都市のダイナミズム 生まれ変わる三宮

 2月3日の朝日新聞夕刊に次のような記事が掲載された。

 単なる乗り継ぎ駅のイメージが強かった新大阪駅で、周辺の開発が活気づいている。大阪市中心部のオフィス不足や訪日客の増加を受け、新規のビルやホテルの建設が流れ込んでいるためだ。今後、相次いで鉄道の新線ができ、交通がさらに便利になるという期待も動きを後押ししている。

朝日新聞 2020/2/3)

 

 記事では、新大阪駅周辺の開発が活気づいている背景として大阪市中心部のオフィス不足を挙げているが、相次ぐ鉄道新線の開業が大きな魅力の一つとなっているとしている。JR大阪東線が2019年3月に奈良まで直通列車ができたほか、今後、関西空港と市中心部を結ぶなにわ筋線への阪急の連絡線の計画もある。さらに、北陸新幹線リニア中央新幹線ターミナル駅も新大阪にできる予定である。

 新大阪駅は、元々大阪の中心部から外れ、鉄道や幹線道路の高架橋が多く、周囲が分断されて行き来がしにくいこともあり、単なる「乗り継ぎ駅」の地位にとどまってきたとしている。

 しかし、北陸新幹線リニア新幹線の構想が具体化し、都市再生緊急整備地域の候補地の指定を受け、大阪府大阪市が昨年から協議会を作り、将来の町づくりの議論を始めているとのことだ。協議会の委員の一人は「関西のゲートウェー(玄関口)である特色を強く出し、京阪神を代表する場所を目指すべきだ。」との話を紹介している。

 以上を読んで思うことは、都市の発展における「期待」の重要性だ。実際に利便性が向上しているわけではないが、将来的に利便性が向上するという姿が描かれると、それに合わせて各主体が一斉に動き始めるということだ。

 現実にはまだ変化が生じていないが、将来像を描いて見せることで、各主体、世の中全体が動き始める。これが経済のダイナミズムだ。神戸の都心の再開発に足りないものはこれだ。現在示されている三宮構想は、いわば、単に街の化粧直しをするレベルにとどまってしまっている。化粧直しだけでは、ダイナミズムは生じない。現状と将来の間に質的な段差を設けること、これにより気圧差が生まれ、大きな風が発生する。現在の三宮計画には、こうした段差、気圧差がない。現状と将来に質的な差、次元の違いがなければ、将来は現状の延長にすぎない。

 歩いて楽しいまちではダイナミズムは生じない。新たな人や企業を呼び込むことはできない。

 その将来の姿を描いて見せることは市役所の役割だ。

 

  新大阪と対比して、神戸の三宮も、東海道・山陽新幹線九州新幹線の全列車が停車する新神戸駅と、国内拠点空港の発展の姿が現れ始めた神戸空港JR神戸線により京都、大阪、姫路と結ばれ、JR東西線阪神、阪急本線、阪神なんば線により奈良とも結ばれ、西日本最大級のバスターミナルまで建設する。三宮は「関西圏の西のゲートウェー」と呼んでも十分な条件を持っている。

(三宮の交通体系)

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 では、三宮の再開発に質的な段差をもたらすものは何だろうか。それは、新神戸、三宮、神戸空港を一直線に結ぶ南北アクセスの整備であると考える。神戸の東西交通が優れているのは、これまでもよくいわれていることであるが、実際にはとても近いところを走っているにもかかわらず、相互に接続がされていないので、距離以上に遠く感じられる。都市が成立する基本的な条件は、交通の結節点であるということだ。この結節がカバーする範囲の大小によって、都市の規模が決まってくると考えられる。現状の神戸だと、交通はただ東西に流れるだけで、結節せず、そのまま通過し、大阪や新大阪に人が集まってしまう。したがって、神戸が行うべきは、東西の交通の南北の結節である。そのために、南北交通アクセスの整備が必要である。実際の距離は小さいから、エレベーターのような使い勝手で人々が自由に往来できるようになれば各交通機関は事実上一体化し、三宮に交通の結節点が生まれるであろう。重要なのは、新神戸から神戸空港までの間に、回遊性を持たせることだ。その回遊区間に都市が発展する基盤、ビジネスセンターやコンベンションセンター、大規模アリーナ等のスポーツ、文化施設、テーマパーク等の娯楽施設などの都市施設群が構築されるはずだ。必要なことは、歩いて回る回遊性ではなく、交通機関による交通機関同士の回遊性の向上だ。

 その南北のアクセスはどのような姿だろうか。それは、具体的にはポートライナー新神戸延伸であると考える。ポートライナー無人運転で、現在でも最短2分間隔で列車を運行するなど、少量であるが多頻度で運行できるところが特徴だ。

 神戸には、既に東西交通については十分なものがある。これらの 既存の資産を背景に、多少の投資を行うことにより、都市に新しい位置づけを与える。それに合わせて、各主体が一斉に動き始めるだろう。

 

 

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