新型肺炎の流行について(41)

 久元市長がツイッターで、次のような投稿を行った。

本日対策本部を開き、ひっ迫する医療提供体制を共有。病床使用率は96%に至り、極めて厳しい状況が続きます。このままでは助かる命も助からなくなります。一人ひとりが強く意識して行動を変えなければなりません。医療提供体制を守るために、大切な命を守るためにご協力をお願いします。

久元喜造twitter 2021/1/14)

  これに対して、多くの市民から不安を訴える声が寄せられ、それらの中には、こうした事態が十分予想できたにもかかわらず病床確保ができていないことを非難する意見も見られる。

 

 では、実際には、兵庫県と神戸市の病床の確保状況は、多いのか少ないのか、全国的に見るとどの水準なのだろうか。

 

(1 都道府県別の新型コロナウイルス対応病床数等)

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 (厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(1月13日0時時点)」から作成)

 

 集計されている項目は、新型コロナウイルス患者受け入れ用の、確保病床数、そのうちの重傷病床数、軽症者隔離用の確保居室数の3項目である。

 まず、確保病床数については、兵庫県は 756床で人口千人当たりの病床数は0.138となり、この値は全国47都道府県のうち実に45番目となる。

 次に重傷病床をみると、兵庫県は 116床で人口千人当たりの病床数は0.021となり、全国で38番目となる。

 軽症者隔離用の確保居室数をみると、兵庫県は 988室で人口千人当たりの病床数は0.181となり、全国で25番目となる。

 神戸市について見ると、確保病床数については、160床で人口千人当たりの病床数は0.105となり、兵庫県より数値は低く、全国最下位の福岡県の0.120よりもさらに低い数字である。確保居室数は、298室で人口千人当たりでは 0.196であり、兵庫県より高い数値であり、21位の福岡県の 0.207に近い数字である。

 

 これを見ると、兵庫県及び神戸市は、軽症者隔離用の確保居室数については全国的に中位であるが、確保病床数についてはかなり少ない方であることがわかる。兵庫県は、確保病床の使用率について、東京都の83%に次いで、78%と全国ワースト2位となっているのは、この確保病床数自体が少ないという事情が現れているようだ。比較対象として、近隣の大阪府の使用率は72%、京都府は39%であり、関西圏で感染者数が圧倒的に多い大阪府よりも病床の逼迫の度合いが高くなっていることは注目される。

 

 あわせて、都道府県別の感染者の発生状況を見てみよう。

 

(2 都道府県別の新型コロナウイルス感染者発生状況)

 

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 (厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症患者の療養状況、病床数等に関する調査結果(1月13日0時時点)」から作成)

 

 表は、都道府県別の新型コロナウイルスのPCR検査陽性者数と入院者数について、実数と人口千人あたりの値をPCR検査陽性者数の多い方から順に並べたものである。

 陽性者数については、1位から6位までが、東京都、千葉県、埼玉県、大阪府、神奈川県、福岡県の順となり、首都圏および大都市圏の値が高いのがわかる。特に東京都は千人当たりの陽性者数が 1.380と2位以下に大差をつけている。以下、8位 京都府、10位 愛知県、15位 広島県、16位 北海道となり、兵庫県は18位となっている。

 これから見ると、兵庫県の人口千人あたりの陽性者数は他の大都市と比べ決して高くはなく全国で中位程度の値である。

 参考までに神戸市の値を見てみると、千人当たりの要請者数の値は0.569と8位の京都府と同水準である。

 

 以上のデータからみると、上記のツイッターでの兵庫県や神戸市の病床確保の遅れを非難する意見は的外れとは言えない。少なくとも、兵庫県や神戸市が全国のお手本となるような先導的な取り組みができているとは言えないだろう。

 

 

 さらに、その翌日、久元市長はツイッターで次のような投稿を行った。

市内病床160床のうち155床を使用中。このままでは助かる命も助かりません。そのため、今日からハーバーランドのモザイク大観覧車からメッセージを発し、広く行動の変容を呼び掛けます。メリケンパーク周辺の施設にもご協力いただき、21時以降ライトアップを消灯します。
久元喜造twitter 2021/1/15)

 

  市内病床160床のうち155床が使用中のため、このままでは助かる命も助からないと訴えつつ、それに対する対策がハーバーランドの観覧車にメッセージを表示することであるということに違和感を指摘する市民の声が寄せられている。

 

 

 神戸市は、これまでも昨年4月の緊急事態宣言下に花時計の絵柄を笑顔のデザインにしてみたり、次のようなメッセージ募集を行うなどの情緒的な取り組みが多かった。

 

新型コロナウイルス感染症体験等に基づくメッセージを募集します

 
 現在、市民のみなさまそれぞれが新型コロナウイルス感染症と闘っており、様々な不安を感じていらっしゃることかと思います。

 また、医療の最前線で新型コロナウイルスに立ち向かう医師や看護師をはじめとする医療従事者のみなさまにおかれましても、日々大変な思いをされていることと存じます。

 こういった様々な不安をやわらげ、応援するために、ご自身が体験して感じたことや感謝の気持ちなどのメッセージを募集します。

 

(神戸市HP 2020/9/11)

 

 こうしたイメージだけの取り組みより、本質的に取り組むべきことがあるはずだ。優先順位はどうなっているのだろうか。そんなことをする余力があるなら、他のことに充ててほしいという意見が起きるのは当然だ。この情緒優先の姿勢は神戸市の都心再開発にも共通する姿勢のように感じる。