れているという上記の観察と一致する。

 

 全般的にはかなり旅客数が回復してきており、神戸空港でもスカイマークが12月に全便復元の話もあったが、新型コロナウイルスの感染再拡大により航空需要の抑制が再び働くと思われ、完全な回復にはまだまだ時間がかかると考えられる。