新型肺炎の流行について(40)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、菅義偉首相は7日、緊急事態宣言を再発令した。対象地域は首都圏の1都3県で、期間は2月7日までの1カ月。飲食店の営業時間短縮、テレワークによる出勤7割減、午後8時以降の外出自粛、イベントの人数制限をパッケージとして対策を行う。菅首相は会見で「何としても感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせる」と語った。

朝日新聞 2021/1/7)

 

f:id:firemountain:20210109210556j:plain

(出展:厚生労働省 HP) 

 

 新型コロナウイルス感染症の感染は昨年11月頃から急激に拡大し、年末には全国で4000件を超えて驚いたのもつかの間、年明けの1月7日には一気に7500件をも超え、ついに東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で2度目の緊急事態宣言が発せられるに至った。

 事態はそれにとどまらず、兵庫、大阪、京都の関西2府1県が緊急事態宣言の発令を国に要請するなど、緊急事態宣言はさらに全国へ拡大することも予想される。 

 

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受けて大阪、京都、兵庫の3府県の知事は9日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すよう西村康稔経済再生相にオンラインで共同で要請した。西村氏は会議後、「極めて厳しい状況との認識を共有した」と話し、専門家の意見を聞いて判断する考えを示した。

 3府県の知事は連名で、「年明け以降、感染が急拡大するとともに、医療提供体制は非常に逼迫(ひっぱく)。さらなる感染防止対策をとることが必要である」として、西村氏に要請した。

 西村氏は会議後、記者団に「緊急事態宣言の措置をとっている首都圏に準じた取り組みを検討するように要請した」と明らかにした。

朝日新聞 2021/1/9)

 

 海外でも感染拡大が続いており、従来より感染力が強いとされる変異型が出現するなど、さらに勢いを増しているようだ。特にイギリスでは、ロンドン市長が市内の新型コロナウイルスの感染拡大が「制御不能の状態にある」と表明したことは新型コロナウイルスの恐ろしさを再認識させるものだ。

 

 英国の首都ロンドンのカーン市長は8日、市内の新型コロナウイルスの感染拡大が「制御不能の状態にある」とし、「重大事態」を宣言した。英国政府は同日、英国全体の1日の新規感染者数は6万8053人、死者数は1325人に上ったと発表。ともに過去最多となった。

朝日新聞 2021/1/9)

 

  世界の感染者数は、1月7日現在で 8619万人、死者は 186万人に達している。 

 

 ここでもう一度、新型コロナウイルス感染防止対策はどうあるべきか、整理をしてみょう。

 新型コロナウイルスは人を介して人に感染していくものだ。したがって、感染の拡大を防ぐためには人と人との接触を禁じればよいということになる。しかし、人は社会的存在なので、全く他者と接することを禁じてしまうわけにはいかない。この二律背反性が、この新型コロナウイルス対策の最も難しい点だ。

 そこで、感染防止対策は、マスクを着用し手指を消毒し、ソーシャルディスタンスを保ちながら一定の社会生活を確保するというのが基本的な考え方だが、そこには1点弱点がある。それは、人は飲食を行う際にはマスクというディフェンスを解除して外界から飲食物を摂取しなければならないということだ。これが文字通り「アキレス腱」となって、ウイルスに侵入の隙を与えてしまうことになる。だから、飲食の際には、個々人は通常よりも厳しいソーシャルディスタンスをとらなければならないところだ。ところが、飲食店は、一般的に、比較的狭く、閉ざされた空間で、場合によっては向かい合い、隣り合い、密集した状態で複数の人が場所を同じくして、無防備な状態をさらし、一定の時間を過ごすことになる。ここに感染の危険が内在していると考えられる。特に、会話を楽しみながらの「会食」などは、最も危険な行為と言えるだろう。

 政府の新型コロナウイルス対策分科会が昨年12月に発生したクラスターの分析を行ったところ、最も多いのは医療・福祉施設の45%、飲食関連は約20%、その他、教育施設、職場関連が続いている。(朝日新聞 2021/19)それによれば、飲食関連は全体の約20%にしか過ぎないので、感染の主たる原因ではないとの見方もあるかもしれない。しかし、教育施設や職場がほぼ半日時間を過ごす場所であるのに対して、飲食関連は滞在時間は比較的短時間のはずだ。であるにもかかわらず、2割のウエイトを占めているということは、やはり感染の確率が高いということだろう。推測するに、飲食関係で部外の人々と接触して感染し、日常生活のグループ内に持ち帰り感染を広げているという図式ではないだろうか。つまり、飲食関連が感染拡大のハブになっているということではないだろうか。

 以上のように考えると、感染拡大防止のためには、これまでも言われてきたことであるが、飲食関係の営業を抑制することは一定の合理性があると言えよう。

 実際、同分科会でも「感染の拡大を抑えるうえでは「飲食の場が重要で、そこを抑えていかないといけない」との見解のようだ。 (同)

 

 感染防止を図るという目的のためには、やはり飲食関係の営業、具体的には店内での飲食を禁止するのが最も基本的な方策ではないだろうか。

 旅行については、交通機関による移動そのものは、それほど危険だとは思われない。なぜならば、通勤電車等でクラスターが発生したとは聞かないからだ。しかし、観光旅行には旅先での飲食がつきものであるから、必然的に飲食店での飲食が付随することになるので、抑制的に考えるべきだろう。

 

 以上より、感染防止の観点からは飲食店の営業を制限することが重要であると考える。これに対して、それでは飲食店の営業、従業員の生活が成り立たないとして、営業の規制に反対する声がある。こうした意見については次のように考える。感染防止のための営業規制は、社会全体の感染防止の目的のために制限をするものだから、そのコストを営業者のみに負担させることは妥当ではなく、政府が徹底した保障を行った上で、営業制限を行うべきだろう。ところが、これまで政府はこの費用の支出を出し惜しみ、政府の支出を呼び水に一般市民の財布を開かせようとするのがGOTOイートやGOTOトラベルだった。生命や健康はお金では取り戻せないが、営業の問題は基本的にすべてお金で解決ができる問題だ。政府は腹を括って全額負担をするべきだ。

 現下の政府の、アクセルとブレーキを同時に踏むかのように見えるバラバラの施策は、根本的にはこの「お金の出し渋り」が原因だと考える。これを惜しむがために、すべてが中途半端な施策となり、それを正当化するかのような「コロナはただの風邪だ」、「2類指定を解除すべき」等の問題のすりかえやごまかしなどの流言飛語の類いがまき散らされる背景となっているように思われる。人は問題を直視しないと正しい結論を導き出すことができない。

 様々な意見を聞かされる国民も混乱している。ここまでに国民の考えが不統一であると、どのような施策を講じたとしても徹底できないだろう。ここは、やはり政治のリーダーが、お金の出し惜しみをせずに、しっかりと方針を定めて、感染対策の観点から誠実に問題に取り組み、国民に真剣に語りかける必要がある。